2020年11月16日 (月)弱音 吐かせてください


※2020年3月19日にNHK News Up に掲載されました。

新型コロナウイルスの影響で休校が始まって3週間になろうとしています。
子どもたちは制約の多い生活を強いられていますが、ストレスがたまっているのは、親もまた同じです。
そんな親たちに寄り添う、ある医師のツイートに共感が広がっています。
「しんどいのは、親個人の資質の問題ではありません」
その明快なひと言が、多くの親たちを救っているようです。

ネットワーク報道部記者 野田綾

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なぜ私はストレスを?

突然の休校。
私(記者)の小学4年生の子どもは、学童などが利用できず、学校での自習も3年生までという決まりなので、居場所を失いました。
図書館や児童館の利用もできなくなりました。

では1人で家で過ごせるかというと、親としては「もし突然災害が起きたら」といった不安が頭をよぎってしまいます。

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私はテレワークに切り替え、自宅で電話やメールを駆使して取材することにしました。
子どもは家で静かに勉強をしたり、たまに友達と公園に遊びに行ったり、静かに過ごしてくれています。
しかし、なぜか私は思うように仕事に集中できず、徐々にストレスを感じるようになってきました。

「なぜ私はストレスを感じているのだ?」
イライラしやすくなり、自己嫌悪を感じるようになってしまいました。

「私だけなのか…?」
SNS上の声を調べてみると、ストレスを感じ始めたのはどうも私だけではないようです。
休校で生活のリズムが崩れ、疲れ切った親の声があふれていました。

yowane.3.jpg子どもと一緒に過ごす時間が増えるのはうれしいことなのに、どうして疲れてしまうのか。
その答えをわかりやすく教えてくれる、ある小児科医のツイートが注目されています。

疲れるのは 子どものことを考え続けてしまうから

「しんどい理由はいろいろとありますが、どれも科学的根拠があって養育者個人の資質は関係ないです」

ツイートの主は、3人の子育て中で、京都府で小児科医をしている「手を洗うDr.リノ」さんです。

yowane.4.jpg「Dr.リノ」さんは、落ち込んでいるフォロワーがいたことをきっかけに、「そんなことはないですよ」と呼びかけ、SNS上で共感が広がっています。

「Dr.リノ」さんに取材を申し込むと、しんどい理由を明確にすることが、適切な支援を受けるための第一歩だと考えて、自身の考えをSNSで紹介するようにしたという答えでした。

「Dr.リノ」さんはこうツイートしています。

「Dr.リノ」さん
「落ち込む必要は1ミリもなく、ずっと子どもと一緒がしんどいと感じるのは当たり前のことです」

それはなぜなのか。

「Dr.リノ」さん
「子どもと一緒にいると、ずっと子どものことを考え続けてしまうので、思考が休まらないからだと思います。この考え続けるしんどさは、重症患者の主治医をしている時の感覚と似ています。当直は終わりがありますが、育児にはそれがないのです」

その疲れは○ツライ? 疲れがたまったらご褒美を!

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「Dr.リノ」さんは、疲れをためてイライラするのではなく、考え方を変えることでストレスを解消する方法も紹介しています。

それは、疲れを数値化する方法。単位は『ツライ』です。
例えば

1ツライ …
子どものことをずっと考えて休まる暇がないしんどさ 

2ツライ …
学校も児童館も、習い事もイベントも全部休みで、たまに公園に遊びに行ったとしても、毎日そればかりで変化のない日常が苦痛と感じること

3ツライ …
自分のペースで家事が進まないストレス

5ツライ …
イヤイヤ期の子どもがいればなおさらですが、子どもにことばや態度で直接否定されるしんどさ

この「ツライ」がたまってきたら、頑張っている自分にご褒美をあげることも必要だと話してくれました。

「1ツライ」はどのくらいのイメージなのか、聞いてみました。

「Dr.リノ」さん
「1ツライ、2ツライという単位については、問題点を可視化するという試みです。しんどさの量を『はい、これ3ツライ~』と表現したらおもしろいかなと単純に思ったのです。何ツライでアウトになるかは人によってまちまちだと思います。使い方としては『3ツライで大好きなアイスクリームを食べる』みたいに、自分へのご褒美の目安としてもよいでしょうし、『ねえ、いま私8ツライなんだけど、明日ちょっと子ども置いて出かけさせて』とパートナーへの交渉材料に使うようにしてもよいでしょうね」

「ツライ」は自分にしかわからない単位かもしれませんが、自分がわかっていないと気持ちのコントロールもできません。

「Dr.リノ」さんは、こう指摘しています。

「Dr.リノ」さん
「問題点を可視化して、本人も周囲も改めて認識し共有しなおすことが解決に必要だと思いますが、育児の負担はなかなか見えにくいという社会背景があります。ひとりで抱え込んでいる養育者に『あなたは一人じゃないよ』というメッセージとともに、1人でも多くの大人に気付いてほしいなあと思います」

yowane.6.jpgテレワークで仕事に集中できないことがあるのは、親であれば当然のこと。
そう考えるだけで、少し心が楽になるような気がします。
大切なのは、「ツライ」がたまってきたら、無理をしないことなのかもしれません。

あなたは今、「何ツライ」ですか?

投稿者:野田 綾 | 投稿時間:16時32分

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