2014年11月12日 (水)保育園は"迷惑施設"?


待機児童問題の解消のために、保育園の建設が今、急ピッチで進んでいます。しかし、その建設に住民が反対する事態が各地で起きています。保育園を巡って起きているトラブルの実態と解決のヒントについて生活情報チームの清有美子記者が解説します。
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【保育園増加 苦情も増】
女性が働きやすい環境を整えるため、国は、全国で2万人余りにのぼる待機児童問題を解消する必要があるとして保育園の建設を急いでいます。この5年で、1000以上の認可保育園が一気に造られました。
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その一方で、全国各地で保育園への苦情が相次いでいます。先月、東京都が発表した調査では都内のおよそ7割の市区町村で保育園などに子どもの声に対する苦情が寄せられていることがわかりました。

【待機児童数トップの世田谷区では】
保育園を巡って今、何が起きているのか、待機児童数が全国1位の世田谷区で見ていきます。
ことし4月1日時点で待機児童の数が1109人にのぼった世田谷区では、平成29年度末までに5700人分の保育園を整備する計画です。これを加速させるため、去年、専門の部署を設けました。不動産業界で働いていた男性を臨時に雇い、そのノウハウをもとに保育園を建てるための場所を探して回っています。しかし、住民の反対が大きな壁となり、思うように進んでいないのが現状です。

hoiku10.jpg区では、5年間で、認可保育園の数を29か所増やし、来年度末までに135か所にする計画ですが、そのほとんどが住宅街の中にあります。
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住民たちから、保育園ができるとこれまでの静かな環境が乱されるのではないかと危惧する声が上がっているのです。
建設中の保育園の近くに住む女性は
「働くお母さんのために保育園を増やすことは必要だと思います。しかし、静かな住宅街が壊されるんです。環境がいいと思って家を建てたのに・・・」と話していました。
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この女性のような声は新しい部署に毎日のように寄せられています。
保坂展人世田谷区長は「保育園が必要だというからにはどこかに作らないといけない。『きちんとやっていきます、だから認めて下さい』とじっくり説明していきます」と話し、地道に住民の理解を求めていくしかないとしています。
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【保育園トラブル 他の地域でも】
保育園と近隣住民の間のトラブルは他の地域でも相次いでいます。
東京・練馬区では、住民が騒音などに対する慰謝料を求めて裁判を続けているほか、
神戸市でも防音対策などを求めて住民が提訴しました。
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こうした中、保育園をめぐるトラブルを専門に扱うリスク管理会社も都内に現れました。
取材した日には首都圏にある保育園の園長が訪れ、近隣の住民から子どもの声がうるさいと怒鳴り込まれたことを打ち明け、次に同じようなことがあったらどうすべきか相談していました。この会社では、保育園に代わって住民との間に仲裁に入ったり、ケースによっては弁護士を紹介したりしているということです。
会社の脇 貴志代表取締役は「保育園からの相談は増えています。本来であれば私どものような会社はない方がいいのですが、社会のニーズは逆に高まっているように思います」と話していました。
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【少子化が背景に】
こうした問題について関西大学の山縣文治教授は
「子どもが減ってきたので多くの人にとって保育園は自分たちと無関係な施設になってきた。関係のないところで自分たちの生活に不愉快な出来事が起こると見えてしまう人が増えている」と述べ、少子高齢化によって地域で子どもに接する機会が減っていることが背景にあると指摘しました。 
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【保育所建設は賛成 しかし、近所となると・・・】
建設に反対している人に話を聞いてみると、多くが「保育園は足りないのだから早く作った方がいい」と言います。その一方で、自分の家の近くにできるとなると事情は異なるようでした。

