2017年02月17日 (金)「スマホ育児」発育に影響は?


※2017年2月5日にNHK WEB特集に掲載されました。

“育児の中で、幼い子どもにスマートフォンを渡して使わせる”、これが「スマホ育児」とも「スマ放置」とも呼ばれ議論になっています。
子どもがスマホを使った時、視力が落ちないか?、発育に影響しないか?、お母さんたちが感じている不安の答えを探ってみました。

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<不安を感じながら、使わせている母親たち>
どのくらいのお母さんが育児の中で子どもにスマートフォンを使わせているのか。
NHKが小学校入学前の子どもがいるお母さん、123人を対象に調べたところスマホを使わせた経験があるのは80%近くにのぼりました。そして電車の中で泣きやまない時など、周囲に迷惑にならないようにと考え、使うケースがほとんどでした。

iida170205.2.jpgしかしアンケートの自由記述欄には「目が悪くなりそうで心配です」、「泣きやませるのに有効ですが、くせになってしまいそう」など子どもへの影響を心配する声が多く書かれていました。

果たして影響はあるのか?専門家に聞いてみました。


<視力への影響は?>
まず視力への影響はどうなのか、話をうかがったのは国立成育医療研究センターで小児眼科が専門の仁科幸子医師です。仁科さんによるとスマ-トフォンを使わせることで目にどのような影響があるのか、実はまだ科学的には分かっていないということです。ただし次のようなことを知っておいてほしいそうです。

「短時間見せる分には問題はない。ただし0歳から6歳頃までは、目に入った情報が脳に伝わって遠くまで両目でバランスよくものを見たり、ピントを調節したりするといった機能が育つ大切な時期。だらだらと長時間使わせるのは問題」。

iida170205.3.jpgそれでは子どもにスマホを使わせる場合、気をつけなければいけないのは具体的にどんなことでしょうか。

大事なのは距離と見せる時間です。
仁科さんは、スマホはテレビに比べて”見る距離が近い”と指摘しています。そして目は、遠くのものを見るよりも近くのものを見るほうが、緊張し疲れやすいということです。
このため、「子どもにスマホを見せるときには、30センチ以上は離すこと」そして見せる時間は、「テレビも連続で30分程度が目安だと考えています。スマホの場合は、見る距離が近く画面が小さいので15分程度に抑えたほうがいいと思います」と話していました。


もうひとつ大事なポイントがあります。
それは”親がきちんと管理”です。
子どもは大人と違い”目が疲れた”ぼやける”といった症状に気付きにくいため渡しっぱなしにせず、必ず親が使う時間やスマホとの距離に気を配ることが大事だということです。

そして、 周りが暗いところや、車やベビーカーなど揺れ動いている状況の時には見せないようにしてほしいということです。

仁科さんは、「スマホをおもちゃのひとつとして短時間見せることに不安を感じすぎる必要はないです。またたまに1時間見せたからといってすぐに悪影響があるわけではありません。しかし、乳幼児期は子どもの視覚が発達する大切な時期なので、スマホだけといった偏った刺激だけにならないように気をつけてください。スマホで目を使ったら今度は外遊びをするなど子どもには遠くのものや近くのもの、それに動くものなどいろいろなものを見させてあげるようにしてください」と話していました。


<小児科医の視点から>
スマートフォンが子どもにどんな影響があるのか。
小児科医でお茶の水女子大学副学長の榊原洋一さんに話を聞いてみました。榊原さんは「登場して久しいテレビでさえ、子どもに見せることで何らかの影響があるのか研究中です。スマホの影響に関する研究結果や科学的根拠はまだありません」と話していました。

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<大切なのは関わり方>
そのうえで榊原さんは、「かつてテレビの視聴時間が長い子どもは、言葉の数が少ないという研究結果がありましたが、さらに詳しく研究すると、視聴時間が長くても家族の会話が多ければ言葉も多いという結果が出てきました。
子どもの発育に重要なのは、テレビやスマホなどの視聴時間の長短よりも、生身の人間とのやり取りがあるかどうかです」と指摘していました。

また「データに基づいた推奨されるスマホの使用時間などは今の段階ではありません。常識的な使い方をしていれば心配する必要はないと考えています。スマホ依存を心配する方もいますが、おうちの方が子どもの生活習慣を常識的な範囲内でコントロールできているかにかかっています。子どもには、スマホばかりやテレビばかり、読書ばかりといった”一つのことばかり”にならずいろいろな体験をさせてあげてください」と話していました。


<発達への影響は?>
発達心理学が専門で、恵泉女学園大学の学長の大日向雅美さんにも話を聞いてみました。
大日向さんは「スマ-トフォンをほんの短時間与えるくらいで、発達がゆがむことはありません。子どもの発達というのは長い時間、さまざまなファクターが寄せ集まってその子なりに発達していくものです。ほんのスポット的なことで取り返しもつかないような悪い影響を与えてしまうなどと不安に思うことは必要ないです。お母さんたちは、もっとどっしり構えて、TPOをわきまえながら上手に使うことを考えてほしい」と話していました。

iida170205.5.jpgまた大日向さんはスマホ育児について厳しい意見もあることについて、「少子化で、今は良くも悪くも子育てに関心が集まり、ちょっとしたことでもあれやこれやと言われます。しかし子どもが騒いだ時にスポット的にスマホを使うことは今の子育てではありえることです。周りの方も電車の中で子どもが泣いたり騒いだりしたら、あやしたり、声をかけたりしてあげてほしい。子どもの育ちをみんなで見守り、喜びも分かち合うような社会になってほしい」と話していました。

<こんな意見も>
NHKの情報投稿窓口「ニュースポスト」にもスマホ育児についてさまざまな意見が寄せられました。

iida170205.6.jpg「子どもが見たがらないのにスマホを見せて静かにさせようとするのはおかしいですが、そうでないなら好奇心や知識欲を満たすのに有効だと思います」といった意見。
一方で、「子どもがスマホを見たがるのは、お母さんが子どもの前でいつもスマホを見すぎではありませんか。赤ちゃんと向き合うのだったらお母さんがまずスマホを置いてください」といった意見もありました。
アンケートに答えてくれたお母さんたちの意見も、「大人自身がスマホを手放せないため、子どもはそれを映す鏡のようになっている気がする」、「私自身が常に使っており、こういう姿を見せていいものかと感じている」などと自分自身の使い方を振り返る声もありました。


<取材を通じて>
スマ-トフォンが世に出てまだ10年ほどですが、すでに子育ての中に浸透してきています。子どもに長時間使わせっぱなしにするのはもちろんいけないことですが、外遊びなどのさまざまな体験と組み合わせれば、子育ての負担感を減らしたり、子どもの好奇心を刺激したりできる面もあるのではないかと感じました。またスマホを使わせることによる影響は良い面も悪い面もまだ分からないことばかりですが、子ども向けの知育アプリなどがいま次々と開発されてきています。

育児の中でどうすればいい形で使っていけるのかはこれから考えていかなければならない課題だと思います。それと同時に、前回紹介したうださんのマンガのようにお母さんたちにとって「スマホが救世主」とならなくてもいいような環境、母親だけでなく社会で子どもを育てていく環境、それを作っていかなければとも感じました。

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スマホ育児、皆さんはどう思いますか?体験やご意見をお寄せください。
     1106_newspost.jpgNHKの情報投稿窓口「ニュースポスト」 

投稿者:飯田 暁子 | 投稿時間:16時59分

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