2017年08月04日 (金)"毎日が修学旅行のつらさ" 施設で暮らすLGBTの子どもたち


※2017年5月30日にNHK News Up に掲載されました。

LGBT=性的マイノリティーの子どもをめぐる、
ある調査結果が今月、明らかになりました。

民間の団体が全国の児童養護施設を調査したところ、
回答した施設のほぼ半数がLGBTの子どもが「現在いる」あるいは「過去にいた」などと答えたことがわかったのです。

こうした子どもたちがどのような思いを抱いて施設で過ごしているか、想像したことはありますか?
調査した団体によると、それは、”毎日が修学旅行のつらさ”
調査から、その実態が見えてきました。(報道局・宮脇麻樹記者)

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<調査のきっかけは施設の職員たちの悩みの声>

LGBT1707303.6.jpg調査を行ったのは、児童養護施設のLGBTの子どもについて考える活動をしている一般社団法人「レインボーフォスターケア」です。
代表理事の藤めぐみさんは、施設で講演をするたびに、職員から、「性的マイノリティーと見られる子どもがいるが、どう対応すればいいかわからない」と、相談を受けるようになったといいます。

そこで、具体的な対策を考えるため、
大学の研究者3人と協力し、全国的な実態調査を初めて行い、
今月27日、都内で報告会を開きました。


<半数近くの施設で「現在いる」か「過去にいた」>

LGBT170730.2.jpg調査は、去年、全国601のほぼすべての児童養護施設を対象に
調査票を送る形で行い、220の施設から回答を得ました。

その結果、
自分の性別の認識や好きになる性別が典型的な形とは違うとして、
児童養護施設の職員が性的マイノリティーだと推察する子どもが
「現在いる」と答えた施設は10.5%、「過去にいた」が28.6%、「現在いて、過去にもいた」が5.9%と、回答した施設の45%だったことがわかりました。

子どもの数は合わせて144人。
このうち、「男の子だが女の子のようなふるまい」の子どもが43人、「女の子だが男の子のようなふるまい」の子どもが44人、
「同性愛の傾向がある」子どもが54人、などとなっています。

LGBT170730.5.jpgこうした子どもの具体的な行動について尋ねると、男の子では、
着替えを見られることや、集団での入浴・プールを嫌がる、声変わりやひげなど、第2次性徴の体の変化に嫌悪感を抱く、女子用の衣服や女の子との遊びを好み、入浴で裸を見られるのを恥ずかしがるなど、集団生活に関する回答が多くなっています。

また、女の子では、中学校のスカートの制服に抵抗する、
「男になりたい」「男に生まれたかった」と言い、スカートをはくことを
嫌がるなど、多くが服装に関する回答でした。

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<職員の声から見えてきた課題>
こうした子どもたちへの対応について尋ねると、アンケートの自由記述から職員が苦労したり悩んだりしていることが見えてきます。

まず、「施設の都合上、個室が取れない。男女で生活スペースを分けているので、受け入れが難しい」、「男子棟、女子棟と体の性別で分けているが、心の性別で決めた場合、本人のために良くても、他の子どもやその家族への説明が難しい」などと、施設の構造上の課題を指摘する回答が最も多くありました。

また、「性の多様性について職員全体の意識が低く、子どもはそういう雰囲気を感じ取るため、周りに言いにくい状況になっている」など、
職員自身の課題を訴える声もありました。


<子どもたちの思いは?>

LGBT170730.7.jpg一方、こうした児童養護施設で過ごすLGBTの子どもたちは、
どのような思いを抱いているのでしょう。調査を行った民間団体の藤めぐみ代表理事は、日々の生活が集団生活で、
いわば「毎日が修学旅行」のようなつらい状態だといいます。

修学旅行を思い出してください。
ふだんは違う環境で暮らしている大勢の友達と一緒にお風呂に入ったり、同じ部屋でみんなで寝たりとワクワクした人も多かったと思います。しかし、LGBT=性的マイノリティーの子どもたちにとって、
修学旅行は大きな困難を伴う行事です。

体と心の性別が一致していない場合、心の性別が女性なのに、体の性別が男性だという子どもは、大勢の男子と一緒にお風呂に入ったり、同じ部屋で寝たりすることになってしまいます。
想像しただけでも恐怖や恥ずかしさで逃げ出したくなりますよね。

その状態が、
児童養護施設で暮らす子どもたちには毎日、続いているのです。


<施設はどう対応?>

LGBT170730.1.jpg今回の調査結果からは、児童養護施設の職員たちが、苦労や悩みを抱えながらも、LGBTの子どもへの対応を工夫している姿も浮かび上がってきました。

性的マイノリティーと見られる子どもが「現在いる」か、「過去にいた」と回答した施設のうち、実際に「対応したことがある」と答えたのは
66.6%、「対応したことがない」は30.3%でおよそ3分の2の施設の職員が何らかの対応をしていることがわかります。

具体的には、希望する性別の洋服を購入したほか、制服のスカートの着用をしなくてもいいよう、学校と調整した、個室を提供したり、下着や洋服を自分で購入させたりした、「ありのままのあなたでいいんだよ」と日頃から伝えるようにした、などの回答が寄せられました。

このような対応をしたと答えた施設に、子どもに変化があったかどうかをきいたところ、職員に対して、前よりオープンに話をするようになった、ほっとした表情になり、安心して生活できているようだったなどの回答があり、調査した団体は、「施設の対応次第で子どもにとって過ごしやすい環境を整えることができるのではないか」と話しています。

藤めぐみ代表理事は「児童養護施設は学校とは違う生活の場なので、職員には独自の対応や研修が必要です」と指摘。
今後、職員への聞き取りも行った上で調査結果を詳細に分析し、具体的な対策を取りまとめ、多くの施設の職員に役立ててもらいたいとしています。

集団生活の中で声をあげられず、生きづらい思いを抱えているかもしれない、児童養護施設の子どもたち。
今回の調査結果から職員への理解が広がることで、多くの子どもが救われるのではないかと思います。

投稿者:宮脇 麻樹 | 投稿時間:14時39分

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