2015年06月27日 (土)"育休退園"


埼玉県所沢市が、待機児童の解消に向けた対策などとして、2歳児までの子どもを保育園に通わせている親が、新たに育児休業を取得した場合、預けている上の子どもを退園させる制度をことし4月から始めました。こうした制度について、今月25日、所沢市の保育園に子どもを通わせている保護者11人が、保育を受ける権利を侵害するもので違法だとして、市に対して退園の差し止めを求める訴えをさいたま地方裁判所に起こしました。この“育休中の退園”を巡る動きについて解説します。taien1.jpg

 

【“育休退園”とは?】
この、いわゆる“育休退園”とは、どのような制度なのでしょうか。
こちらのイラストの母親は保育園に子どもを預けて働いています。taien2.jpgこの母親が新たに子どもを出産し、育児休業を取得した場合・・・。保育園に預けている上の子どもを退園させるという制度です。所沢市では、保育園に通っている上の子どもが0歳から2歳児の場合は、原則、保育園を退園させることにしています。taien3.jpg

 

【“育休退園”差し止めを求め 保護者が訴え】
今月25日、所沢市が始めた育児休業中の保育園の退園は違法だとして、退園の差し止めを求めて訴えを起こした原告の保護者が厚生労働省で記者会見を開きました。
訴えの中で、保護者は、育児休業は単なる休暇ではなく仕事復帰のための準備期間であり、市の制度は保育を受ける権利を侵害するもので違法だ、などとしています。
会見に臨んだ二人目の子どもが退園の対象になっているという母親は「第二子となる子どもを6か月から預けていて、子どもにとって保育園に通うことが生活の一部となっている状況で、ある日突然、大好きな先生やお友達と過ごせなくなるというのは、子どもにとって大きなストレスになる」と話しました。taien4.jpgまた、別の母親は、「そもそも保育園が少ないから待機児童がいるので、保育園の増設を所沢市に強く訴えたい」と説明しました。

【所沢市の対応は・・】
所沢市では、救済措置として、母親が仕事に復帰する際、きょうだいそろって保育園に入園できるよう体制を整えているとしていています。所沢市こども未来部の本田静香部長は「育児休業中というのは基本的には保護者が家庭にいて保育できるということで、保育園の保育を提供できる枠が限られているので、保育の必要性が高い方に提供していきたい」と説明しました。taien5.jpg

【“育休退園”の背景には何が?】
背景の一つには、全国の都市部で問題になっている「待機児童」問題があります。育児休業中は仕事もなく自宅で子どもを見られるのであれば、その子どもを自宅で見る代わりに、保育園の空いた枠を、待機している子どもに割り当てて欲しい、というものです。
また、所沢市が、退園する子どもの年齢を「0歳から2歳児」と限定していることからも分かるように、日本で根強くある“子どもが小さい頃は、母親が家庭で育てるべきだ”という考えもあるようです。

【“育休退園”全国でも】
実はこの問題、所沢市だけではありません。保育園に通う保護者たちでつくる「保育園を考える親の会」が、昨年度、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏や政令市など全国の100都市を調べたところ、神奈川県平塚市や静岡市など7つの自治体が、同様のいわゆる“育休退園”を行っていると回答しました。taien6.jpg
この7つの自治体の中には、今年度については、制度を見直して、親が育児休業中でも子どもが保育園に継続的に通えるようにしたり、また、制度は残しているものの、運用を柔軟にすることで、退園しなくても済むような措置をとっていたりするところもあり、「親の会」によると、全国的には減る傾向にあるということでした。

【ネットでは様々な意見が】
今回の“育休退園”問題、インターネット上でも様々な意見が見られました。
ツイッター上で、今回の制度について、批判的な意見、賛成意見の中で多かったものをまとめました。
批判的な意見の中でも最も多かったのが、子どもを安心して預けられるような環境がなければ、「2人目を生む気がなくなる」というものでした。せっかく保育園に慣れた子どもがかわいそう、生活リズムが崩れることが心配など、子どもへの影響を心配する声も多く見られました。また、以前から問題になっていたのに、今、どうして話題に?という声もありました。taien7.jpg一方、賛成意見の中には、男性を中心に「小さい子どもも母親と一緒にいたいのではないかと思う」という意見があったほか、専業主婦の方からの投稿でしょうか、「専業主婦としては『家にいるなら子どもの面倒を見られる』と思う」というものもありました。taien8.jpg批判的な意見、賛成する意見、それぞれ分かる部分も多いのではないのでしょうか。

【働く母親の多くが反対 背景に“保活”プレッシャー】
今回の制度変更については、働く母親が大きく反応し、批判する声を上げました。この背景には、保育園探し、いわゆる“保活”プレッシャーがあるようです。taien9.jpg待機児童が多い地域に住む人は、妊娠中から保育園を回って情報を集めたり、状況によっては引っ越しをしたり、保育園に入れるかどうかは死活問題だとして生まれたばかりの子どもを抱えながら不安な日々を過ごしています。
今回、問題になった所沢市では、一旦、保育園を退園しても、また、保育園に戻れるようにするということですが、自治体によっては、その対応もまちまちで、1人分でも大変な“保活”を、きょうだい2人分、一気にしなければならないことになったら・・・と考えたら、いてもたってもいられない気持ちになると思います。
「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「保育園の空いた枠に待機していた子どもが入っても、今まで保育園に通っていた子どもは“ところてん方式”で保育園を出て待機児童になってしまうので、根本的な待機児童対策になっていない。保育園の少ない枠を保護者たちが取り合うこと自体が問題で、自治体は、根本的な待機児童対策をするべきだ」と説明しました。taien10.jpg【保育環境の充実を】
ことし4月から、「子ども・子育て新制度」が全国で始まり、「育休中も、子どもを保育園に預けられる」ということが明確に位置づけられましたが、その解釈や運用はそれぞれの自治体に任されているのが実情で、住んでいる地域によって子育ての環境が異なることは問題でもあります。
taien11.jpgまた、普光院代表は「保育園の定員をギリギリに設定するのではなく、必要になった人がいつでも子どもを預けられるような、子育て拠点としての体制を作る必要がある」とも指摘していました。taien12.jpg核家族化が進み、昔と違い、子育て環境は悪化しています。今回の問題をめぐって、ネット上では「小さい子どもは母親が見た方がいい」「子どもを安心して預けられるようにしてほしい」など、様々な意見が見られましたが、子育てに関する考え方は人によって異なり、どれが正解、間違い、ということはありません。だからこそ、母親が望む時に子どもを近くで育てられたり、また、保育園のような施設に預けられたりするなど、自由に選べるような育児インフラを整備することが、今回のような問題で議論をしなくて済むためにも、求められていると感じました。

投稿者:清有美子 | 投稿時間:22時00分

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