2012年03月19日 (月)仕事は会社の外で~広がるテレワーク~


会社に出勤し、自分の席に座って1日の仕事を始める。これまで当たり前だった働き方に変化の兆しが表れています。

会社から、離れて(Tele)働く(Work)「テレワーク」という働き方をご存じでしょうか。
パソコンやインターネットなどを活用し、会社の自分の席以外の場所で働くというものですが、この働き方の広がりを示す、興味深い調査結果がまとまりました。

atwrk1.jpg先日のブログでも少しご紹介しましたが、国が行った調査によりますと、通常の勤務先ではなく自宅や出先で、週に8時間以上テレワークで仕事をした人の割合は前の年を3.2ポイント上回り、19.7%に上昇したのです。

atwk2.jpg今や、働く人の5人に1人は、何らかの形でテレワークを行っているということになりますが、その背景には1年前の東日本大震災が影響したようです。

東日本大震災の発生直後、電車などの交通ダイヤは混乱。ふだんどおりに会社に出勤できない人が相次ぎました。また、企業側には、去年夏、大幅な節電が求められ、オフィスの消費電力をどのように削減するのか、頭を悩ませていました。こうしたことへの対応として、会社に出勤せずに働く「テレワーク」の導入に踏み切った企業が多かったと見られています。

大手精密機器販売会社「リコージャパン」も、夏の節電をきっかけに「テレワーク」の導入に踏み切った会社の一つです。営業部署の一部の社員を対象に、会社に出勤せず、取引先などを回ってそのまま帰宅する「直行直帰」という働き方を導入しています。

会社に戻らずに仕事をするため、事務作業が必要になったときには、取引先近くのレンタルオフィスで作業を行います。このときに活躍するのが、「シンクライアント端末」と呼ばれる端末です(下の画像)。この端末は、インターネット経由で会社のサーバー上にあるソフトウエアを遠隔操作することに特化したもので、端末を操作すると、サーバー上で書類の作成やデータの保存ができます。端末にデータは一切残らないため、万が一、端末を紛失しても情報漏えいの心配がありません。

atwk3.jpgこの会社では、セキュリティ上、営業マンがパソコンを持ち出して外で作業することを認めていませんでした。しかし、こうしたIT機器によって、外でも安全に仕事が行えるようになったことで、取引先への訪問件数は以前の1.5倍にまで増え、きめ細かいサポートが可能になったといいます。

その一方で、オフィスに残された中間管理職からは戸惑いの声も出ているといいます。
これまで営業現場では、部下と直接顔を合わせて手取り足取りの指導を行ってきましたが、部下の仕事内容のチェックはパソコン上で行うことが増え、お互いの意思疎通が十分にできているか不安に感じることも増えたということです。
特に、経験の少ない若手などに対し、新たな働き方の中で、どのように仕事のノウハウを伝えていくのかが課題だということで、この会社では、部下とのミーティングのあり方をどのように有効に活用していくか、模索を続けているそうです。

atwk4.jpg今回、先月20日放送の「Bizスポ」と、今月8日放送の「クローズアップ現代」(この記事の末尾に番組へのリンクがあります)の2回にわたって、テレワークを巡る動きをお伝えしてきましたが、取材の中で感じたのは、「離れた場所」で「時間に縛られない」テレワークには、働きたくても、事情があって働けない人の環境を大きく変える可能性を秘めている、ということです。

番組の中でも紹介した横浜市の40歳の男性は、サラリーマンとして多忙を極める30代で、父親の突然の病気、そして介護という現実に直面しました。仕事と家庭を両立するために、自らの体力を削る毎日。このままでは全てがだめになる。限界を感じた男性が選んだのは、仕事を辞めることでした。

男性は、幸いにも家庭の事情に理解のある新たな会社に再就職しました。その中で、仕事をおろそかにしないために、社内にサーバーを立ち上げるなど、どこにいても社員間で情報を共有できる仕組みを自分で構築しました。自宅でも必要な仕事が行える環境を整えることで、仕事と家庭を両立する生活を手にしまし た。

「親を介護する」ということは、現役で働いている世代の誰もが、突然向き合わなくてはならなくなる可能性があります。そのとき、仕事に十分な時間を割くことができなくなった人が切り捨てられるようなことは、本人にとってはもちろん、戦力として育成してきた会社にとってもマイナスになるのではないかと思います。

atwk5.jpgIT技術の進化によって、より安全にセキュリティを保ちながら、大容量の情報をどこにいてもやり取りできる環境が整いつつあります。こうした技術の進化を、私たちがよりよい環境で生活していける手段として活用していけるよう、「テレワーク」に対する理解がより深まっていけばいいなと感じています。

もちろん、「いつでもどこでも働ける」ことの問題もあります。仕事とプライベートの境界線があいまいになることで、結果的に仕事をする時間が増える、という指摘があります。

私事ですが、記者という仕事は、取材の現場に赴き、現場からパソコンを使って原稿を会社に送るということが多々あります。数多くの取材先と会うために、1日中外で仕事をしていることもよくあります。常に携帯電話を持ち歩き、事件事故などの突発的な事案への対応や、会社からの問い合わせ、さらに取材先とのやり取りなど、どこにいても連絡が取れるようにしておく必要があります。
そういう意味では、私も10年以上前から「テレワーク」を行っていることになります。そこで、自分で自分の仕事を振り返ってみると、休みの日にも仕事が気になってしまい、ついつい仕事の資料の作成や整理を行うなど、オン・オフの切り替えができていないときがありました。

「いつでもどこでも働ける」ことが、「いつまでもどこでも働かなければならない」というようにならないよう、在宅勤務制度を導入する企業の中には、終業時間が過ぎると会社のサーバーに接続できないようにして、仕事を続けることがないように工夫しているところもあるそうです。
「テレワーク」を活用する企業が労務管理にきちんとした仕組みを取り入れるとともに、社員の側も自らの働き方について考えを深めていく必要があると思います。

(参考)クローズアップ現代「仕事は会社の外で〜広がるテレワーク〜」(「放送内容まるごとチェックページ」へ)

投稿者:千田周平 | 投稿時間:06時00分

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

※コメントはありません

コメントの投稿

ページの一番上へ▲