2019年02月18日 (月)図書館司書の"ストライキ"


※2018年12月17日にNHK News Up に掲載されました。

「ストライキ?!」最近、聞かなくなった言葉です。そのストライキを東京の練馬区の区立図書館の司書の人たちが民間委託に反対して、19日に実施するかまえです。問いかけているものは何でしょうか?

ネットワーク報道部記者 大窪奈緒子・田辺幹夫・田隈佑紀
首都圏センター記者 加藤洋

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<今月19日にストライキか>
ストライキを構えて区との交渉を続けているのは「図書館専門員」と呼ばれる非常勤の司書57人で作る労働組合です。
練馬区では2つの図書館の運営について5年後までに指定管理者制度を導入し、民間に委託する方針ですが、労働組合はこれに反対していて、交渉がまとまらなかった場合、ストライキすることを決めました。

181217tos.2.jpgストライキは「練馬図書館」で今月19日と26日のいずれも午前8時半から10時半の2時間の予定です。


<35人中32人の非常勤>
練馬図書館では館長を含めた職員合わせて35人のうち、32人が非常勤の「図書館専門員」。

181217tos.3.jpg練馬区立図書館専門員労働組合船津まゆみさん
「図書館専門員の中には20年以上続けて図書館の業務に携わった人もいて現場の貴重なノウハウを持っている。指定管理者制度の導入でそれが失われるおそれがありやむをえずストライキを決めた」

「利用者に迷惑がかからないようストを回避するために誠心誠意、組合側と交渉をしていきたい」(練馬区教育委員会)

ストライキが実施されるのか、行方はまだ見えていません。


<増える“図書館”>
実は本離れと呼ばれてますが、図書館の数は増え続けています。平成8年には全国で2396、それが平成27年には全国で3331。およそ1.4倍です。(社会教育調査報告書より)

そこで働く司書の人たちは、資料や本を選んで発注し、分類したり目録を作ったりして管理します。読書の案内や貸出業務なども行う、専門職員です。そしていま、増えている図書館を支えているのは、練馬区の図書館のように“非常勤”の司書たちです。


<支える“非常勤司書”>

181217tos.4.jpg平成8年、非常勤司書は1423人で全体の16.5%にとどまっていました。ところが図書館の数が1.4倍に増えた平成27年には非常勤の司書と指定管理者の司書と合わせて13383人と全体の70.4%に跳ね上がっています。

文部科学省では「財源が厳しい中、正職員を削って非常勤の司書に頼りながら運営を行っていることが見て取れる」と話していました。


<ただ“明確な規定はなし”>
そして、この司書、文部科学省によると図書館法で「望ましい基準」は定められていますが、人数などに明確な規定はなくそれぞれの自治体の判断にまかされています。

このあたりが非常勤の司書の人たちが雇用に不安を覚え、ストライキを考えるひとつの要素の気がします。


<広がる民間委託>
そして練馬区で議論になっている「指定管理者制度」は広がる傾向にあります。
管理運営を企業や団体に委託するもので、2003年に始まり、経費削減やサービス向上を図ろうと導入が相次ぎ、導入している公立図書館は去年4月時点で全国で536。全体の16%、6館に1館の割合になりました。


<“8割以上が満足”>

181217tos.5.jpgその指定管理者制度、広く知られることになったのが、佐賀県武雄市に2013年にオープンした図書館です。

181217tos.6.jpg民間のノウハウを活用しようと、運営管理をTSUTAYAを展開する会社に委託したのです。

館内を大幅にリニューアルし、TSUTAYAの書店やDVDレンタルコーナー、コーヒーのスターバックスも併設。コーヒーを飲みながら、本を楽しめ、私語もできると、従来の図書館のイメージを大きく変えました。

年間30日余りあった休館日も無くして年中無休としました。

その結果利用者は年間90万人と以前の20万人台から3倍以上に増え、市が行ったアンケートでも、8割以上が「満足」と回答しました。


<その一方で>
181217tos.7.jpg一方、古い資格試験対策本など読まれる見込みのない本を含む1万冊以上の古本をグループ会社などから購入するなど、市民から費用の使い方が不適切と指摘される事態も起き、運営への課題を指摘する声もあります。
181217tos.8.jpgまた別の民間企業のケースですが、茨城県守谷市では、2016年度から運営を民間に委託しましたが、その後一転する事態が起きました。

複数のスタッフが退職するなどの混乱があり、市の諮問機関はことし2月「営利企業が指定管理料の中で利益を出すためには、人件費を削減する傾向が強まり、スタッフの質の向上が難しい」「サービス向上への期待に十分答えられていない」などと答申。

来年4月から再び、自治体が直接管理運営に戻すことを決めたのです。


<専門家は…>

181217tos.9.jpg福岡女子短期大学の永利和則特任教授は、「自治体直営」と「指定管理者制度」の両方の図書館で館長を務めた経験から、練馬区での動きをこう分析しています。

「いまの図書館の運営は、非正規雇用の職員で支えられています。給料も安く、雇用も不安定です。運営が指定管理者に変わると、いまの仕事を続けたくても続けられないおそれもあるとして、問題にしていると思います」

また、指定管理者制度では契約上、自治体が直接、図書館の館長や職員に運営に関する指示を、出すことはできなくなります。

会社側に申し入れ、そこから契約に基づいて会社側が対応を検討するので、すぐには変えることができなくなるということです。

「もちろん指定管理者で運営している図書館では創意工夫で『お泊まり会』などの新しいサービスを導入するなど、直営ではなかなかできないことを進めているケースもあります。ただ指定管理者にすると行政との意思疎通に時間がかかり問題があってもすぐには戻すことができない部分もあります。これから増えていくでしょうが導入にあたってはさまざまな面を慎重に検討する必要があります」


<図書館は交流拠点>
図書館が増えているのは、単に本を貸したり資料を収集したりするだけでなく、地域の交流の場として期待されているからで、子どもの“居場所”だと打ち出す図書館もあります。

このため学習センターや自治体の支所の一角などに併設されるケースも増えています。

さまざまな機能を持つようになった図書館、それを支える人たちがやりがいを持って働き、十分な住民サービスをどうすれば提供していけるのか、図書館のあり方が各地で問われていて、練馬区の動きもその問いかけのひとつです。

投稿者:大窪奈緒子 | 投稿時間:16時11分

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