2019年05月14日 (火)意外とアバウト!? 学級閉鎖。


※2019年2月12日にNHK News Up に掲載されました。

「あすから学級閉鎖になります!」子どものころ、この“宣言”を聞いた瞬間、心躍った方も多いのではないでしょうか。ことし猛威を振るうインフルエンザの影響で、全国の学級閉鎖の数は、今月3日までの1週間で小学校や中学校など5400か所余りにのぼっています。親になると、子どもの預け先など悩ましい問題も起きる「学級閉鎖」。いったい、何人休んだら教室は「閉鎖」されるの?

ネットワーク報道部記者 郡義之・鮎合真介・木下隆児

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<謎すぎる基準?>
インフルエンザの流行もあって、各地で相次ぐ学級閉鎖。厚生労働省によると、今月3日までの1週間で、全国の保育所、幼稚園、小学校、中学校、それに高校で、学級閉鎖の措置をとっているところは5400か所余りにのぼっています。

先月中旬から急激に増えていて、学年閉鎖や休校の措置をとっているところも合わせると7000か所近くにも達し、厚生労働省は今後もさらに学級閉鎖などを実施するところが増えるおそれもあるとしています。

190212iga.2.jpg全国各地で相次ぐ学級閉鎖ですが、ネット上では、学級閉鎖を行う「基準」について、戸惑いの声が数多く上がっています。
「3人か5人出たら学級閉鎖にしたほうが広がらないと思う」
「どういう判断で39人中17人休みで学級閉鎖しないという判断に至るのか知りたい」
「6人しか学校休んでないのに…学級閉鎖って何?今の中学ってそんなに基準甘いの?」
「学級閉鎖の判断基準、謎すぎない?」
その謎を探ってみました。

すると学校保健安全法の中では、学級閉鎖や学校閉鎖を「臨時休業」ということばで次のように定めていることがわかりました。

「学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる」

190212iga.3.jpgそれでは具体的にどれだけの児童や生徒がインフルエンザなどで欠席したら、学級閉鎖になるのでしょうか。

法律を所管する文部科学省の担当者は「インフルエンザに感染した児童や生徒の数や状況は地域ごとに異なるので、具体的な基準は法令上定められていません。それぞれの都道府県や地区町村で基準を設けているケースもあるようです」


<さまざまな基準・目安>

190212iga.4.jpgいまいち、ふに落ちないので、自治体に聞いてみました。都内のいくつかの自治体に取材をしてみると、自治体によって、基準や目安がさまざまなことが分かりました。

東京都教育委員会では、明文化された基準はないものの、クラスの20%~30%の児童や生徒がインフルエンザによって欠席した場合などを目安にして、まずは校長が学級閉鎖の実施を検討し、教育委員会に連絡したうえで最終的には教育委員会が決めるそうです。

墨田区は東京都に準じて学級閉鎖を実施するかどうかを決めているということです。

一方、世田谷区ではクラスの児童や生徒の欠席の割合をおおむね25%以上としています。

また、杉並区では学級閉鎖を決める際の基準はなく、各学校の校長が学校医と相談したうえで、あくまで校長が閉鎖するかどうかを判断しているそうです。

取材した範囲では、事実上、校長が判断しているところが多いようです。


<決断はぎりぎりまで>

190212iga.5.jpg実際に校長先生に話を聞いてみました。

東京都八王子市にある市立小学校では、先月から今月にかけて、インフルエンザとみられる症状で学校を休む児童が増えてきたことから4年生の1クラスで5日間の学級閉鎖、5年生で4日間の学年閉鎖を決めました。

八王子市では、学級閉鎖の判断は校長に委ねられています。

この小学校の校長は、学校を休む児童が増えてきたことから、まず学校医の医師に相談しました。具体的な閉鎖日数について、医師の意見を求めたほか、今後の患者数の見通しなどについてもアドバイスを受けて決めたということです。

校長は「閉鎖をすれば、授業が遅れてしまうのではないかという懸念もあるので、決断はぎりぎりまで見極めて行うだけに、常に悩みます」と話していました。

災害で大きな被害を受けた地域の学校では、授業日数の確保が課題です。

西日本豪雨で被害を受けた岡山県倉敷市の市立小学校では先月から、4年生~6年生を対象に、週1回、6時間目までの授業を7時間目まで延長しました。この学校では、去年7月の豪雨災害の影響で、長い間、臨時休校を余儀なくされ、授業にも影響が出ていました。

さらにインフルエンザによる学級閉鎖となれば、必要な学習時間が確保できないおそれがあるため“予防的に”授業の延長を行っているということです。この措置は3月までで、この学校の教頭は「国語と算数を中心に、少しでも授業時間を確保しておきたい」と話していました。


<感染者1人でも閉鎖が有効だが…>
学校現場の校長も判断に迷うこともある学級閉鎖。明確な基準はできないのか。

190212iga.6.jpg群馬大学で感染症の発生原因や予防などを研究する、内田満夫准教授は「学校閉鎖や学級閉鎖がインフルエンザの感染拡大にどれだけの効果があるのかについては、今まさに研究が進められていて、どういった基準で行えばいいのかは結論が出ていない。感染拡大の防止のためには、インフルエンザにかかった人と会わない環境を作るのは間違いなく大切。単純にインフルエンザの感染拡大を防ぐことだけを考えれば、理論上、クラスに1人でも感染者が出たら、”学校閉鎖“をすることが有効だと言える。実際に10年前に新型インフルエンザが世界的に大流行したときには、そうした対応が取られたケースもあった」と話します。

そのうえで内田准教授は「毎年のように流行する季節性のインフルエンザに対しては、危機感を持ちにくいこともあり、学校側が授業時間の確保などを優先して早期の学校閉鎖や学級閉鎖に踏み切りにくい現実があるようだ。基準を作ったほうが学校現場は、議論をする負担が減るので楽だと思う。ただ、基準を作るための根拠が今はまだ不足しているので、私たち研究者が調査研究をして、学校閉鎖や学級閉鎖の判断をしやすいような情報を提案していきたい」と話していました。

意外とアバウトな学級閉鎖の判断基準。学校だけでなく、共働き世帯など、家庭にも影響を及ぼすだけに、みんなが納得できるような分かりやすい基準が必要かもしれないと感じました。

投稿者:郡義之 | 投稿時間:16時00分

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