2018年03月16日 (金)私をリンクに連れてって


※2018年2月23日にNHK News Up に掲載されました。

「カーリングやってみたーい」 「なんでやらせてくれないの」 これ、5歳の男の子とお母さんの会話です。お母さん、最後にこう言われたそうです。「ママ、ぼく保育園やめてカーリング習いたい」 女子を中心に快進撃が続く日本カーリングチーム。その姿にいま、夢中になる子どもたちが相次いでいます。各地のカーリング教室で起きているうれしい異変です。

ネットワーク報道部記者 野田綾・玉木香代子
松山放送局記者 川本聖

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<定員を倍に増やしても…>
雪国のスポーツと思われがちなカーリング。

確かにそうですが、実は東京にも愛知にもそして九州の福岡にもカーリング協会があり、各地で強化委員会も設置されています。なんとか普及させたい、選手を育てたいと体験教室を開いて裾野を広げようとしているのです。

いまそうした教室に異変が起きています。

まず取材したのは東京都カーリング協会。都内2か所の“スケートリンク”で、小学生から社会人までを対象に道具の使い方から氷上のすべり方、それにストーンを投げる練習、そんな体験教室を月に2回開いています。

lin180223.2.jpgスケートリンクを使うのは専用のカーリング施設が東京にないから。器具で氷を削り臨時のサークルを作って指導しています。

異変が起きたのはピョンチャンオリンピックが始まってからです。

これまで定員を集めるのも難しく、参加者が2~3人、時には全くいないこともありました。それが定員を上回る申し込みが寄せられたのです。


<2倍の定員がすぐに>
これはチャンスと、協会では、急きょ、来月17日の体験会の定員を通常の倍の30人に増やしました。

するとそれも募集したその日のうちにいっぱいになりました。希望が多かったのは親子連れで、次回の講習会への問い合わせも次々にきています。

東京都カーリング協会の小谷野良明さんは親子で体験したいという声をこれほど聞いたことはなかったと言います。

「正直、驚いています。子どもが関心を示してくれるのは、競技のこれからにとってもうれしいことです」

lin180223.3.jpg東京都カーリング協会 小谷野さん


<競技人口3000人>
そもそもカーリングってどのくらいの競技人口なのでしょうか。

日本カーリング協会の倉本憲男さんに聞いてみました。

「2500人から3000人ほどですかね。その半分ほどが北海道だと思います」

このほかに愛好家が1万人くらいとみているそうです。

lin180223.4.jpg日本カーリング協会 倉本さん
ちなみに…。2017年のレジャー白書を見てみると、そのスポーツを1年間にやったことがある「スポーツ参加人口」というのがあります。スキーは330万人、スノーボードは250万人、アイススケートは190万人。カーリングを楽しむ人の少なさがわかります。

協会のホームページを見ると日本にカーリングが定着したのは1970年代後半。その後、2006年のトリノオリンピックで本橋麻里選手などの女子カーリングチームが注目されいっときブームがわき起こったこともあります。

lin180223.5.jpgトリノ五輪「チーム青森」
倉本さんによると「それでも競技人口は常に2500人から3000人の間をいったりきたりしている」状況だそうです。


<スケートが終わった後に>
なかなか競技人口が増えない理由のひとつは『競技施設が少ないこと』。

専用のカーリング施設があるのは北海道と青森県、長野県など一部に限られています。

lin180223.6.jpg体験教室(札幌)
ほかは東京と同じように、スケートリンクを臨時のカーリング場にして、スケートの利用時間が終わった夕方や、早朝に体験教室を開くことが多いそうです。

「オリンピックのたびに競技をする人は増えるのですが、一時的で、そうしたブームが定着しないのが悩みです。でも今回のオリンピックは成績がいいので、愛好者を増やすチャンスだと思っています」(カーリング協会 倉本さん)


<今回は違う!>
確かに今回の盛り上がりは少し違うようです。例えば千葉県カーリング協会。

これまで毎月1回、体験講習会を開いていて、定員の10人余りの参加者がそろわないことも多々ありました。それがすでに6月までの体験会が定員いっぱいになり、空きがありません。

lin180223.7.jpg問い合わせは“カーリングのできるスケートリンクに連れて行って”とか“カーリングってやってみたい”などと子どもにせがまれた保護者からのものが半数以上です。

広報の竹渕将人さんは「オリンピックのたびに一定数体験者が増えることはよく経験するけれど、これだけ子どもの関心が高いのは驚きです」と話していました。

関西でも京都府カーリング協会が問い合わせの多さから、来月、体験講習会を追加して実施することにしています。これまで参加者は30代から40代が中心でしたがこちらも親に頼み込んで参加する子どもが目立ち追加分も空きがありません。

小さな変化もあります。四国で唯一、カーリングの試合ができるリンクがある愛媛県松山市。

lin180223.8.jpg練習会(松山)
毎週金曜日の夜に練習会が開かれています。参加者はわずか7人。愛媛県カーリング協会では去年、藤澤五月選手も招いて体験会を開き普及に努めたものの、ここ1年半は新たなメンバーの加入はありませんでした。

ところが、最近「カーリングをやってみたい」という問い合わせが日ごとに増え、新たに女子中学生など2人が練習会への参加を申し込んだそうです。


<“掃除みたいなスポーツ”と言われてきたけれど>
話を聞いた東京のカーリング協会の小谷野さん。カーリング歴は20年以上です。始めた当初は「掃除みたいに掃いている、あのスポーツでしょ」などと言われたそうです。

ブラシを隠したいくらいの後ろめたい気持ちになったこともありますが、今では「カーリング?かっこいいね!」といううれしい反応に変わったことを実感していると言います。

「カーリングの魅力は単に的に当てるだけでなく、氷上のチェスと呼ばれるようにチームでコミュニケーションをとりながら作戦を練る奥深さにあります」

「やってみるのはもちろん試合を見てゲーム展開そのものを楽しみながら、奥深さに気づいた人も増えてきたと思います。多くの人が楽しめる競技になってほしいです」

lin180223.9.jpgオリンピックでの注目度が高いにもかかわらず、それがなかなか普及につながらなかったカーリング。

でも私もこんなに魅せられるスポーツだとは正直、今回のオリンピックが始まるまで思いませんでした。

見ていてもどきどきわくわくしますし、ストーンが投げられたあとハウスと呼ばれる円に入り、中心に近づくまでになんとも言えない“間”があるのが好きで、ストーンの行く末を声を上げながら見つめてしまうのです。

今の異変が異変でなくなるような日がまもなく来るのかもしれません。

投稿者:野田 綾 | 投稿時間:16時50分

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