2017年10月18日 (水) "冷たい給食"問題から見えてきたもの


※2017年9月27日にNHK News Up に掲載されました。

神奈川県大磯町の中学校で給食の食べ残しが相次いでいた問題。中学生の子を持つ親を中心に注目した方も多かったかと思います。この学校では、給食に、届けてもらった弁当を食べる“デリバリー方式”が導入されていましたが、生徒からは「冷めていておいしくない」と不評だったと言います。
記者自身、中学校に上がる前の子を持つ親として、今の中学校では給食が普通なの?しかも業者が作った弁当が給食?と、いくつも疑問がわいてきました。中学校給食の現状と課題、調べてみました。

ネットワーク報道部記者 野町かずみ
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<冷たい給食 ネットで関心>
問題が起きた神奈川県大磯町の中学校では、保護者の80%が希望したため、去年1月から給食を導入しました。

各学校に調理施設をつくると費用がかさむので、採用したのは、業者に作った弁当を届けてもらう“デリバリー方式”でした。

しかし、「冷めていておいしくない」と不評だったうえ、異物の混入も明らかになり、大量の食べ残しが相次ぎました。

「そりゃあったかい給食がいいよねえ」
「そもそもまずいご飯なんて食育にならない」
「デリバリー弁当は仕切りが浅くて、デザートとおかずが混ざったりして評判よくなかった」

この問題をめぐってはネット上でもさまざまな投稿が見られました。

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<国は給食実施率アップを目指す>
そもそも中学校の給食は昭和31年、小学校より2年遅れでスタートしました。「学校給食法」という法律に中学校でも給食を提供することが明記されたんです。

この流れは、共働きの世帯が増え手間のかかる弁当ではなく給食を求める保護者の声が強まったのに加え、国が「食育」に力を入れ始めたことから加速していきました。

tsu170927.3.jpg国公立と私立を合わせて、小学校では100%近くで給食が導入されていますが、中学校も82%(平成27年度)まで数字を伸ばしてきました。

さらに、国は、平成32年度までに中学校での給食実施率を90%以上に引き上げる目標を掲げていて、各自治体は実施を急ぐ必要がある状況だと言います。


<デリバリー方式は9.3%>
こうした流れの中で、まだ給食を導入していなかった自治体が注目したのは、業者が作った弁当を学校に届けてもらう“デリバリー方式”でした。

学校に自前の調理施設が整備されていなかったり近くに給食センターがなかったりする自治体にとっては、コストがかからないうえ、配膳の時間や手間も省ける利点があるんです。文部科学省によりますと、この方式は公立中学校で給食を実施している自治体の9.3%で(平成26年度)導入されているということです。

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<”冷たい” ”汁物なし”>
しかし、デメリットも指摘されています。食中毒を防ぐため弁当を10度以下に冷やさなくてはならないうえ、食べる際の温め直しもできないのが現状です。

また、弁当箱におかずを詰めるため、いわゆる「汁物」を献立に加えにくいなどの制約があるほか、生徒に応じた量の調節もできません。

ただでさえ、給食は、文部科学省の「学校給食実施基準」で、1回分のエネルギー量やタンパク質など栄養素の割合などが細かく規定されていて、これに従いながら予算の範囲内で自治体が献立を作らなければならないので、駅弁のようにおいしさだけを追求できないのです。


<方針転換する自治体も>

tsu170927.5.jpgこうした事情から対策に乗り出した自治体もあります。例えば大阪市は、平成14年度から、すべての公立中学校で“デリバリー方式”での弁当給食を始めましたが、生徒から「おかずが冷たい」という不満の声が上がり、食べ残しの割合が30%に上りました。

試行錯誤の末、市は、これまでの方針を転換し、すべての公立中学校で温かい給食が提供できるよう改善策に着手したんです。

今は、近隣の小学校の調理室で中学校の分の給食も作れるよう設備の改修などが進められていて、今月までに半数の学校で温かい給食が提供されるようになったということです。

ただ、出来たての給食を届けようと、市では、学校まで15分以内の場所に調理施設を確保することにしたため、場所探しにも苦労しているということでした。


<”おいしく”食育を>

tsu170927.6.jpg簡単には着地点を見いだせそうにない中学校給食の問題。文部科学省で学校給食調査官を務めた京都府立大学京都和食文化研究センターの田中延子客員教授は「学校給食の目的は空腹を満たすことではなく、子どもたちが将来のために栄養バランスを学んだり日本の食文化を学ぶ食育にある。おいしくない給食で食育はできない」と指摘します。

そのうえで「業者に頼む場合、弁当箱ではなく、保温性の高い『食缶(ずんどう鍋のような容器)』におかずを入れてもらう形にすれば、異物も混入しにくくなるしコストを抑えながら温かいおいしい給食を提供できる。当然、配膳や後片づけが必要で15分程度の給食時間では実現できないので、給食の時間をしっかり取っておいしい給食を出す工夫をしてほしい」と話していました。

私の子どもは保育園児ですが、園が作る給食を楽しみに登園しています。小学生まではこれが続くとして、中学生になって急に「冷たい給食」になるのは、やはりしのびないものがあります。

財政事情が厳しいなか給食にコストがかけられない事情も理解できますが、自治体にはコストや給食時間だけを重視しない取り組みが求められていますし、今回の問題をきっかけに、育ち盛りの中学生にとって大切な給食というもののあり方をきちんと議論すべきだと感じました。

投稿者:野町かずみ | 投稿時間:15時25分

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