2019年03月19日 (火)不快?それとも... 年始の広告めぐる議論を考えてみた


※2019年1月7日にNHK News Up に掲載されました。

元日に新聞などに掲載された、ある広告がインターネット上で議論を呼んでいます。女性の顔にパイが投げつけられた写真に「女の時代、なんていらない?」というフレーズ。議論を呼んだその背景にあるものを取材しました。

ネットワーク報道部記者 鮎合真介・飯田暁子・大石理恵

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<“女の時代、なんていらない?”>

190107huk.2.jpg広告は、大手デパートの「そごう・西武」が元日に新聞やホームページなどに掲載しました。
女性の顔にパイが投げつけられ、顔や髪、洋服にクリームが飛び散っている写真が使われています。写真の横には、「女の時代、なんていらない?」というフレーズ。

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<ネット上では批判相次ぐ>

この広告に対して、ネット上には様々な反応が上がっています。

190107huk.4.jpg一方で、目立ったのは、批判的な意見でした。

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<そごう・西武の意図は>
広告がネット上で議論を呼んだことについて、そごう・西武の広報担当者に聞きました。

Q 広告に対する反応をどう受け止めていますか?
「弊社の広告に対してネット上で賛否両論のさまざまなご意見をいただき十人十色と言いますか、ひとそれぞれの受け止め方があるということを感じています。広告には、女性にさまざまな制約から解放され自分らしく生きてもらいたいというメッセージを込めました。だれかを差別するとか何かを批判するという意図はありません」

Q 女性がパイを投げつけられている写真に対する意見が多く寄せられていることについては?
「今の時代のさまざまな制約をパイ投げで表現しました。制約に屈することなく自分らしさを追求する女性や、共感するすべての人を応援するというメッセージを込めています。ちなみに広告上にある『わたしは、私』というキャッチコピーは同質化された社会に対して『個』を大事にする生き方を応援するというもので、3年前から元日の広告で使用しています。その軸は今回も変わっていません」


<女性への強要・減点は実際に>
広告の背景には何があるのか。振り返ってみると、去年は、女性が「生きづらさ」を感じるようなさまざまな問題が明らかになりました。

広告に書かれていた、「女だから、強要される。」

財務省の事務次官が女性記者に対するセクハラ行為で辞任するなど、セクハラ問題が相次いで発覚しました。

190107huk.6.jpg被害者たちが告発する際に使った「#MeToo」は去年の「新語・流行語大賞」のトップテンにも選ばれました。
また、入試で女子受験生が不利に扱われていたことも明らかになりました。

190107huk.7.jpg東京医科大学では女子受験生の点数を一律に操作して合格者の数を抑えていたほか、ほかの大学でも不適切な入試が行われていました。
「女だから、減点される。」は、実際に行われていたのです。


<変化の1年に>

190107huk.8.jpgはあちゅうさん
今回の広告をめぐる議論について、日本でも#MeTooが広がるきっかけの1人になった、ブロガーの、はあちゅうさんに聞きました。
「私は否定派です。パイを投げられる側である女性が我慢をするイメージになっていて、パイを投げる状況への批判がない。女性が我慢するところを見せられるだけで、『で?』ってなる」
一方で、女性をめぐる社会の問題に一石を投じるような今回の広告のメッセージ自体は理解できるといいます。
「私は広告会社にいたからわかりますが、こうした賛否両論を呼ぶ可能性のある意見広告を出すのは簡単ではありません。だからネットで批判されたからといって、萎縮せずに挑戦を続けてほしい。そして、こうした広告を出す企業がもっと増えてほしいとも思っています。企業が意見を出すことは個人よりも影響力が大きいし、女性に対する態度表明になり、社会的にも意味があるからです」
広告を見たことで、過去のセクハラなど自分が受けた経験を全部思い出したような気持ちになったというはあちゅうさん。女性をめぐる社会の問題はこれからどうなっていくと思いますか、という質問に、次のように答えてくれました。
「去年は世界的に#MeTooが広がるなど、女性の生きづらさが表面化した1年でしたが、日本の社会には今も男女間の不公平さが土壌として根強く残っているため、この1年で何かが変わるとは思っていません。ただ、生きやすい社会を目指して『私も意見を言えるんだ』と女性自身が気づき始めている今、去年に続いてことしは変化の年であってほしい。そしてそれが来年、再来年へとつながり、本当の意味で社会が変わってほしいと思います」
はあちゅうさんが指摘するように、女性がさまざまな場面で「生きづらさ」を感じているのが今の実情です。

ことしが現状を変えていく前進の年になるよう、この問題を引き続き考えていきたいと思います。

投稿者:鮎合真介 | 投稿時間:15時58分

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