2019年08月07日 (水)外国人は「対象外」ってどういうこと?


※2019年4月9日にNHK News Up に掲載されました。

「外国人は、対象から除外する」
多文化共生が叫ばれる昨今。なかなかインパクトのあることばです。実は、この文言、ある公文書に書いてあったものです。なぜ、外国人は対象から除外されているのか。調べてみました。

ネットワーク報道部記者 木下隆児

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<「見えない」子どもたち>
外国の子どもたちの中には、学校に通ってもなく、所在すらわかっていない子どもたちがいます(詳しくは、『News Up』4月2日の記事「“見えない”子どもたち」)。

NHKが専門家と一緒にその数を推計したところ、およそ8400人に上っています。日本人に住む外国人の児童・生徒はおよそ12万人いますので、割合にすると7%になります。

<外国人は対象外!?>
私もこの問題の取材班の1人で、日本の学校に通っていない外国人の数がわかるデータがないかといろいろ調べている時見つけたのが、冒頭の文言でした。

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文部科学省が毎年行っている「不就学学齢児童生徒調査」の調査票に書かれていたんです。この調査は、義務教育制度のある日本で、学校に通っていない子どもたちを把握して、1人でも多くの子どもたちが学校に通えるように行っているものです。

「外国人は、対象から除外する」ということは、学校に通っていない外国人の子どもたちがどういう状況に置かれているのか、調べなくてもいいということなのでしょうか?

<文部科学省に聞いてみた>

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早速、この疑問を調査を行っている文部科学省に聞いてみることにしました。

ーーー調査票に「外国人は、対象から除外する」と書いてあるが?

「市区町村の教育委員会は、就学義務の発生や、就学義務の対象となっている児童や生徒をちゃんと学校に通っているかを把握するために『学齢簿』という名簿を作ることになっていますが、その学齢簿は、日本国籍を有している者が記載の対象となっているためです」

ーーーなぜ、学齢簿は日本国籍を有している子どもだけが対象なのか?

「学齢簿に外国籍の児童・生徒が記載されていないのは、外国人が就学義務を負っていないためです」

<義務教育の対象じゃない>
やはり、その理由は、義務教育の「壁」でした。改めて調べてみると、確かに、義務教育の対象は、憲法にちゃんと書かれていました。

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第26条1 すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
義務教育の対象はあくまでも国民であって、外国人は対象ではないんです。

では、小中学校に通っている外国人の子どもたちは、どういう理屈で学校に通えてるんでしょうか?これも文部科学省に聞いてみました。

「確かに外国人の子どもには、就学義務はありませんが、公立の義務教育に就学を希望する場合には、国際人権規約なども踏まえて、日本人生徒と同様に無償で受け入れるよう全国に通知しています」

外国人は、希望しないと教育を受けられないんだそうです。

<働いてしまう子どもも>
長年、外国人の不就学の問題に取り組んでいる愛知淑徳大学の小島祥美准教授に、所在のわからない外国人の子どもたちは、どういう状況になっているのか聞いてみました。

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「外国人の子どもたちは、希望すれば入学はできますが、でもそれはある種恩恵的な扱いとして入学できているだけです。彼ら・彼女たちは日本語がわからなくなって勉強についていけなかったり、自分に自信がもてなくなったりして、学校を辞めてしまう子もいます。その安全装置として外国人学校がありますが、どうしても授業料が高くて支払えず学校に行けないケースもあります。経済的に苦しい親を少しでも助けたいという思いから、働いてしまう子どもたちもいるんです。働かないまでも弟や妹の面倒をみる家事労働をしている子どももいます。そういう子どもたちも、ある意味労働を強いられてしまっているといえるんです」

<「除籍」される子どもも>
小島准教授は、別の驚くようなケースも教えてくれました。日本人の場合、学校を30日以上欠席すると、不登校という扱いになりますが、外国籍の子どもの場合は「除籍」されてしまうケースもあるそうです。

給食費や学用品の代金は保護者から集めていますが、長期欠席するとその代金が得られないので、「除籍」しているのではないかと、小島准教授は分析しています。

しかし、「除籍」してしまうと、その外国籍の子どもたちがもし学び直そうにも、在籍日数が足りなくなったり、高校進学の際に大きな影響が出たりしてしまうそうです。

<「見えない」子どもたちは10年前から>
小島准教授は、この問題を外国人の「不就学」の問題と位置づけ調査に取り組んでいて、少なくとも10年前から起きていたといいます。

一部の自治体でも、外国人の子どもたちの「不就学」を問題視して、独自に外国人の子どもたちの所在を把握して、「不就学」をゼロにしようと取り組んでいる自治体もありますが、そうした動きはごく一部にとどまっていました。

しかし、ようやく国も重い腰を上げました。4月から外国人材の受け入れが広がるのに伴って、文部科学省は外国籍の子どもたちの「不就学」の実態を把握するため、近く初めての全国調査を行うことになったのです。

<日本人と外国人>
日本人でも1年以上所在がわからない子どもたちはいます。文部科学省の去年の調査によると、その数は63人。日本人の児童や生徒は1000万人近くいるので、割合は0.0006%。それだけ日本の義務教育が徹底していることがわかります。

一方、外国人の場合は8400人。割合は7%でしたから、出現率で比較すると1万1000倍の差があります。

外国人の「不就学」の数は、あくまでも統計データから推計しただけなので、実際には住民票を残したまますでに引っ越しをしていたり、すでに帰国していたり、あるいは無認可の外国人学校に通ったりして、「不就学」ではない子どもたちも含まれているかもしれません。

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でも、日本が批准している国際規約にはこう書かれています。「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める」日本に住む外国人の子どもたちは、みずから希望しないと教育を受けられず、学校に通っていなければ、どこにいるかもわからない。

0.0006%と7%。その差は明らかです。すべての子どもたちが、国内のどこに住んでいても、安心して学べる環境であってほしいと願わずにはいられません。

私たちは、外国にルーツを持つ子どもたちをめぐる「いじめ」を継続的に取材をしています。(『News Up』3月7日 の記事「いじめられる理由を教えてください」)そこで、実際の体験談やご意見を以下のサイトで募集しています。特設サイト「外国人“依存”ニッポン」ご意見・ご質問募集ページまで。(https://www.nhk.or.jp/d-navi/izon/form.html)

投稿者:木下隆児 | 投稿時間:12時09分

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