2012年09月12日 (水)"産後クライシス"ひょっとしてあなたも?!


初めての出産。それは夫婦にとってもっとも幸せな瞬間のはず。しかし、それが不仲の始まりになることもあるのです。民間の研究機関の調査で『出産後妻の夫への愛情が下がり続ける』ことが去年、明らかになりました。 しかも専門家によれば産後にいったん下がってしまった愛情はその後、ほぼ回復することがないといいます。産後は夫婦の愛情にとって危機、この現象を今回「産後クライシス」と名づけ、「あさイチ」で取り上げました。
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【夫婦愛 激減の実態】
産後の危機で、実際にどれくらいのカップルで愛情が減るのでしょうか?
民間の調査機関「ベネッセ次世代育成研究所」がおよそ300組を対象に行った調査をご紹介します。
妊娠期、0歳児期、1歳児期、2歳児期に『夫(妻)を心から愛していると実感する』という夫婦の割合を追跡調査したところ、下のような結果になりました。

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妊娠中には男女とも同じ割合で『愛している』と感じていたのが、なんと子どもが2歳になると男性は半数、女性は3人に1人しか愛情を感じなくなってしまうのです。


【女性の愛情減が日本の特徴】
この愛情が下がる現象、調査を行ったお茶の水女子大学の菅原ますみ教授によりますとアメリカでは男女同じように下がるということで、「女性の下がり方の著しさ」は日本独特の減少です。
菅原教授は『日本の男性の家事育児に費やす時間が世界的にみて最低の水準にあることが関係している』と指摘しています。
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ベネッセ次世代育成研究所のデータでもそのことがはっきりと分ります。子どもが生まれた後も『愛情が変わらない』と答えていた妻たちに注目すると『夫はよくわたしの家事や子育てをねぎらってくれる』と答えた妻の47.1パーセントが、また『家事・育児を助け合っている』と答えた妻の41.2パーセントが子どもが1歳の時点で夫への愛情を感じ続けていました。ところがねぎらいが少ない場合はわずか10.2パーセント、育児家事参加が低い場合は20.5パーセントにとどまったのです。

これは夫にねぎらいの気持ちがあると育児参加につながったり、また逆に育児参加すると妻の大変さを実感してねぎらいの言葉が妻にかけられるようになったりするためです。妻の側も夫への愛情を感じる良いサイクルがあることを示しています。ところが、日本では全般的に男性の家事育児時間が少ないため、ねぎらいの気持ちを示すことも少なく、妻の愛情が下がるという悪循環に陥ってしまう割合が高いのです。これが国際比較をした場合、女性からの愛情が著しく下がるという特徴につながっているのです。

実際にNHKネットクラブで行ったアンケートの回答を見てみると、出産を経験した女性のおよそ半数が産後クライシスを体験していました。『わたしは育児中心の生活に変わったのに、夫は以前と同じように飲み歩いたり、世話を焼かせたりする』『夫は仕事仕事で育児は母親がするものだと思っている』という女性からの声が多く寄せられました。

現代の女性は子育ては『夫と一緒にするものだ』という意識が強まっています。それに対して夫が『子育ては女性がするものだ』と思って出産前と同じ生活を続けたり、育児への思いやりを示さないでいたりすると女性のイライラが強まり、愛情が冷めるという図式が浮き彫りになりました。

【男性は気づいていない】
今回の取材から分ったのは夫の何気ない一言が、妻の愛情を冷めさせているということです。妻がイラっとくる夫のNGワードから見ていきましょう。

★「手伝おうか」
育児や家事に対する夫の主体性のなさ、無責任さを象徴する言葉です。「あなたの子でしょ、手伝うじゃないでしょ」と言いたくなります。
★「うんちしてるよー」「泣いてるよー」
これらもやはり主体性のなさを示しています。
夫からすれば、親切心で知らせているのでしょうが、「気づいているならあなたがオムツ替えすれば」、「あなたがあやせば」、と言いたくなりますよね。
★「俺も自分の時間が欲しいんだよ」
仕事仕事で忙しく、休みぐらい自分の時間が欲しいという夫の主張。その気持ち、分らなくもありませんが、妻からすれば育児は一日24時間土日も休みなし。自分本位で妻への思いやりは感じられません。
★「仕事だからしょうがないだろ」
男性は「仕事を一生懸命すること」が最大の愛情表現だと思いがちなのですが、多くの女性にとっては「仕事を一生懸命すること」は家庭より仕事が大事なことを意味してしまい、最悪の場合、妻を愛していないと受け止められかねません。

しかし、こうした発言の裏には男性側の事情もあります。子どもが生まれた途端、女性の評価軸が180度変わってしまうのになかなか気付けないのです。
産後の女性は出産で体力が落ちている上に睡眠不足、さらに育児不安に苛まれるというように体力的にも精神的にも非常に辛い時期です。女性は『わたしを愛してくれているのなら、この辛さを察して助けてくれるだろう』と思います。それなのに男性が出産前と同じように仕事を優先して育児参加をしないと、女性は「辛さを理解してくれない」「助けてくれない」と受け止め、「愛してないのね」と感じてしまうというギャップが取材を通して見えてきました。

夫は気づかないうちに妻を傷つけ愛情を失っている、悲しい悪循環です。
 

【女性に必要な心がけは】
では、夫にどうやって家事や育児への意識をもってもらえばいいのでしょうか?
ネットクラブへのアンケートを通し、『産後クライシスが起きなかった』という妻たちがどんなことをしていたのかご紹介します。

