2017年11月15日 (水) あなたのお子さんはどのくらい習い事をしていますか?


※2017年10月31日にNHK News Up に掲載されました。

スイミングに体操、バレエ、ピアノに英語など本当にさまざまな習い事があります。子ども自身が「やりたい」と言って始めることから「体と心を鍛えさせたい!」「国際舞台で活躍する人材に!」といった親の希望や願望がきっかけになることもあるようです。取材班は、子どもを持つママ記者3人。何かと気になる「子どもたちの習い事」をテーマに取材してみました。

ネットワーク報道部記者 野町かずみ・飯田暁子・大窪奈緒子

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<習い事にかける費用は?>
取材のきっかけになったのは先週公表された「学校外教育活動に関する調査2017」という調査結果です。民間の教育研究所のベネッセ教育総合研究所が保護者の教育観を探ろうと全国の幼児から高校生の子どもを持つ母親を対象に行ったもので、1万5000人余りが回答しています。

まずは、気になった結果をいくつかピックアップしてみます。金額はいずれも1か月あたりの支出額です。

ana171031.2.jpg学校外の教育活動、いわゆる習い事にかける費用は?
平均で幼児が6500円、小学生が1万5300円、中学生が2万2200円、高校生が1万6900円だそうです。今も昔も、心と体を鍛えたいとスポーツや運動の習い事をする子どもたちは多いようです。


<1番人気はスイミング>

ana171031.3.jpg小学生では、3人に2人近く(63.6%)が定期的にスポーツ活動をしていると回答し、最も多かったのがスイミングで小学生では3人に1人(33.6%)に上っています。

年代別にみるとスポーツ活動にかける費用のピークは小学3年生で5100円となっています。
記者たちのまわりでも赤ちゃんのころから親子一緒に遊ぶスイミングスクールに通っている、人気のスクールに通うために何か月もキャンセル待ちしているなどの話も見聞きします。


<習い事の支出 ピークは中学3年生>
また、塾なども含めた学校外の活動費で支出が最も多かったのが2万5900円の中学3年生でした。やはり高校受験を控えていることが大きな要因のようです。


<都市部ほど支出多く>

ana171031.4.jpg今回の調査結果を居住地の人口規模別でみると都市部ほど支出額が多い傾向が見られます。5万人未満では9900円でしたが民間経営の塾やスポーツ施設が多くある政令指定都市や特別区ではおよそ1.8倍の1万7500円となっています。


<親の収入による格差も>

ana171031.5.jpg世帯収入別でも活動費にかける差が見られ400万円未満では8000円となっているのに対し年収800万円以上の世帯では2万5000円と3倍以上の差となっています。親の収入による教育格差が指摘されていることを表すデータの一つと言えそうです。


<運動や芸術の習い事よりも学習塾系を重視する傾向>
ベネッセ教育総合研究所では同様の調査を4年前の2013年と8年前の2009年にも行っています。それと比較してみると母親の“子育て感”の変化が読み取れます。

ana171031.6.jpg「運動やスポーツをするよりももっと勉強してほしい」かとの質問に対して「とてもそう思う」、「まあまあそう思う」の回答の合計は2009年の26.8%から今回2017年は39.4%と13ポイント近く増えているのです。
特に「幼児」では14.4%から27.4%と2倍近くに、「小学生」でも24.3%から37.5%と1.5倍に増えています。
勉強をもっと」という意識は子どもを持つ親に広がっていることがうかがえます。


<背景に教育改革が…>
学習を重視する保護者の意識について調査を行ったベネッセ教育総合研究所では、2019年度から小学校高学年で英語が正式な教科となることや、2020年度には思考力や判断力を問うため、国語や数学の試験に記述式の問題の導入や、英語のテストでTOEFLなど民間の検定試験を使うなど、大学の入試改革があることが背景にあると分析しているそうです。教育を取り巻く大きな変化を保護者が不安に思い「勉強シフト!」が始まっているとの見方です。


<勉強シフトに専門家は警鐘>

ana171031.7.jpg幼児教育について研究している東京大学大学院総合文化研究科の開一夫教授に今回の結果で見えた親の“勉強シフト”について尋ねてみると調査を行った研究所とほぼ同じような感想でした。

「2020年度の大学入試改革では、思考力や判断力それに表現力など、学習塾だけでは培うのが難しいであろう分野が入試に取り入れられる方向で議論が進んでいます。それにもかかわらず子どもたちにより勉強をさせたいという傾向がうかがえる今回の結果にはとても驚いています」

そのうえで開教授は幼少期の習い事については「塾や習い事で主に身につくのは計算が早くなる、字が上手に書けるようになる、とび箱が跳べるようになるなど、短期的で目に見えてわかりやすい事柄です。長期的に見た社会で役立つ能力が必ずしも育まれているわけではありません。習い事を増やすほどに、友人と遊ぶ時間や親と食卓を囲みながらゆっくりと話す時間が減っていくことも認識したうえでその習い事が本当に必要か判断してほしいです」と提言しています。


<費用が大きな負担に>
また、家計の面からも習い事にかける費用をバランスよく考える必要があるとの指摘もあります。

ana171031.8.jpgベネッセ教育総合研究所の調査では「教育にお金がかかり過ぎると思う」かとの質問に対して、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」の回答の合計は67.2%に上りました。


<いちばんお金がかかるのは大学進学時をお忘れなく!>
ana171031.9.jpgこの結果をファイナンシャルプランナーの岩永真理さんに尋ねてみると、「子どもが10歳ごろまでがお金の貯め時で、私立大学に行くことも想定して18歳までに400万円ぐらい用意しておくといいとアドバイスしていますが、幼いうちから習いごとをさせているためなかなかお金が貯まらないというケースも見られます」と言います。岩永さんは「子どものために教育費は削りがたいというご家庭が多いですが、給料が右肩上がりではないこの時代、大学に行く頃になってお金が足りずに子どもにとって借金ともいえる奨学金に頼ることになったり大学進学を諦めたりすることになっては本末転倒です。教育費も聖域ではなく時には習い事を辞めるという選択も必要ではないでしょうか」と話していました。

子どもの将来のためには早くから学ばせたい、多少の無理をしても習わせたいと思う気持ちはどの親にもあると思います。ただ、わが子にとってどれがいい道なのか、そして家庭に負担になりすぎていないのか、ちょっと立ち止まって考えてみるのも必要なのではないかというのが、取材したママ記者3人の感想でした。

投稿者:飯田 暁子 | 投稿時間:11時40分

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