2015年04月30日 (木)ロックせず ウォーターサーバーのやけど注意


手軽においしい水とお湯が飲めるとして家庭への普及が急速に進むウォーターサーバーについて、経済産業省が安全性を検証したところ、お湯による子どものやけど事故を防ぐはずの「チャイルドロック」が機能しない機種があることなどが分かり、業界団体に対して安全対策の強化を求める提言をまとめました。

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【全国で340万台、1歳前後の子どもが中心

ウォーターサーバーは手軽においしい水とお湯が利用できることから家庭での利用が急速に広がり、全国におよそ340万台が普及しているとみられています。
その一方で統一の安全基準がなく、経済産業省がNITE=製品評価技術基盤機構に委託して調べたところ、おととしまでの6年余りの間に1歳前後の子どもを中心にお湯でやけどを負う事故が全国で40件報告されていることが分かりました。

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【“チャイルドロック”機能しない機種が複数】

さらに、出荷台数の多い9機種を検証したところ、子どもの誤操作を防ぐ「チャイルドロック」の機能をうたっているにもかかわらず、小さな子どもでも簡単に操作できる製品が複数見つかりました。
検証には満3歳児までの60人が参加し、チャイルドロックを実際に解除できるか5形式をテストしたところ、▼満1歳児で2形式解除、▼満2歳児では3形式解除、▼満3歳児では4形式解除という結果になりました。
また、下げたり押したりといったウォーターサーバーの操作に必要な力と子どもが出せる力をそれぞれ計測して比較したところ、子どもでも簡単に操作できてしまう可能性がある製品があることがわかりました。


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【国は業界団体に安全対策強化求める】

このため経済産業省では、ことし4月、業界団体に対して提言をまとめました。
▼蛇口を子どもの手が届かない位置に設置することや簡単に操作できないようにするなど設計の改善を求めるとともに、▼販売の際には購入者に小さな子どもがけがをしないよう注意を促すことなどを求めています。


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提言でメーカーに求めた主な項目です。
 ① 蛇口の操作に必要な力が、満1歳児が出せる最大の力を上回ること
 ② チャイルドロックの解除に必要な力が、満1歳児が出せる最大の力を上回り、片手での操作手順数を2回以上にすること
 ③ 注水ボタンやチャイルドロックの解除ボタンを可能な限り高くし、ロックは解除後自動で再びかかるようにすること
 ④ 子どもが興味を示さないよう蛇口やロックは目立たない色にすること

購入者向けの啓発を求めた主な項目です。
 ① 常時70℃から90℃のお湯が蓄えられ、やけどのリスクがあること
 ② 説明書を十分に読んで、正しい操作手順で使用すること
 ③ 柵を設けるなどして、乳幼児をウォーターサーバーに近づけないよう注意すること
 ④ 子どもは観察力が鋭くまねをしたがるので、チャイルドロックを解除している様子を乳幼児に見せないよう注意すること
 ⑤ 正常に動作するか、蛇口に緩みなどがないか、定期的に蛇口の安全確認をすること
 ⑥ メーカーや最寄りの消費生活センターへヒヤリ・ハット情報を提供すること


【安全な製品や環境を作ることを優先】

提言に協力した子どもの事故に詳しい山中龍宏医師は、「親がずっと見守るという不確実なことに頼って事故を防止するのではなく、安全な製品や環境を作ることを優先することが大事だ」と話しています。
一方、業界団体では、提言を元に早急に安全基準を検討したいとしています。

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【問題はもっと深刻か】

この問題は、もっと深刻かもしれません。
経済産業省が把握しているのは全国で40件ですが、それ以外にも子どものやけど事故が多数起きていることが分かってきたのです。


【1病院だけで18件など把握外の事故が・・・】

やけどの専門医で作る日本熱傷学会にことし3月に報告された論文によると、沖縄県沖縄市にある中部徳洲会病院ではおととしまでの7年間に、この病院だけでウォーターサーバーのお湯で小さな子どもがやけどを負い治療を受けたケースが入院も含め18件あったということです。

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またNHKの取材では、愛知県で去年4月、当時11か月の女の子がウォーターサーバーのお湯で大やけどをしていたことが分かり、女の子は1年たった今も手にやけどの跡が残っています。

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このケースでは製品に「チャイルドロック」の機能がついていましたが、当時2歳の姉と2人で触っている間に機能が解除されてしまったということです。 
父親は、「叫び声が聞こえて横を向いたらお湯が出ていて
、娘の手にかかっていた。ちょうどつかまり立ちをする高さにサーバーの蛇口があって、娘は手を離すと倒れてしまう状態。自分たち親が見ていれば悔やむが、チャイルドロックは二重構造になっていてまさか解除してしまうとは思わなかった。メーカーにはこうした危険性は周知してほしいし、多少不便になってもより安全な製品にしてほしい」と話しています。

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こうした事故は重傷でなければ法律に基づく報告の義務はなく、この愛知県のケースでもメーカーは事故を把握していましたが、重傷ではなかったため行政へは報告されませんでした。
同じようなケースは茨城県でも確認されています。



【把握している事故は氷山の一角】

中医師は、「子どもがやけどをしても保護者は商品や利用環境のせいにせず、『自分の不注意が原因』として事故を報告していないケースも多く、公的機関が把握している事故は氷山の一角だ」と指摘しています。

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【取材後記 ~事故情報収集体制は万全か~】

報告が義務の重傷なケースでなくとも、手に跡が残るような痛ましい事故が起き続けています。
しかし
把握ができず、対応は後手に回っています。
こうしたパターンは、子どもの事故全般に言えます。

背景の1つに、山中医師が指摘する「親の不注意」という見方があります。
周りの人だけではなく、親もそう思ってしまいがちです。自分を責めてしまい誰にも言いません。製品が問題視されることはなく、事故の情報は共有されず注意喚起にもつながりません。
中にはメーカーに連絡をしている親もいます。ところがメーカー側は、自分が不注意だったという親の説明を聞くと「誤使用」と判断し事故として報告しないことがあります。これでは構造的な問題があっても改良にはつながりません。
子どもの事故は0.5秒という一瞬で起きます。たとえ目の前で見守っていたとしても防ぐことは困難です。
また、子どもは予想できない行動をします。メーカーが思いもよらない使われ方をすることがあります。
幅広く情報を集め、検証する必要があるのです。


事故の報告制度の周知や理解も足りていません。
現状では、報告ルートは、重傷だと義務として消費者庁へ、それ以外は任意でNITEへという縦割りで、わかりにくい体制になっています。

すべての事故の報告を義務化するとか、もっと言えば、消費者庁は消費者事故の情報を一元化し迅速な対応をするためにできたことを考えれば、NITEとの縦割りをやめて一本化してしまうなど、制度の再検討も望まれます。

消費者庁は医療機関から直接事故情報を吸い上げようと、現在全国28機関から子どもの事故の情報を収集しています。当面はこちらの大幅な拡大についても望まれるところです。

最後に、もう一度「親の不注意」について。
注意だけでは事故は防げません。
その事故は、製品や環境の改良で防げた可能性があります。
メーカーや医療機関からいますぐには十分な事故情報が集まらないなか、鍵を握るのは
消費者の行動です。

事故の情報を共有してください。
その情報が、注意喚起や製品の改良につながります。

情報提供は、消費者庁に連なる行政の相談窓口「消費生活センター(消費者センター)」へ。

最寄りの消費生活センターにつながる電話番号は、0570-064-370です(「守ろうよ、みんなを」の語呂合わせ)。

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投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

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