★自分が何をして欲しいかを言葉で伝えている
夫が察してくれるのを待たずに自分の状態やして欲しい事を具体的に伝える事です。『問題を1人抱え込みがちな女性』が産後に精神的に追い詰められている時に、夫から『察してもらうじゃなくて、言葉にしてもらわないとわからない』と指摘された事をきっかけに、夫と話し合うようになり関係が回復したという例がありました。
★家事・育児をしたら夫をほめる
アンケートからは家事や育児をした場合に夫をほめることが効き目が高いようです。姑に細かく指図されるのが嫌だった体験から夫をひたすらほめることで伸ばしているという女性もいました。また『ママ友を通して夫をほめてもらう』という高度なテクニックを使い、夫の家事や育児のやる気を引き出した女性もいました。
★『6割でOK』と考える
夫の家事や育児について、最初から自分と同じレベルを求めず、あきらめも必要です。上から目線になって、指図するよりもまず感謝することを心がけるといいようです。 

 

【里帰り出産に気をつけて】
女性にとっては産後の体をしっかり休めることが出来て、しかも気心の知れた実の母親の元で育児に慣れることも出来る、里帰り出産。都市部を中心に広く行われていますが、この里帰り出産が夫婦関係に悪影響を与えてしまうことがあることも浮き彫りになってきました。
里帰りには『夫が子育てを0から始められず、父親としての自覚が生まれにくい』側面があるというのです。
横浜創英大学・久保恭子教授が首都圏に住む196人の父親を対象に行った調査からは『里帰りをすると夫が父親としての実感を抱きにくくなる』との傾向が浮かび上がりました。妻が里帰りした場合、夫の父性を阻害する恐れがある事を指摘しています。
今回の取材でも産前産後で3か月里帰りをした女性が里帰り中の安心感と里帰り後の夫の非協力とのギャップに苦しみ、最終的に夫より実家が頼りになると感じて離婚してしまったケースをとりあげました。『産後クライシスがあることをあらかじめ知っておいて、夫と対策をとれていれば違った結果になったかもしれない』と女性は話していました。

では、里帰り出産をする時はどのような点に気をつければいいのでしょうか?

まず里帰り中は
★まめなコミュニケーション 
 夫に父親としても自覚をもってもらうためにも、日々の赤ちゃんの成長や母親としての育児についての体験をこまめに伝える。嬉しいこと、楽しいことだけでなく戸惑いや不安も含めて。
★夫が来たら育児を体験
夫が実家に来たら、育児を練習するいい機会だと思ってどんどん育児に関わってもらいましょう。

また里帰りから戻る時には
★夫に前もって掃除してもらう 
ネットアンケートで多かったのが「里帰りから戻ってきたら家中散らかっていていやになった」という声。「子どもだけでなく夫の世話もしなければいけないのか」、と女性が一気に実家に帰りたくなってしまうのでしっかり掃除や洗濯をしておいてもらいましょう。
★夫の参加はできる事から  
里帰り期間中、連日育児を練習してきた妻と違って夫は初心者です。出来ることから少しずつ何でもいいので慣れてもらいましょう。


【見直されるマイタウン出産】
夫婦の絆を深めるとしてその良さが見直されているのが、夫婦が暮らしている地域で産む「マイタウン出産」です。しかし、「マイタウン出産」では女性が体を休めなければならない産後3週間の家事をどうするか、新米のママとパパ二人で育児不安をどう克服するかが課題になります。

20120912sango_04.jpg東京・国分寺市の粟嶋寿さん、友子さん夫妻が利用したのは市の「育児支援ヘルパー制度」でした。日中家事を助けてくれる人がいない家庭を対象に、1時間600円で産後90日まで、民間のヘルパーを派遣してくれるのです。
ヘルパーは地元のベテランママ。食事の支度や洗濯など家事を手伝ってもらうほか、子育てについての不安の相談にものってくれました。友子さんは産後直後、赤ちゃんがなかなかおっぱいをのめないことに不安になり、泣きながら夫の帰りを待っていたこともありました。
「元気に泣いてる赤ちゃんだね。また大きくなったね」というさりげない日々の声かけに救われ、育児不安を乗り切れたといいます。

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日中、1人の時間を支える態勢ができ、友子さんの気持ちも落ち着いたことで夫婦ともに育児を楽しめるようになりました。友子さんは育児経験ゼロから二人が同時にスタートしたことで、一緒に親になれたことを実感しています。
夫の寿さんも『二人が同じ目的に一緒に、同じタイミングで取り組んだことが、結果として幸せになっているという気がします』と話していました。

これまで、里帰り出産は女性にとって楽かどうか、という視点から語られてきたように思います。しかし、初めての出産は夫と妻が父親と母親になる大切なタイミングです。産前産後をどのように過ごすかを検討する時、夫婦関係にとって、また父になること、母になることにとってどのような影響があるのかも考える時代になっているのだと思います。


【クライシスはチャンス】
今回の取材から実感したのは、産後は夫婦にとって危機=クライシスであると同時に、夫婦の絆を深めるチャンスでもあることです。産後クライシスを上手に避けた夫婦や一度はクライシスに陥ったけれど解決した夫婦は、夫婦仲も子どもとの関係も良くなり家庭生活に大きな楽しみを見出しています。

女性にとっても男性にとっても負担の大きい産後ですが、この時期を上手に乗り切れば、その後、子どもの思春期や定年退職後の夫婦だけの生活といった変化に共に立ち向かう態勢が作りやすくなります。そういう意味でも夫婦にとって、家族にとって大きな意味のある時期だということはぜひ知っておいていただきたいと思いました。

投稿者:内田明香 | 投稿時間:06時00分

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