2017年01月10日 (火)すべての人に母子手帳を


※2016年11月24日に放送されました。

妊婦の検診記録や産まれた子どもの成長記録などを1冊で管理できる、「母子健康手帳」・母子手帳。戦後まもない昭和23年、日本が初めて導入したもので、今ではアジアやアフリカなどおよそ40の国と地域で使われています。日本では、妊娠すると誰もが無料で手にすることができる手帳ですが、必ずしも全ての人に使いやすいようにできていないことが分かってきました。

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<母子手帳国際会議 “だれひとり取り残さない”>
11月23日から3日間の日程で、東京で、母子手帳の国際会議が開かれました。母子手帳をより使いやすく充実した内容にしようと情報交換するのが狙いです。初日の会合には、インドネシアやケニアなど世界38の国と地域から、250人あまりが参加しました。

161124.6.jpg会議では、障害がある子どもや難民、移民などさまざまな事情を抱えた親子も“だれひとり取り残さない”ことをテーマに、意見が交わされました。
この中で、オランダの担当者が、ダウン症などあらゆる赤ちゃんに対応する母子手帳の準備を進めていることを発表したほか、国際機関の担当者は、移動が多いパレスチナ難民向けに、電子版の母子手帳を新たにつくり、データを管理する計画について話しました。

<“母子手帳は残酷” その意味は>
日本からは低体重の子ども向けに特別の手帳を作った、静岡県の小林さとみさんが登壇しました。講演は意外なことばから始まりました。小林さんは、「母子手帳は残酷でした。小さく産まれた娘たちの記録をつけることができない造りになっていたのです」と話したのです。

161124.3.jpg小林さんは、夫と中学2年の双子の娘と4人で暮らしています。14年前、お腹の赤ちゃんの状況が思わしくなく、予定より3か月早く帝王切開で出産しました。長女の体重は927グラム、次女は466グラムで、標準の赤ちゃんの3分の1以下でした。

出産当時を振り返り、小林さんは「小さくて、でも手足をすごくバタバタ動かしていたので本当に涙なみだで、思い出すだけで涙がでます。そうそう本当にがんばれ、がんばれって」と話しました。

一般の母子手帳は、障害がなく、標準の体重で生まれた子ども向けに作られています。小林さんは、この母子手帳に苦しめられることになったのです。
母子手帳の子どもの成長を記入するページは、例えば、子どもの月齢に応じて「首がすわる」「つかまり立ちができる」などを、『はい』と『いいえ』に丸をするようになっています。しかし、小林さんの子どもたちは、小さく生まれた分、成長がゆっくりでした。小林さんは「『はい』というところに何もつけられない。本当にダメな母親、失格だなって母子手帳を見る度に思わされました」と話しました。

<“小さい赤ちゃん”向けの母子手帳を>
低体重の赤ちゃんが生まれるケースが増えていることを知った小林さんは、新生児の担当医や作業療法士などの協力を得ながら、正規の母子手帳と合わせて使える低体重の子ども向けの手帳を作ることにしました。

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その時の母子手帳は、体重などの増減を示すグラフ「成長曲線」のメモリが2キロから始まっていました。そこで、小林さんは手帳のメモリを0からにし、赤ちゃんが何グラムで産まれても、書き込めるようにしました。

161124.2.jpgまた、母子手帳では、子どもの成長を「はい」「いいえ」で記入するようになっていたページは、「首がすわる」「寝返り」などの成長の項目を細かく分け、子どもができるようになった日にちを書き込めるようにしました。

小林さんは、「“周りの子どもはできているけれどもうちの子できない”ではなく、“大丈夫、きっとこの子もできるようになる”と信じて記録をつけられ、育児を楽しめるようなものにしたいと思って作りました」と話しました。

小林さんが作った低体重向けの手帳を使うことができるのは、静岡県内など一部の自治体にとどまっています。
オランダが導入を検討しているダウン症や障害がある子ども向けの母子手帳も日本には、まだ、ありません。さまざまな状況で生まれた子どもと母親、すべてが安心して使えるよう、母子手帳にもきめ細かい対応が求められています。

投稿者:清有美子 | 投稿時間:15時57分

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