2018年03月01日 (木) 韓国人もあの鳥には「?」 オリンピック開会式 現地の反応は
※2018年2月10日にNHK News Up に掲載されました。
オリンピックに限らず今や多くの人たちが注目する行事にはネットへの書き込みがつきもの。「人面鳥怖い」「トンガすごい」ピョンチャンオリンピックの開会式でもまたたくまに注目ワードが並びました。でもこうした感想って韓国の人たちも同じなの?探ってみました。
ネットワーク報道部記者 佐藤滋
<ネットで開会式をウォッチ>
9日、夜8時に始まったピョンチャンオリンピックの開会式。現地にいる私たちはその様子を見ながら韓国の最大のポータルサイト「NAVER」をウォッチして、韓国の人たちのネット上の反応を探っていました。
<韓国人も「初めて見た!」>
これがうわさの…
「見て驚いた」「何だろう」「怖いけど愉快」「一生忘れられない」
序盤、圧倒的に話題をさらったのはこちらでもやはり「人面鳥」でした。
「本当に怖かった。人面鳥のクオリティ、何だろう」
このキャラクター、韓国の人たちには知られているんじゃないの?と思ったのですが、一緒にいた韓国人のリサーチャーも「初めて見た!」とのこと。
人面鳥は7世紀まで続いた高句麗時代の壁画に描かれたもの。天と地の間を行き来しながら1000年を生きるという伝説の鳥だということですが、もう少し頻繁に現れていただけると知名度も上がるかもしれません。もっとも、今大会で相当、有名になりましたが…。
<早くも「最後は誰?」>
そのあとすぐ関心が高まったのが「聖火リレーの最後の走者」。
最後の走者がわかるまで、まだ1時間以上ある時点で「キム・ヨナ」というワードを検索する人が急増しました。言わずとしれたフィギュアスケート女子の金メダリスト。もうすでにこの時点で皆さん大正解です。
こんなコメントもありました。
「1人で出るべき」
キム・ヨナさんが北朝鮮の選手と2人で聖火をともすのではないかという推測からでしょうか。
<入場行進の注目は?>
そうこうしているうちに選手たちの入場が始まりました。すると各国や地域の名前が検索ワードで上位にきます。
「ルクセンブルク」、「東ティモール」、「リヒテンシュタイン」、「モナコ」、「マルタ」、「サンマリノ」
小さな国に関心が集まっていました。
世界が驚いた
中でも大注目はやはり「トンガ」
旗手の選手は氷点下の気温でも上半身裸!ピタ・タウファトア選手です。
リオデジャネイロではテコンドーに出場しましたが、今回はスキー、クロスカントリーでの出場。
「希望はトンガにあったのか」「正直、開会式はトンガの旗手に全部もってかれた!」と韓国のネット上でも驚きの声が相次いでいました。
<複雑な思いも…>
そして、最後に登場した韓国と北朝鮮の選手団による合同の入場行進。ネット上には複雑な思いが交錯していました。この時点の検索ワードの1位は朝鮮半島が描かれた統一旗を意味する「韓半島旗」。
「なんで涙が出るんだろう」というコメントも。
一方で圧倒的に多かったのは
「韓半島旗…ひどい」
「みんなは1つ…そこから私は引いてくれ」などという声。
南北合同の入場行進に開会式の会場からは大きな歓声があがっていましたが、若い世代を中心に、ネット上ではあまり支持が広がっていない様子がうかがえました。
<“大本命”に絶賛の声>
最終走者はやっぱりこの人でした
そして開会式のクライマックス。聖火台への点灯です。
実は韓国国内では以前から地元の自治体と新聞社が協力して「聖火ランナーの最終走者を予想しよう」と呼びかけをフェイスブックで行っていました。当たった人には抽選で最新型のノートパソコンや、手袋やマグカップなどの公式グッズといった賞品が送られるというこのキャンペーン。合わせて1300人余りが参加し、圧倒的に多かった回答は、やはり「キム・ヨナ」でした。
そのキム・ヨナさんが聖火を聖火台にともした姿にネット上では…。
「キム・ヨナ、引退が早すぎた」
「キム・ヨナが点灯したことで満足しよう」
「なんと美しく感動的だっただろうか。さすがキム・ヨナ」
この演出には韓国の人たちの多くの支持が集まったようです。
<開会式で1つになる?>
実は、今回の大会のテーマは「Passion Connected」、「1つになる情熱」です。
開会式の総合プロデューサーを務めたソン・スンファンさんは「分断国家である韓国にとって平和への願いは切実。オリンピックの場でさまざまな立場の違いを超えた世界のつながりを表現したい」と語っていました。
開会式という1つのショーを見ながら、いろいろな国の人たちがネットで共感したり違う意見を言ったりすることこそ、世界がつながることになるのではと感じました。
<韓国新聞各紙は>
開会式から一夜明けて韓国の新聞社はどう伝えているのでしょうか。
1面トップでは、
「伝統と現代が入り混じった楽しいフェスティバル」
「平和の火が燃え上がった」
「人中心の暖かい物語」とか、
30年前のソウルオリンピックを踏まえて
「韓国に2番目の火をつける」などと、
革新系、保守系ともに好意的に伝えていました。
一方で、社説では革新系が「見どころはなんと言っても南北合同の入場行進。これがスポーツの力。南北関係は前向きに進むのではないか」とか「対立をスポーツで解決できることを教えている」と評価。
保守系は「北朝鮮が参加を決めたことで世界の注目が政治的な問題にばかり集まってしまい、主人公であるはずの選手たちへの関心がいま一歩という傾向も」とか「スポーツの祭典というオリンピックの本質が後回しにされ、政争の道具になってしまったことは残念だ」と批判的でした。
<次はいよいよ東京>
さて、2020年はいよいよ東京です。
誰が、監督を務めるのか?誰が、最終走者なのか?
東京大会の組織委員会は、オリンピックとパラリンピックの開会式と閉会式の4つの式典に「平和」「共生」「復興」など8つのコンセプトを設け、『起承転結』として一連の4部作で構成するということですが、詳細はこれからの検討です。
世界で話題になり、記憶にも残る開会式になってほしいですね。
投稿者:佐藤滋 | 投稿時間:17時33分