2012年11月16日 (金)気付かない 緑内障に注意
自覚症状がないまま進行していく目の病気「緑内障」。名前は聞いたことがあるという方も多いかもしれません。患者は全国で300万人。中途で失明する原因で最も多い病気なんです。緑内障は、視野が徐々に欠け見えない部分が広がっていく病気です。なぜ視野が欠けながら、気づきにくいのでしょうか?
緑内障の患者はどのように見えているのか。専門家が作った画像です。通常、このように見える景色。下の画像が、患者が見た様子ですが、視野が欠けた部分が、もやがかかったようになって、子どもの姿が見えなくなっています。
患者の多くは、気付かないまま症状が進み20代で発症する人もいます。田口佳佑さん、24歳です。今年5月、
コンタクトレンズを作る際の診察で偶然、緑内障がみつかりました。左目の視野の一部が失われていましたが、自覚症状はほとんどありませんでした。
気付いたときには、視野の半分が失われていたという人もいます。さいたま市に住む西本紀夫さんです。異変に気付いたのは、50代のときでした。ゴルフやテニスのボールが消えてしまったり、交差点で歩いてくる人の上半身が見えなかったりしたと話していました。
診察の結果、右目の視野の半分、左目も中心付近の視野が失われていました。いま左目は、ほぼ失明の状態です。西本さんは、「おかしいと気付いた時には症状がかなり進んでいた」と話していました。
なぜ緑内障は、症状が進むまで気づきにくいのか。人の目と同じように2つのレンズがある3Dのカメラで実験してみました。
左目の半分の視野が欠けている想定で作った映像です。左側がちょっとぼやけていますが、見えています。
左右それぞれで見るとこのように映っています。両目だと、右目が左目の欠けている部分を補うために異変に気付きにくいのです。
緑内障が専門の中野匡医師です。緑内障の視野の異常は、周辺部から出始めることが多く、中心部に影響してくるのは症状がかなり進行してからというケースが多いといいます。このため、視野が狭くなっていても視力検査では異常が見つけられず、多くの患者が、病気が進行するまで気付かないといいます。さらに、中野さんは、「視野が欠けたところが黒く見えなくなっていれば見えないと自覚して、気を付けると思うんですけど、そういう見え方で
ないところが問題で、見えていないことに気づいていないことが問題な病気」だと話しています。
さらに、視野の異常に気がつかないことが思わぬ危険につながることも分かってきました。東北大学の国松志保助教は、緑内障の患者を対象に、ドライブシミュレーターで、事故が起きる危険がどこにあるのか研究しています。
この患者は、左右を確認している間、赤信号に気づかず交差点に進入しました。上方の視野が欠けていて、赤信号に変わっても気づかないことが起こり、交差点に進入してしまったのです。
別の患者は、道路を横断する人に気付かず衝突してしまいました。患者にはどのように見えているのか。中心部は見えているため、一見運転に問題がないように見えます。
しかし、横断する人が視野の欠けている右下の灰色の部分に入っていて見えていません。直前まで気付かず、ぶつかってしまいました。
研究の結果、緑内障が進行した患者は、健康な人に比べて事故を起こすリスクが2倍。国松さんは、視野が欠けたことに気付かずに運転する危険性を指摘しています。国松さんは、「自分が欠けているところがどこにあるか知っているだけで危険は回避できると思う。自分が大丈夫だと思って眼科にも行ったことがなくて運転している人が一番危ないのではないか」と話しています。
どんな人が特に注意が必要なのか。リスクが高いとされているのは、近視の人、特に強い近視の人です。年代では40代以上で、この年代になりますと患者は20人に1人とされます。
緑内障は、症状を回復することは出来ません。しかし、早期に発見すれば、いまは毎日点眼する簡単な方法で、多くの場合、進行を抑えることが出来ます。また、手術で、進行を止める方法もあります。早期発見のための対策はどんなものがあるのか。今、パソコンでできる簡単なチェック方法も開発されています。モニターの画面の大きさに合わせて、顔の位置を決めます。そして、画面の中心を見つめます。周りに小さな模様が4つあります。シートが回転していったときに、この模様が見えなくなる場所がないかチェックしていきます。見えない場所があると、その部分の視野が欠けている可能性があります。
一番大事なのは、目の検査です。視力検査では分かりませんし、目に空気を吹きかける眼圧の検査でもわからないことが多いのです。このため、目の奧の神経の状態を調べる「眼底検査」が必要になってきます。カメラで撮影した画像を解析して、緑内障かどうかを調べるものです。かつては、自治体の健康診断で広く行われていましたが、
4年前から検査の対象がメタボリックシンドロームの基準に該当する人だけと限られました。自治体によっては、眼底検査を受けた人が以前の30分の1にまで激減したところもあります。このため自治体独自で、検査を行うところもありますが、国の研究班の調査では回答のあった1132の自治体のうち、取り入れているのは16%・185の自治体にとどまっていました。
調査を行った国立病院機構東京医療センターの山田昌和部長は、「緑内障は、早期発見が非常に有効だ。自治体や国の制度としての目の健康診断の態勢を整えて行く必要がある」と話しています。
公的な態勢は課題もありますが、専門家は「40歳を超えたら1度。そしてその後も、1年に1度眼底の検査を受けて早期発見に努めてほしい。そうすればたとえ緑内障となっても多くのケースで進行を抑えることができる」と話していました。気付かずに症状が進行していく、さらに事故につながる可能性もあるだけに、チェックシートの活用や目の検査を受けることが重要だと感じました。
投稿者:森田拓志 | 投稿時間:06時00分
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