2013年10月28日 (月)父子家庭急増の陰で~求められる支援


先月、東京・江東区で父親が5歳の長男を暴行し死亡させた事件が起きました。逮捕された父親は、子どもを1人で育てるシングルファーザーでした。
今、父子家庭は急増し、全国で22万世帯を超えています。
事件をきっかけに父子家庭への取材を進めていくと、多くのシングルファーザーが悩みを誰にも打ち明けられず、孤立しがちになっていることが分かってきました。
実態が見えづらい父子家庭。社会に何が求められるのかを取材しました。

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先月6日に東京・江東区で、4人の子どもを1人で育てていた父親が、5歳の長男に暴行を加えて死亡させました。父親は4年前に勤めていた会社が倒産して仕事を失い、その後、離婚。長男を幼稚園に通わせていましたが、人づきあいは少なく、子育てについて周りに相談することもなかったといいます。

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父子家庭で起きた虐待死事件は、大きな波紋を呼びました。事件について書かれたブログやツイッターなどは1週間あまりで1000件を超えました。
「3時間なぐるとか尋常じゃない」という声がある一方で、「明日は我が身」「他人事とは思えない」と書き込まれたものもありました。

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なかなか外に助けを求めることができないと言われるシングルファーザー。
去年、広島市で発足した父子家庭を支援するNPO「父子家庭サポートネット・ひろしま」を取材しました。
代表の高松明さんは、自分自身、妻を病気で亡くし1人で息子と娘を育てた経験から支援の必要を感じ、孤立しがちな父子家庭のネットワークを作りたいとNPOを立ち上げました。
しかし、NPOが先月末に開いた料理教室に参加した父子家庭はわずか1組。NPOでは月に一度、父子家庭の相談会も開いていますが、これまでに訪れた父親は1人もいません。

fusikatei20131028_003.jpg高松さんは「助けを必要としている人がいることは確かなのですが、父子家庭のお父さんも周りが見えなくて、ただただ自分の家、家庭にこもってしまう」と話していました。

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なぜシングルファーザーは支援を求めようとしないのか。
広島市内に住むシングルファーザー、中本孝さんが取材に応じてくれました。中本さんは3歳の息子を1人で育てています。3年前に離婚したとき、息子はまだ生後2か月。突然、1人で家事と育児を担うことになった中本さんは、戸惑いの連続でした。

fusikatei20131028_005.jpg中本さんが直面した最も大きな問題は、仕事をどうするかでした。JR西日本で働く中本さんは、離婚後は両親の助けを借りるために、実家のある広島市に転勤せざるを得ず、それに伴い職種も変えました。子育てのため、時間外勤務を抑えているという中本さんは、同僚の仕事ぶりを見て、焦りを感じることもあるといいます。

fusikatei20131028_006.jpg「仕事量はどんどん同僚と差がついていくので、子育てをしながらやっていくことに納得はしていたんですけれども、やはり仕事をしていく中で、同僚が羨ましかったり、自分はこれでいいんだろうかと、葛藤したことはありました」と話していました。

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中本さんは会社の育児休暇制度は利用していません。どんなに大変でも、助けを求めてはいけないのではないかと考えていたといいます。
「助けを求めることが男としていいことなのか、プライドもあった。助けを求めるというのが、弱さを見せることにつながってしまうと考えてしまうことがありました」と中本さんは話していました。

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7年前から父親の子育て支援を行ってきた東京のNPO「ファザーリング・ジャパン」の吉田大樹代表に、増加する父子家庭を支援につなげていくためには何が必要なのかを聞きました。
吉田さんは孤立する父親を支えるためには、行政とNPOなどの民間団体が連携を深め、ニーズを掘り起こしていく必要があるといいます。
「1人親になることは特別なことではない、そういう時代を迎えていると思う。行政と民間NPOがつながっていくというのがこれからはもっと必要。NPOがどんどんすそ野を広げていくことで、孤立した父親の声を少しでも拾い上げていくことができるのではないか」と話していました。

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広島市のシングルファーザーの中本さん。3歳の息子とともに、1人で子どもを育てる親の集いに参加しました。知人に紹介され、この会に足を運ぶまで半年かかりました。
「母親のことを息子が聞いてくる時がくることになるか?」「どうしても母親のことは、話しの中心に出てくる。そう思っていたほうが、驚かなくてすむ」など、同じ境遇の人どうしだからこそ話せる会話が交わされていました。

fusikatei20131028_010.jpg人とのつながりの中で自分なりの子育てを模索し始めた中本さんは「離婚して人に話しかけることがうっとうしい状況になったことがありました。でも同じような環境で頑張っている人が広島の中でもいるんだということは、僕も負けちゃいけないなという思いにつながります」と話していました。

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投稿者:村石多佳子 | 投稿時間:06時00分

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