2013年04月04日 (木)"見えない"性虐待 被害の実態は
子どもが親や兄弟などから受ける性虐待。被害の実態を明らかにしようと、初めての全国規模の調査が進められています。その背景には、身体的な虐待に比べて外見では発覚しづらいため被害の実態が分からず対策が進んでこなかったことがあります。対策の必要性を訴えたいと性虐待を受けてきたつらい体験を語り始めた女性を取材しました。被害の実態と、必要な対策について、きょうから2日間にわたってこちらのブログでお伝えします。
去年1月、性暴力の被害を減らすための集会で自らの体験を語る20代の女性。「加害者は実の兄、3歳年上の兄です。親がどんなふうに判断するんだろうということが不安になり、そのことは言えなくなりました」 と語りました。女性が多くの人の前で語るのは、実はこの日が初めてです。
女性はいま都内で一人暮らしをしています。
最初に兄から被害を受けたのは7歳の時。女性の布団に入り体を触ってきたのです。女性ははじめ兄が触っている部分が下半身だったので、あれ?と思ったものの、何をされているのか意味が分かりませんでした。
それでもなぜか人に話してはいけない雰囲気だけはあったといいます。体を触られることが続き女性は母親に訴えようと考えるようになりました。しかし自分がされてることをうまく説明することができませんでした。どう表現したら良いのか分からなかったからです。そしてようやく口にすることができた言葉。それは「お兄ちゃんがくすぐって起こそうとする」という言葉でした。母親は兄に「くすぐっちゃだめよ」と注意しただけでした。相手(加害者)は一緒に暮らしている家族です。それ以上訴える気持ちにはなれず、兄の行為は女性が14歳になるまで続きました。女性は兄を拒絶し積極的に逃げ出そうとしなかった自分も、共犯者のような感覚を持っていたといいます。また相手が兄だったことから「性虐待」の定義からは外れているという感覚もあったといいます。
長く続いた兄からの虐待で、女性はすべての男性を信頼することができなくなりました。女性は「男性とつきあうイコール性的な対象にされることだという認識がすごくあった。感覚的に女の体はスーパーで売っている鶏肉の塊。そんなイメージを私は持っていて、そこに値段がつけられて売られているようなそんなものなんじゃないかなって・・・」と話します。
自分が被害者だとはっきり自覚したのは、大学に入り性暴力について学ぶ講義を受けてからでした。さらに大学の勉強会では性虐待の被害を受けている人がほかにもたくさんいることを知り、自分の体験を伝えなければと思うようになりました。女性は言います。「目に見えないところで性的な暴力が起こっていることが多いのですが、それを隠している人は多いし、言えない人もとても多いのだと思います。どこかでそうした人たちが被害に気づけるきっかけのようなものを作っていけたらと思いますし、性的な暴力がすごく人を混乱させ、困惑させる、困らせるという認識を多くの人に持ってもらいです」
女性は今は大学院で学び、男性の友人もできるようになったそうですが、兄とはほとんど連絡をとっていないということです。幼いころから被害を受け続けた上、拒絶できなかった自分を共犯者のように感じ生きてきた女性。実はこの女性のように被害にあった自分を責め苦しむ被害者は少なくないのです。被害が深刻化する前に子どもを守り、二次被害を防ぐにはどうすれば良いのか。明日は求められる対策についてお伝えしたいと思います。
投稿者:伊達裕子 | 投稿時間:06時00分
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