2017年11月13日 (月) 保育園選びに悩むあなたへ


※2017年10月26日にNHK News Up に掲載されました。

来年4月入園に向けた認可保育園の申し込みが多くの自治体で始まりました。初めての保育園選びでは、園庭の有無や部屋の広さや、最近話題になった「おむつは持ち帰りかどうか」といった点に目がいきがちかと思います。「待機児童問題が深刻だし、入園できる可能性の高いほうにしようかな」という悩みもあります。何を優先して選べばいいのか、専門家に聞きました。

ネットワーク報道部記者 飯田暁子

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<1 直感が大切!保育士の印象は>
「保育園選びで最優先は保育の質。保育士が子ども一人一人を尊重し、成長を支援しているかです。安心して子どもを預けられるかどうか、見学したときの直感を大切にしてください」

hoi171026.2.jpgこう話すのは全国の保育環境の調査などを行っている「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんです。
チェックポイントは、施設長や保育士は目を合わせて話してくれたか、子どもたちを命令口調で動かそうとせずていねいに接していたか、子どもたちは安心して甘えていたか、だと言います。

さらに普光院さんによると、待機児童対策で保育園の整備が進められている一方で、保育士不足が深刻化。経験やスキルが十分でない保育士が増えると現場に余裕がなくなり、負担感から辞める保育士が出てきて、また経験の浅い保育士が入ってくるという悪循環も見られるといいます。

「お昼ごはんの時間やお散歩から帰ってきた直後など、特に慌ただしいときの保育士たちの立ち居振る舞いを見ると、現場に余裕があるかどうかが分かります」と話していました。


<2 “親の便利さ”は優先しない>
耳が痛かったのは、「親の利便性を優先していませんか」という指摘です。たとえばネットでも話題となった、使用済みおむつの持ち帰りについて。保育園を考える親の会の会員の間でも「おむつ持ち帰りの保育園はいやだ」という声が多かったということです。

hoi171026.3.jpgしかし普光院さんは言います。「子どもに寄り添った質の高い保育をしているのに、おむつを持ち帰る園はいやだと選択肢から外してしまうのは、優先順位が違うのではないでしょうか。『玄関で子どもや荷物を受け渡せる方がすぐに仕事に向かったり帰宅できるのでいい』という声を聞くこともありますが、それでは保育園での子どもの生活ぶりが見えません」

また、英語や体操、音楽といった特別なプログラムがある保育園にも、ついつい惹かれてしまいます。しかし普光院さんは「子どもが安心して過ごせるか、一人ひとりの発育を尊重し支援する保育ができているかどうかが最優先です。保育の質が同等だったら、それから利便性や特別な内容で選べばいいのではないでしょうか」と話していました。


<3 毎日の負担を考えて>

hoi171026.4.jpg続いては通園の問題。普光院さんはかつて、家と保育園、職場の3か所が近いほうがいいとアドバイスしていたそうですが、待機児童問題が深刻な現状では、「妥協するなら職場との近さ」と指摘。「家から保育園は子ども連れで動くので近いほうがいい、職場までは自分一人で移動するので遠くてもなんとかなる」といいます。

赤ちゃんを連れて、着替えなどの保育園の荷物を持って毎日通えるのか。雨や風の日など厳しい状況も想定して検討してほしいということです。「通えると思って選んだけど、遠くて毎日大変なので転園したい」という相談を受けることもあるそうですが、待機児童がいる地域では、転園は難しいのが実情です。

持ち家でないならば保育園の近くに引っ越すことも選択肢の1つだとアドバイスすることもあるそうです。


<認可保育園 もし入れなくても慌てずに>

hoi171026.5.jpg認可保育園に入れるかどうか、多くの自治体では結果の通知があるのは2月ごろ。それまでの間にやっておくことや、もしも保育園には入れなかったらどうすればいいのか。

普光院さんはまず、「今のうちから認可外の保育園にも申し込んでおいたほうがいい」と言います。待機児童が多い地域では、入園希望者が100人待ちという認可外の保育園も珍しくありません。

それでも「認可園に入れたから、他の認可外の園にしたからとキャンセルする人もたくさんいます。100人待ちと言われてもあきらめずに申し込み、時々電話して状況を確認し、入園の希望を伝えてください」ということです。

ただし認可外の保育園は認可の園に比べて質の差が大きいので、安心して預けられるかどうか、必ず見学してほしいと話していました。

また、自治体によっては認可保育園の2次申し込みもあります。通園は大変になりますが、駅とは逆方向の保育園など、申し込む園の範囲を広げることも検討してみてください。

4月から保育園に入れなくても、「遠くて通えない」などの理由で辞退する人がいたり、保護者の転勤などによる退園があったりして、5月に急に入園できたというケースもよくあるそうです。普光院さんは、「育児休業が延長できるかなど職場の状況にもよりますが、あきらめずに申し込みを続けてほしい」と話していました。


<子ども優先の保育園選びを>
私が保活をしたのは当時、待機児童が全国一多かった横浜市。最初は室内の広さや衛生面などをチェックしていましたが、次第に「入れるかどうか」に気を取られるようになってしまったことや、「今、入園を決めるならば確実に受け入れる」と、認可外の保育園で言われて心が揺れ動いたこともありました。

hoi171026.6.jpgでも大切なのは「子どもにとっていい保育園を選ぶ」という気持ちを忘れないこと。そして何より、「納得できる保育園しか申込書に書かない」、「それでもその中のどの園かには入れる」。そういった当たり前の状況に早くなってほしいと思います。

投稿者:飯田 暁子 | 投稿時間:11時00分

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