2019年05月17日 (金)「ふうふ」になりたい


※2019年2月14日にNHK News Up に掲載されました。

その2人は、自分の本当の気持ちに気がつき、お互いの子どもとともに1つ屋根の下で暮らし始めました。ごく当たり前の幸せな生活が始まったように思えましたが、ふと、不安になることがあります。それは、2人が女性どうしだから。もしもの時に、男女の「夫婦」でなければ、大切な人を守ってあげることもできない。その違いに苦しみ、悩んだ2人は、声を上げることにしました。

ネットワーク報道部記者 宮脇麻樹

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<男性が好きなふりをして>

190214huu.2.jpg(左)小野春さん (右)西川麻実さん
西川麻実さん(40代)は、子どものころから家庭を持つことに憧れてきました。

小学生の時、自分が好きになるのは女の子だと気が付きましたが、年を重ね、世の中のことがわかるようになるにつけ、家庭を持つには男性が好きなふりをして結婚するしかないと考えるようになりました。そして、ある男性と結婚。子どもを1人産みましたが、その後、離婚しました。

小野春さん(40代)は、女子校に通っていたころに、同じ学校の女子生徒を「好きになったかもしれない」と思ったことがありました。そのことを友達に打ち明けたこともありましたが、「男の子が周りにいないからでしょ」と言われて、気のせいだと思い込んでいました。

20代で男性と結婚し、子どもを2人産みましたが、子どもが小学校に上がるころに離婚しました。

小野さんがシングルマザーになり、どうやって暮らしていけばいいのか困っていた時、助けてくれたのが、知り合いだった西川さんでした。ひかれ合うようになった2人は、自分の本当の気持ちを大切にしようと思い、お互いの子どもと5人で寄り添って暮らすようになりました。


<同じなのに、違う>

190214huu.3.jpg子どもたちが2人の誕生日に送ってきたカード。3人の子どもを2人で一緒に育ててきた。
「ふだんの暮らしは、異性と結婚していた頃と何も変わりません」と小野さんは言います。2人で子どもを育てていることも一緒。お互いに助け合って生活を支えることも一緒。自分たちの意識としては、男女の夫婦と同じです。

ただ、社会の一員として生活するうえで、男女の夫婦でなければうまくいかないことが多いと気付かされました。例えば、安定した生活には欠かせない、住む場所の確保。西川さんは、以前は、元夫の転勤に合わせて、勤務先から家族用の広い住居を用意してもらえました。元夫が海外に赴任した時には、日本に残る家族の家賃も会社が負担してくれました。

2人は、自分たちで家を借りようと考えましたが、同性どうしで家を借りようとしても、快く貸してもらえるのか。いっそのこと家を買おうとも思いましたが、同性どうしが共同名義でローンを組めるのか。いろいろなことが気になり、結局、小野さんがもともと住んでいた部屋に5人で窮屈な思いをしながら住んでいます。

不都合を感じたのは、住む場所だけではありません。小野さんが産んだ子どもが、病気で入院しなければならなくなった時のこと。子どもに付き添っていた小野さんの代わりに、西川さんが病院の窓口へ手続きをしに行ったところ、職員から、「元夫でもいいですから、とにかく血のつながった人を連れてきてください」と求められました。

法律上の婚姻関係がない2人は、相手の産んだ子どもの保護者として扱ってもらえないのです。西川さんは「私たち家族の生活は、男女の夫婦の家庭と同じだと思うんです。共働きで一緒に子どもを育てて、家事を分担して、子どものことで一喜一憂して、おじいちゃんとおばあちゃんがいて。でも親が同性どうしだというだけで、人並みの幸せを手に入れようとすると壁にぶつかるんです。異性のカップルならこういう家庭が作れるという広くて簡単な道が用意されているのに、同性のカップルだとその道はふさがれていて、せいぜいバイパスみたいなものしかないと感じます」と話しています。


<お互いの身に何かあったら…>
いちばん深刻なのが、お互いの身に、もしものことがあった時です。

3年前、小野さんは乳がんになりました。今も治療中で、常に再発の不安を抱えています。小野さんが産んだ子は、上の子は大学生ですが、下の子はまだ高校生です。西川さんにはそれぞれの子どもを分け隔てなく育ててもらっていますが、法律上は赤の他人です。親権がなければ、保護者として守ってもらうこともできません。

どうすることもできない現実が2人に重くのしかかってきました。


<欲しいのは、特別なものじゃない>

190214huu.4.jpg西川さんと小野さんは、同性どうしの結婚を認めるよう国に求める集団訴訟に加わることにしました。欲しいのは特別なものではなく、ただ当たり前の家族関係だけ。

同じ思いを抱えた同性カップルとともに、14日、東京地方裁判所に提訴しました。

「自分は小野さんと幸せな家庭を築いたけど、それだけで良かったのかと疑問に思ったんです。自分もずっと人生のやりにくさや苦しさを感じてきたけど、他にも同じような思いをしているカップルはいっぱいいます。特に若い人たちには自分たちのような思いをしてほしくないんです」(西川さん)

「男性と結婚していた時と何も変わらない暮らしをしているのだから、同じ扱いにしてほしい。裁判を起こしたことで何を言われるか分からなくて怖さもあります。でも、いろんなことを諦めて諦めて生きてきて、こんな風に追い込まれるのは変えなきゃいけない」(小野さん)

190214huu.5.jpg同性婚を認めないことが憲法違反かどうかを問う集団訴訟は、これが初めてです。

一方、国は、結婚は男女がするものだという前提でさまざまな制度を運用していて、裁判で争うものとみられます。民法や戸籍法といった結婚に関する法律には、婚姻の当事者は「夫婦」と記されています。国が同性婚を認めないのは、「夫婦」は「男である夫」と「女である妻」の意味だという解釈が一般的だという理由です。

これまで当然とされてきた、結婚は男女がするものだという考え方。性的マイノリティーの人たちの権利を守る動きが世界的に広がる中で、果たして日本でも変わっていくのでしょうか。

裁判の動きに注目しながら、これからも取材を続けたいと思います。

投稿者:宮脇 麻樹 | 投稿時間:16時17分

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