2013年11月06日 (水)顔をケガする子どもたち その背景は


昔から子どもにケガはつきものと言われますが、今、顔にケガをする幼い子どもの割合が増えています。日本スポーツ振興センターのまとめでは、昨年度、全国の保育園や幼稚園で幼児がケガをしたケースのおよそ半数が顔のケガでした。20年前と比べて、およそ10ポイントも増えています。なかには転んでドアにぶつかって額に大ケガをしたり、転んで顔を打って鼻の骨を折ったりするなど、大きな事故も起きています。なぜ、幼い子どもたちに顔のケガが増えているのか、背景として見えてきたのは、赤ちゃんの頃に誰もが行う、ある動作です。
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東京・文京区の保育所です。0歳児から2歳児まで、およそ40人が通っています。1才の女の子です。公園の台から飛び降りようとしてバランスを崩し、手をつくことができずに頭から落ちてしまいました。自宅でテーブルをよけられず、額をぶつけた男の子もいました。
haihai2.jpgこの保育所では、子どものケガを減らそうと、床には分厚いマット、ベッドや机の角はクッションで覆っています。それでも、自宅も含めて毎月3人程度は頭や顔をけがしています。
haihai4.jpg通常、転んだときには顔より先にとっさに手をつきます。しかし、手が出なかったり体を支えきれなかったりして顔をケガするケースが増えていると言います。保育所の島田香園長は「転んだ時に手がでないのと、高いところに上ったときにひざを曲げるとか重心を下げて飛び降りるのではなく頭から倒れてしまうというのが昔に比べると増えている」と話しています。
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 なぜ、顔や頭を守れないのか。幼い子どもの腕の筋力が不足し、体を支えられないことが原因の一つと考えられています。東京都が30年前から続けている5歳児の運動能力調査です。両腕で体を支えて何秒間足を浮かせていられるかを測ります。取材した幼稚園では半数の園児が30秒も体を支えることができず、中には、5秒も体を支えていられない子どももいました。
haihai7.jpg昭和55年度には平均で80秒体を支えることができました。ところが3年前には男女とも48秒と、40%も短くなっているのです。子どもの発達に詳しいスポーツ医学が専門の早稲田大学の鳥居俊准教授は、体を支える力が落ちた理由について、子どもたちの日頃の運動不足に加え、ある意外な点に注目しています。 
haihai8.jpgそれは「はいはい」の経験です。「子どもを早く立たせたい」という親の思いがあったり、部屋が狭くて家具が近くにあるためにすぐにつかまり立ちをしてしまったりして、昔と比べると「はいはい」をする期間が短くなっているというのが、保育や小児科などの現場が共通して感じていることだということです。
haihai9.jpg鳥居准教授は「以前は『はいはい』することによって腕の力が鍛えられたり、『はいはい』の後で立ち上がるという手順を踏むことによって自分のバランスが崩れそうになったときに立て直す練習ができていた。それが、そういう機会がなく大きくなって来てしまったことが一つの原因ではないか」と話しています。
haihai10.jpgどうすれば身を守るのに必要な力をつけることができるのか。保育の現場の中には、さっそく「はいはい」を取り入れる所も現れています。10月にさいたま市にオープンした保育施設です。週に3回、運動の時間を設けて専属のインストラクターが子どもたちを指導しています。ここで2歳から3歳の子どもが最初に学ぶのが「はいはい」。大きさの違う輪を「はいはい」しながらくぐります。筋力をつけるとともに、手で体を支える動きを覚えさせるのが狙いです。
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 インストラクターの諏訪美矢子さんは、「自分の体がどれぐらいの大きさかという感覚機能を備えて自分でぶつからないように頭を低くしてくぐったり、手足をうまく動かすことによって自分の体が危ないといったときに手が出るという動きを養っています」と話しています。
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 さらに、自ら転んで手をつく練習も行っています。高いマットの山から飛び降りた先にはもう一つのマットの山。自然に手が出て体を支える動きが身につきます。諏訪さんは「わざと危険なところを作ってあげることで、自分の調整能力を養うということができる」といいます。
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 ただ、「はいはい」をあまり経験せずに歩き始めた子どもたちもあまり悲観的になる必要はありません。鳥居准教授は、5歳になるぐらいまでの間にさまざまな運動をさせれば、身を守るための体の動きは十分に補えると言います。
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鳥居准教授は、「小学校に入る前のある意味で運動の働きかけのゴールデンエイジと言われているんですが、そのころにいろんな種類の運動刺激が加わってくるのが非常に大事です。 いろんな動きをしてもらえれば それにだんだん体が対応できるようになってくる。ですから多様な遊び方、多様な場所で遊ぶということが大事になってくると思います」と話しています。

 

親が仕事などで忙しくなり、子どもと一緒に体を動かす機会が減っていると言われますが、けがを防ぐ意味でも一緒にいられるときにはなるべく体を動かして遊ぶ必要があるのではないかと取材を通して感じました。

投稿者:成田大輔 | 投稿時間:13時00分

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