2013年07月05日 (金)マタニティーハラスメントの実態


妊娠や出産は人生の中でも最もうれしいことの一つのはずですが、働いている女性にとって素直に喜べないこともあります。これまで通りに働けなくなり、周りと摩擦が生じるケースがあるからです。こうしたなか、大きな関心を集めているのが「マタニティーハラスメント」。
妊娠・出産をきっかけに職場で上司や同僚から嫌がらせを受けたり、ひどい場合には解雇されたりするといった不当な扱いを指すことばです。
マタニティーハラスメントの深刻な実態について内田明香記者がお伝えします。
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【退職に追い込まれることも】
20130705maternity02.jpg人材派遣会社で営業職を務めていた30代の女性は、ことし1月に出産し、4月からの職場復帰を目指していました。
子どもを保育園に入れることはできましたが、まだ0歳のため預かってもらえるのは午後5時までです。
そこで短時間勤務をしたいと会社に伝えたところ、社長から「妊娠・出産して時短勤務で働ける前例を作って 周りに時短勤務ができると思われたら困る」と告げられ、自分から退職するよう求められたといいます。
20130705maternity03.jpg女性は夫婦共働きで返済する予定で住宅ローンを組んでいました。
ようやく入れた保育園も、仕事をやめれば退園しなければなりません。
違法行為だと労働局に訴えることも考えましたが、復職できたとしても職場に居づらくなると諦め、退職を受け入れました。
女性は「悔しいのと悲しいのと、信じられないというかすぐには受け入れられないというか、こういうことが簡単に起きちゃうんだなと感じました」と話していました。

【職場での孤立】
20130705maternity04.jpg一方、マタニティーハラスメントは職場の同僚から受けることもあります。
業務用機器の販売会社に10年勤めている30代後半の女性は、産休に入るまではチームリーダーとして頼りにされる存在でした。
育児休業が明けたら短時間勤務で復職すると上司に伝えていましたが、実際には出産前のように連日、残業しなければならない仕事を担当するよう求められ、これを断ったことで、職場で孤立してしまったといいます。
以前の女性の仕事を引き継いだ同僚が「こんなに大変なのに仕事を押しつけている。仕事をえり好みしている」と周囲に話したことから職場の空気が変わり始めました。
同僚を気遣うつもりで帰り際に「悪いけど先に上がるね」と声をかけても「仕事を押し付けている」と受け取られるなど、周りと言葉を交わせない状態が半年以上続いているといいます。
女性は、「子どもに対して 『生まれてくれてありがとう』という気持ちもありますが、『子どもを生まなければ良かった』とか『この子さえいなければ』と思ったときもあります」と涙ながらに私に話しました。
20130705maternity05.jpg【浮かび上がるマタニティーハラスメントの広がり】
ことし5月、連合が初めて行った調査では働きながら妊娠した女性の4人に1人がマタニティーハラスメントを経験していました。
20130705maternity06.jpgさらに、電話相談でもわずか2日間で677件に上る相談が寄せられました。
中には、「流産して仕事を休んだら課長を降格すると言われた」、「出産後も働き続けたいと言ったらわがままだと中傷された」など20代、30代を中心に悲鳴のような声が相次ぎました。
20130705maternity07.jpg電話相談を行った連合の村上陽子さんは、「妊娠・出産したら辞めざるを得ない、仕方がないと思っていた人が多かったのだと思います。マタニティーハラスメントという名前が知られるようになったことで自分が受けていたのはハラスメントだったんだと認識されたんだと思います」と話していました。
20130705maternity08.jpg【女性の権利が守られない実態】
妊娠や出産を理由に解雇や雇い止め、降格など不利益な扱いをすることは法律で明確に禁止されています。
さらに、少子化で労働力人口が減るなか、職場での女性の活用は経済成長の観点からも重要だとして国の政策にも位置づけられています。
しかし、リーマンショック以降、企業の人員削減がすすみ職場に余裕がなくなるなか、働きながら子どもを産み育てる女性への風当たりが強くなっているのが現状なのだと思います。
マタニティーハラスメントは、制度上は保証されているはずの働く女性の妊娠・出産を巡る権利が守られていない実態を浮き彫りにしています。

【マタニティーハラスメントをなくすには】
では、どうすればいいのでしょうか。
職場での女性活用に詳しいコンサルタントの渥美由喜さんは、マタニティーハラスメントの背景にある職場の風土を変えることが大切だと指摘しています。
渥美さんは「国は、人口が減少しても経済成長を続けられる社会を作る必要があるとして、子育て中の女性も活躍できるように制度を整えてきましたが、制度ができても企業の風土が追いついていません。制度と風土のギャップがマタニティーハラスメントという形で顕在化しているのです」と分析しています。
20130705maternity09.jpgそのうえで「高齢化が進むなか、育児だけでなく介護や家族の看護などで、職場から誰かがいなくなるという事は今後、当たり前のことになり、業務をカバーしあえる態勢を作ることが、リスクに強い職場作りにつながる」としています。

【最初の一歩 踏み出そう】
今回の取材を通して、何よりもまず、マタニティーハラスメントはいけないことである、そして誰もが加害者にも被害者にもなりうると認識することが必要だと感じました。
「子どもは女性が家庭でみるべきだ」という価値観の人が罪悪感をもたずに退職を勧めることもあるでしょう。
一方で、育児をしながら働く側も理不尽だと思いながらも諦めてきた面もあると思います。
働きながら子どもを産み育てる女性でも仕事の成果を出せる職場にするために何が求められているのか、女性の上司や同僚をはじめ全体で考えることが最初の一歩だと思います。

投稿者:内田明香 | 投稿時間:10時00分

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