2016年12月28日 (水)あのごちそうが献立に "図書給食"って?


※2016年12月15日にNHK NEWS UPに掲載されました。

161215.jpg絵本などに登場するおいしそうな料理。
どんな味がするんだろうと、想像をふくらませたことはありませんか?こうした夢を小学校の給食でかなえることができるんです。そんな“図書給食”が広がっています。

<話題のツイート>
先月、東京に住む女性のあるツイートが大きな話題になりました。「子どもが通う小学校で月に1度、本に出てくるメニューを再現する“図書給食”がある。すごい。ありがたい。」
このツイートに「素敵な学校ですね!」「他の印象的なメニューがとても気になります!」などの感想が寄せられ、リツイートの数は6000余りに上りました。

<“図書給食”って?>
学校の本と給食をコラボレーションさせた、“図書給食”。どんなものなのでしょうか。
“図書給食”を行っている東京・目黒区の八雲小学校を訪ねました。この給食、学校によって呼び方や実施のしかたはさまざまですが、この小学校では、月に1回、図書館担当の教員と栄養士がどの本を取り上げるか、また本の中に出てくるどの料理を給食にするかなどを話し合いオリジナルでメニューを再現しています。

<「ぐりとぐら」のカステラに“鉛筆の天ぷら”も>

161215_2.jpg“図書給食”の第一弾として登場したのは、野ねずみのぐりとぐらが森で大きな卵を見つけ、フライパンいっぱいのカステラをつくるという子ども向けの絵本、「ぐりとぐら」(作 中川李枝子/絵 大村百合子)からカステラ。

161215_3.jpgことしの11月は、男の子がうそで書いた日記の内容が現実になってしまう…という童話「はれときどきぶた」(作 絵矢玉四郎)に出てくる「鉛筆の天ぷら」でした。

<実は、ものすごい手間が…>
絵本の中の料理。どのようにレシピを考え、作っているのでしょうか。栄養士の佐原久恵さんは次のように話しています。
「誰でも知っている『ぐりとぐら』のカステラですが、詳しいレシピは絵本には載っていません。まず、必要な材料の配分を考えました。そのうえで大切なのは調理法です。オーブンでふっくら焼き上げるには材料を混ぜすぎてもいけないし、混ざっていなくてもダメなんです。
また時間までに人数分を作れるかどうかも重要です。このため学校の調理室だけではなく自宅でも試作を繰り返しました。」

学校給食は食品衛生法や自治体によって調理のしかたや調理の時間などが細かく決められています。この小学校では7人の調理師が、毎日400食の給食を手作りしています。
カステラを取り入れることでバターを溶かしたり、卵を混ぜたりと、ふだんとは違う調理工程が加わりますが、給食の時間が遅れることは許されません。
午前7時前から準備を始め、11時半ごろにすべてのメニューを完成させるためには、綿密に準備をする必要があるのです。

161215_4.jpg一方、「鉛筆の天ぷら」は佐原さんのアイデアが腕の見せどころでした。鉛筆のベースとなる材料はサツマイモを選びました。サツマイモを拍子木のように四角柱に切り、角をとって丸みを持たせたあと、先端をささがきに切って落とし、鉛筆の芯のようにとがらせます。揚げ方もくふうしました。天ぷらの衣には青のりを入れました。そして、サツマイモの先のとがった部分をつまんで、一本一本、衣につけてそっと天ぷら油に落としていくと…。持ち手の部分が青色の“鉛筆の天ぷら”の完成です。
サツマイモの切り落とした部分もかき揚げの材料に入れ、食材をむだにしない配慮も欠かしませんでした。子どもたちは事前に配られた献立表で「鉛筆の天ぷら」が出ることを知り、心待ちにしていたということで、給食が配膳されると大きな歓声をあげ、まず食べて食感を楽しむ子、食事の最後に取っておく子とさまざまだったそうです。

161215_5.jpg佐原さんは「当日は調理で追い込むと分かっていたので、調理室に入って調理師と一緒にサツマイモを油で揚げる作業に加わりました。“図書給食”をきっかけに苦手な食材を一口でも食べられるようになり楽しく食事をしてくれたらうれしいです」と話していました。

<なぜ?“図書給食”>
この小学校では、なぜ“図書給食”を始めたのでしょうか。背景にあるのは子どもたちの“活字離れ”だといいます。
テレビやインターネットなど“映像”から情報を得ることが増え、本を読まなくなった子どもたちの本への関心を高めるのが狙いでした。
4年前から定期的に行っていましたが、去年からは毎月1回と頻度を上げました。
“図書給食”の日に合わせて毎回、図書室に取り上げた本と給食の写真を掲示した特設コーナーを作ります。すると、給食が終わった後の昼休みには、子どもたちが本を借りようと押し寄せるそうです。

161215_6.jpg図書館の担当教員の柴田玲子さんは次のように話します。
「大好きな本でどのシーンが好きかを聞くと食べ物に関係することを思い浮かべる人が多く、本の中の食べ物は独特な魅力があるのです。“図書給食”のメニューは誰もが知っているような絵本を中心に提案するようにしています。小学校の図書室には絵本から分厚い本までさまざまありますがまずは絵本を入り口にし本の楽しさを知って欲しいです。」

<子どもたちに心と体の栄養を>
目黒区立八雲小学校の長谷豊校長は、“図書給食”の果たす役割について次のように説明します。
「最近は家庭環境もさまざまで経済的に厳しい家庭では学校給食が子どもの栄養源になっているような面もあります。子どもたちに栄養価が高くバランスのよいおいしい食事を提供してあげたいと考えています。」

<食育にも一役>

161215_7.jpg“食育”の一環として取り入れる小学校もあります。東京・杉並区の久我山小学校では2年前から“図書給食”を始めました。食に興味をもってもらおうと始めたもので、栄養士の伊藤沙希さんが1か月分の献立をつくり、そのメニューを見て学校司書がコラボレーションする本のアドバイスを行います。
今月の“図書給食”の日は、おばあちゃんがひな祭りの日に作る肉まんについて孫娘に話す「パオズになったおひなさま」(作 佐和みずえ/絵 宮尾和孝)の中に出てくるギョーザにちなんで、ジャンボギョーザをメニューにしました。
伊藤さんは「子どものころの食事の習慣は将来、よりよい食生活をするための基礎になります。“図書給食”を通じて食に興味を持ち、食べる楽しみも知ってもらいたいです。」

投稿者:清有美子 | 投稿時間:10時52分

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

※コメントはありません

コメントの投稿

ページの一番上へ▲