2018年08月27日 (月)連日の猛暑 五輪は大丈夫?


※2018年7月19日にNHK News Up に掲載されました。

もはや災害と言っても過言ではない連日の猛暑。7月18日だけでも全国で2000人以上が熱中症の疑いで病院に搬送され死者は8人に上りました。こうした中で公表された2年後の東京オリンピックの競技スケジュール。「この時期の開催、本当に大丈夫なの?」 ネット上にあふれる声です。

ネットワーク報道部記者 伊賀亮人・高橋大地

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<“厳しい暑さを考慮した”>

ren180719.2.jpg大会の組織委員会は、2年後の7月24日から8月9日までの日程で行われる東京オリンピックの競技スケジュールの大枠を公表しました。

特徴は、「東京の厳しい暑さを考慮」して、屋外競技の一部のスタート時間を当初の計画より前倒ししたこと。例えばマラソンは午前7時半が7時に、競歩の男子50キロは午前7時半が6時に、トライアスロンは午前10時が8時に、といった具合です。


<“本当に大丈夫”の声>

ren180719.3.jpgしかしソーシャルメディアでは、厳しい声が上がっています。

「日常生活を送っている人が暑さで亡くなっているのに本当に2020年夏、開催するのでしょうか?」

「やる時期変えた方がいいんじゃね?まじでぶっ倒れる選手でるぞ」

「観客やボランティアが熱中症起こし救急病院が大変なことになりそう」

「どうしても夏の東京で開催したいなら、北海道を東京と改名してそこでやれと思ってます」


<海外メディアは繰り返し懸念>
海外のメディアは、こうした懸念を繰り返し伝えています。イギリスの有力紙「タイムズ」はことし1月、「『アスリートと観客は、熱中症で死のリスクにさらされる』と研究者が指摘している」と報道。

最近ではロイター通信が7月18日付けで「東京オリンピックまでまもなく2年となる中で、最近の激しい熱波が、開催時にも同じような異常気象が起きるのではないかという恐怖を引き起こしている」と伝えています。


<データから見る競技現場>

ren180719.4.jpg実際に競技が行われる時間帯、競技会場はどんな状況なのか?

環境省は、オリンピックに向けた暑さ対策の一環として、主要競技会場の周辺など14か所で気温や湿度などを観測。その結果を元に「暑さ指数」にまとめ「熱中症予防情報サイト」に掲載しています。

この暑さ指数、単位は摂氏と同じ「℃」ですが気温ではなく、28~31℃は『厳重警戒』を意味し、「すべての生活活動で熱中症が起こる危険性があり、激しい運動は中止」。31℃以上は『危険』で、「運動は原則中止」を意味します。


<マラソン 暑さ指数“31.5℃”>

ren180719.5.jpg男子マラソンのスタートとゴールになる新国立競技場周辺のデータを見てみます。

スタート時刻の8月9日午前7時、去年のデータでは「暑さ指数」が29.2℃となっています。終了時の10時には31.5℃にまで上がります。


<ゴルフ場 暑さ指数“31.9℃”>

ren180719.6.jpg続いてゴルフ。会場は埼玉県川越市の「霞ヶ関カンツリー倶楽部」で、スケジュールは8月8日の午前7時から午後3時半まで。

去年の同じ日、会場周辺では午前7時の時点で暑さ指数が27.5℃。その後、午後2時には31.9℃まで上がりました。


<選手だけでなく観客も>
こうして見ると、競技が行われる時間帯に会場周辺ではいずれも「すべての生活活動で熱中症が起こる危険性」があり、一部では「運動は原則中止」のレベルに達しています。選手はもちろん、観客にも影響が懸念されることがデータからうかがえるのです。


<選手と観客 双方の対策を>

ren180719.7.jpg実際のマラソンコースの気象条件を観測して選手と観客に及ぶ影響を分析した東京大学大学院工学系研究科の横張真教授は、今回のスケジュール前倒しについて、「それだけ厳しい条件の下で行われるのでスタート時間が早められたのは当然で、対策としてできることはすべてやるべきだ」と指摘します。

そのうえで「忘れてはならないのが観客のための対策。沿道での観客が東京マラソンと同じ規模の100万人に上った場合、0.1%の人が熱中症にかかったとしても1000人規模で搬送される恐れがある」と指摘します。


<取るべき対策は?>

ren180719.8.jpg大会中の暑さについては、組織委員会や国、東京都も重要課題と位置づけさまざまな対策を進めています。

例えば、建設が進む新国立競技場では、効率よく風を取り込むために構造を工夫しているほか、スタンドに気流をつくりだすファンも設置されます。

ren180719.9.jpgマラソンコースなどでは道路の路面温度の上昇を抑制する舗装も進められています。さらにマラソンコースや主要競技会場までのアクセスルートに木陰を確保できるよう、街路樹のせんていも計画的に行っています。

こうした対策について、横張教授は「『開催地も時期もマラソンなどのコースも変えられない』ということであれば、いちばん効果があるのは日陰をいかにつくるかだ」としたうえで、さらに取るべき対策を提言してくれました。


<ビルの日陰も利用>
まずは、都市という東京の特性を生かしてビルの日陰を有効利用すること。

「マラソンが行われるのは午前中なので東側から日が差してくる。そこでランナーが日陰に入りやすいような誘導をするのがいいのではないか。例えばコース上、南から北に向かう場所では右車線を走れるようにすると日陰が多く作れる」。


<観客を入れない決断も>
さらに日陰のない場所では思い切った対策も必要だと指摘します。

「例えば皇居前広場など近くに日陰がないため観客は入れないくらいの措置をとるべきではないか」

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<影響は日常生活にも?>
観客だけでなく通常の生活をする市民にも対策が必要だと指摘します。期間中は、朝の通勤時間の交通機関の混雑が激しさを増すと予想され、バス停での待ち時間が増えるなどして熱中症になる危険性が高まると想定されるからです。

横張教授は「大会期間中は、競技会場に近い、近くないにかかわらず、通行人や観客が熱中症にかかりかけた場合、冷房の効いた商店街の店舗や企業の事業所が一時的に避難を受け入れ、冷たいタオルを提供するよう協力を求めるなどの対策が必要だ」と話しています。

多くの人たちが最近感じている日本の夏の異常な暑さ、とりわけ大都市・東京の酷暑。なぜ、この時期に大会を行わなければならないのか、市民の協力を得るためにも分かりやすい説明が改めて求められています。

投稿者:伊賀亮人 | 投稿時間:16時42分

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