トラブルに発展したケースの多くは住民側が次のような理由を挙げています。
▼急ピッチで進められるため、行政や事業者からの事前の説明や話し合いの時間が十分でない。
▼子供の声がうるさくて、生活環境が乱されることが心配。
▼保護者の送り迎え時の立ち話や自転車・車の置き方などマナー違反の発生が心配。
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【問題を乗り越えるには】
こうした問題を乗り越えようと新たな工夫を始めた保育園もあります。
東京・目黒区に3年前にオープンした夢花保育園は屋上にある園庭の活用の仕方を工夫しています。
アスレチック、滑り台、そして小さな畑。こうした遊び場を屋上の3か所に分散させました。
大勢の子どもが1か所に固まって遊ばないようにすることで、声が大きくなるのを防いでいます。
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保育園を運営する社会福祉法人の黒石誠理事長はこうした内容を設計段階から地域の住民に説明し、理解を得る努力を続けてきたということで、「保育園側も保護者の方も小さな迷惑をかけるという積み重ねを一つずつつぶしていかなければ近隣の人の理解を得られないようになってきていると思います」と話しました。
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また、お互いに顔が見える関係になることでトラブルを未然に防ごうという動きもあります。
かつて近隣の住民から騒音などの苦情を受けた大阪・堺市の保育園「平和の園」では地域の住民を積極的に保育園に招いています。取材した日は近くの高齢者施設の利用者を運動会に招待していました。顔見知りになることで、騒音などのトラブルは減っているということで
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保育園の篠崎直人園長は

「子どもたちのかわいい姿を見てもらったり成長の過程をしっかり見てもらったりすれば苦情につながることにも理解をいただけるのではないかと思います」と話していました。
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【子どもの環境 考えられる社会に】
取材をしていて、保育園建設に反対している人の意見はそれぞれ理解できる一方で、子どもが育つ環境を巡ってこのような議論が各地で起きている現実に何とも言えないモヤモヤした気分になりました。
保育園の建設は喫緊の課題ですが、住民とのトラブルが想定できるからこそ、自治体も事業者任せにせず、時間をかけて住民に理解を求めることが欠かせません。
しかし、時間をかけてもトラブルに発展するケースは多くあります。
そうした場合について専門家は「少子化が進む中で、地域で子供をどう考えるか。子どもが育つ環境を保証するために、妥協点を探ることが今の社会で求められている」と話していました。
hoiku27.jpg日本では少子化対策が長年の課題になっています。
しかし、保育園などのインフラが整えられても、子どもや子育て世代を疎ましく思う状況が社会に広がれば、逆行する動きになりかねません。「少子化」は、事態が進むほど子どもと接する機会が減るため、他の社会問題と比べて「自分事」として捉えにくくなる面があるのかもしれません。
社会の少数派となりつつある子どもにもっと目を向け、育む環境を考えることが今、求められているように感じました。

投稿者:清有美子 | 投稿時間:08時00分

コメント

ただのクレーマーですね 

▼子供の声がうるさくて、生活環境が乱されることが心配。←ただの感情論
▼保護者の送り迎え時の立ち話や自転車・車の置き方などマナー違反の発生が心配。←送り迎えや立ち話をする権利は誰にでもある
住民の言い分は「自分以外は消えろ」
この人達は他人の権利を全否定していませんか?住民の要求を呑んでたら社会は崩壊する

投稿日時:2014年11月13日 20時43分 | 匿名

いい歳した大人が保育園をここまで敵視する背景は一体何なのでしょうか?
狭量でヒステリック、病質的なものを強く感じます
大晦日に鳴るお寺の除夜の鐘も、近隣住民からのクレームで廃止になったという話も聞いたことがあります
クレーマーの言いなりになる法人・自治体の姿勢にも問題があるのではないでしょうか?

投稿日時:2014年11月13日 20時54分 | 匿名

住民が定義する「マナー違反」も漠然としていますね。
「立ち話や自転車・車の置き方などマナー違反の発生が心配」という理由を上げていますが、東京都内に限って言えば送迎で車を使う人って少ないのでは?
「立ち話」自体はマナー違反でも何でもなく、これを迷惑と捉える方がおかしい。

保育園は迷惑施設であるという前提はどこから来たのか。
保育園は朝から晩までフルタイムで子供を外で遊ばせてるわけではないでしょう。建物に防音対策を施せば四六時中声が響いてくるなんてことはないはずです。
個別の改善を求めるのではく、保育園の建造そのものに反対している住民側は横暴だと思います。


投稿日時:2014年11月15日 02時02分 | 匿名

とにかく、住んでみればよく分かる。私の場合は小学校の隣に住んでいますが、休憩時間の100㏈はあろうかと思えるほどの騒音でも、ほとんど気にはなりませんが、放課後から夜間に行われる、部活などのスポーツの騒音に悩まされています。会社勤めの人にとっては、土日も朝から台無しです。

投稿日時:2014年11月21日 16時47分 | 匿名

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