2012年03月16日 (金)待機児童解消を阻む"保育士不足"


2月14日と15日のブログでもお伝えしましたが、新たな子育て支援策の法案が今国会に提出されることになっています。(14日のブログ記事はこちら15日の記事はこちらです)

この法案のねらいは、幼稚園や企業などの力を活用して受け入れ枠を増やし、待機児童の解消を図ることです。
しかし、受け入れを増やそうにも実は大きな課題が立ちはだかっています。

それが「保育士不足」です。今、都市部を中心に保育士不足は深刻化しています。
その現状を保育園と大学で取材しました。

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東京・世田谷区の保育園です。「入れる保育園が見つからない」と、せっぱ詰まったような親からの電話が次々とかかってきます。20人足らずの枠に80人近くが申し込んでいます。
園長は
「皆さん保育園が決まらないと働くことができないとおっしゃるので、どうぞと言いたいのですが、そうもいきません」と話していました。

実はこの保育園、面積には余裕があります。
0歳と1歳が過ごす2階のフロアは36人まで受け入れられる広さです。
ところが、実際に受け入れられるのは27人。残りの9人は受け入れられないのです。

0316015.jpgその原因は「保育士不足」です。去年秋から求人を出し続けていますが、確保できません。
園長は
「保育士の勉強をしている方がいらっしゃるのに、なぜ保育士がこんなにいないのでしょうか。私たちの力ではどうにもならないところがあります」と話していました。

0316014.jpg千葉市の淑徳大学です。
保育士の養成に力を入れていますが、保育士を選ばない学生が目立つようになっています。
総合福祉学部のあるゼミでは、保育士の資格を取得した4年生は5人。
しかし、自動車販売や職場体験施設、バイクの営業など、いずれも一般企業に就職し、保育士になる学生は1人もいません。

0316013.jpg保育士の平均給与は34歳で22万円。早朝や夜間、週末の勤務もある割には待遇が厳しいとして、敬遠する学生も増えているのです。
女子学生の1人は
「勉強したからこそ、子ども一人一人の発達に合わせた保育をする難しさを感じました。仕事にするのが大変な割には、給料とか体制が見合わないと思います」と話していました。

学生たちの選択に大学側も悩みを深めています。
保育士の養成を担当する仲本美央准教授は、3年生を対象に開かれた合同企業説明会に参加して、学生に保育園への就職を促しています。しかし、保育士になるかどうか、迷う学生は年々増えていると言います。

保育士であれば引く手あまたにも関わらず、就職が厳しい一般企業に関心が向いているのです。
仲本准教授は、保育士の専門性に見合った待遇に改善しなければ、この状況は変わらないと感じています。
「実習を経て、保育士になってほしいと望まれる学生でも、一般企業に行ってしまうのは残念に感じます。待遇面で社会的にきちんと保障されていない現状では、学生の選択としては仕方ない」と話していました。

0316012.jpg人手不足の保育園、その一方で、保育士にならない学生たち。
こうした状況では、新しい制度で「こども園」を増やしても、特に都市部では待機児童の解消につながらないおそれがあります。
東京では保育士不足は年々深刻さを増し、求人20人対して応募は1人しかいません。
子育て支援は、社会保障改革の中でも、政府が特に力を入れると言ってきた政策です。保育士の待遇改善も含めて待機児童対策をどう進めるのか、政府の姿勢が今後さらに問われることになります。

投稿者:内田明香 | 投稿時間:06時00分
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