2018年02月15日 (木)CA人気に異変 人気職種そのワケは...


※2018年1月30日にNHK News Up に掲載されました。

学生時代、初めて海外旅行に行った時に飛行機の中で初めて目にしたCA=客室乗務員。容姿端麗、英語も堪能、りんとしたその姿に憧れを抱いたのはきっと私だけではないはず。
客室乗務員といえば、今も昔も、人気職業ランキングの上位に入る職業ですが、その人気のワケは変わりつつあるようで…。

ネットワーク報道部記者 吉永なつみ

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<やりがい以上に重視するもの>
「就職活動では、仕事のやりがいと同じか、いえ、それ以上に長く働き続けられる環境があるのかどうかが企業を選ぶポイントでした」。
こう話すのは公務員でも銀行員でもなく、CA2年目の古川久乃さん。

can180130.2.jpg古川久乃さん
古川さんが就職先を選ぶにあたって最も重視したのは長く働き続けられる環境や制度が整っているかどうか。就職説明会では結婚や出産の後も働き続けられるのか、制度がきちんと運用されているかどうかを会社の担当者に何度も質問したといいます。

古川さんが働き続けられる環境にこだわったのは、共働きの両親を見て育ち女性も育児をしながら働き続けるのが当たり前のことだと考えていたからでした。

学生の就職活動に詳しい民間の研究機関に聞くと、古川さんのように就職先を決める際、長く働き続けられる環境を重視する女子学生はここ数年、特に増え続けているようです。

背景にはバブル経済が崩壊したあと、非正規雇用という不安定な働き方が増加したことに加え、近年では長時間労働や過労死の問題が取り沙汰されるようになり、女性たちのキャリアに対する意識が変化したことがあると分析しています。


<なぜCA?>
でもなぜ、CAなんだ。
どうしてもきらびやかだけど激務というCAの仕事への勝手なイメージがぬぐえない私は直接、古川さんが働く会社を訪ね確かめてみることにしました。

can180130.3.jpg古川さんの勤務先は航空業界最大手の全日空です。広報の人にまず案内されたのは羽田空港にある客室センター。

フライト前のミーティングをするCAやキャリーバッグをひきながらさっそうと歩くCAたちなどそこにはまさにテレビドラマのワンシーンのような世界が広がっていました。

興奮気味の私に広報が紹介してくれたのが入社12年目のCA、土屋智花さん。国際線と国内線の両方に乗務するバリバリのCAですが実は3歳のお子さんがいるママさんCAなのです。

can180130.4.jpg土屋智花さん
土屋さんが子育てをしながらCAを続けられるワケは勤務制度にあるといいます。この会社では子育て中の社員は毎月3日間の育児日休暇を利用することができます。

また最近、育児や介護をする人のほか40歳以上であれば誰でも利用できる新たな勤務制度も導入されました。この制度を利用すれば月間の勤務日数を最小で10日程度にまで調整することができます。

CAの平均年収は、国の調査を元にした推計でおよそ656万円。勤務日数を減らせば当然、基本給は減りますが、年々、利用は広がっています。土屋さんの場合、育児日休暇を利用して月間の勤務日数を15日程度に調整しています。

土屋さんは「CAの仕事は機内でいかにパフォーマンスを発揮できるかにかかっているので心身の健康が大切。柔軟な勤務制度のおかげで、子育てと仕事を両立でき自分に最適なペースを保って働くことができています」と話していました。


<育児休業中もサポート>
次に案内されたのが「ライフキャリアサポートチーム」という新しい部署です。誰もが立ち寄りやすいように、客室センターの出入り口の近くにあります。

can180130.5.jpgここには国際線のファーストクラスに乗務する資格のあるベテランCAが3人常駐していて、仕事や育児に悩む現役CAのカウンセリングにあたっています。相談窓口の名前は悩みをはき出してリラックスしてもらおうと「カモミール」と名付けられています。

can180130.6.jpgカウンセラー3人とも育児経験があり、チーム発足にあたってはキャリアコンサルタントの国家資格も取得していて、悩みを聞くプロでもあるのです。

さらにサポートチームでは育休中のCAたちを対象にした交流会も定期的に開催しています。

can180130.7.jpgサポートチーム主催の交流会

よく見てみると、愛らしい赤ちゃんや、父親らしき男性の姿も…。そう、この交流会は、育休中の本人だけでなく、家族も参加できるのが特徴で、中には親子3世代で参加するケースもあるとか。こうした家族ぐるみのつきあいが、復職後にも生きてくるというわけです。

こうした取り組みもあり、全日空では在籍するCAおよそ8000人のうち、3割の2500人が既婚者。さらに4人に1人にあたる1800人が子どもがいるママさんCAというのです。


<結婚や出産がCAの定年という時代も>
なぜ、このような取り組みを行っているのか。かつて、航空業界では経験を積んだ優秀なCAでも結婚や出産を機に辞めてしまう人が多く、会社としても大きな損失になっていたといいます。

実際にライフキャリアサポートチームのカウンセラーの1人で17歳と20歳の子どもがいる久保典子さんもかつては仕事と子育ての両立が難しかったことを話してくれました。久保さんは1984年入社で当時、CAの間では結婚や出産をした時が「CAの定年」とまことしやかにささやかれていたといいます。

can180130.8.jpgカウンセラー 久保典子さん
さらに当時は、今のような勤務制度もなく、「産後に職場復帰するなら、育児を理由に仕事に穴を開けることは絶対にあってはならない」という雰囲気も少なからずあり、久保さんは復職後も子どもの世話を夫に任せて2泊4日の国際便や日帰りの国内便に毎月20日間、乗務し続けました。
同僚は結婚や出産を機に次々と退職し、周囲を見渡しても子育てをしながらフライトを続けているのはわずかだったといいます。

それが少しずつ制度や環境が改善されてきて、長く働き続けるCAも少しずつ増えてきているのだといいます。
ただ、やはり今も、結婚や出産など家庭の事情で辞める人たちは少なくなく、久保さんはこうした人たちが少しでも長く働けるようサポートしていきたいと考えています。


<長い目で見てプラスに>
その一方で、働きやすい、多様な勤務制度を導入すれば要員も増やさなければならず、人件費の増加は避けられません。増加した人件費は経営を圧迫しないのでしょうか。全日空広報に率直に疑問をぶつけてみました。

広報は「短期的には人件費は膨らむかもしれませんが、離職がなくなれば翌年の新規採用のコストを抑えることができますし、何よりも、長く働くことができれば、技術が継承されて全体としてサービスの質が高まります。出産や結婚などで離職させない取り組みを進めることが、長い目で見たときに会社にとってもお客様にとってもプラスになると考えています」という回答でした。

産後の復職をサポートする動きは航空業界全体で広がりつつあり、日本航空では、就学前の子どもがいる場合、希望すれば宿泊を伴うフライトが免除されたり、月間のフライト日数を減らすこともできるということです。


<人材獲得こそ企業の成長に>
CAの世界も憧れややりがいだけでは選ばれない時代。それだけ企業の人材獲得競争は、人手不足を背景に厳しくなっているということだと思います。働く女性が増えたとはいえ、私の周りでも結婚や出産を機に退職した人は少なくありません。

柔軟な勤務制度や人事制度を導入して、こうした人たちが働き続けられる環境を整えなければ、企業の成長も限られたものになってしまうことを改めて考えさせられた取材でした。

投稿者:吉永なつみ | 投稿時間:14時46分

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