2019年01月29日 (火)少年の涙のわけは...


※2018年12月4日にNHK News Up に掲載されました。

深刻な担い手不足や人口減少に悩む自治体などにとっては、もはや外国人は“救世主”とも言える存在になっています。(詳しくは、NHK特設サイト「外国人依存ニッポン」)ところが、その外国人が急増していることで頭を悩ませる自治体も出始めています。悩みの種は、やっぱり“お金”でした。

福井放送局記者 藤田陽子
名古屋放送局記者 篠田彩
ネットワーク報道部記者 木下隆児

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<外国人の児童・生徒が増加>
“お金”の話に行く前に。

大前提として、実は日本の小中学校に通う外国人の子どもは年々増えているんです。去年5月時点で、その数7万7000人。5年前と比べて1万4000人近く増えています。

日本で働く外国人労働者が増えていることに合わせて、子どもたちも一緒に来たり日本に呼び寄せられたりして、日本で暮らすようになっているんです。

sho181204.2.jpgただ、こうした動きに合わせて、日本語の指導が必要な外国人の児童・生徒も大きく増えています。

文部科学省の調査によりますと、平成28年5月時点で、小中学校にいる日本語の指導が必要な外国人の児童・生徒は3万1000人近くに上っています。5年間で見てみると、およそ6000人(24%)も増えています。


<人件費は約15倍!?>
このうち日本語の指導が必要な外国人の児童・生徒が最も多いのが愛知県。

sho181204.3.jpg県内の小中学校に通う外国人の児童・生徒は平成28年5月の時点でおよそ1万1000人いて、そのうちの6割にあたるおよそ7000人が日本語がほとんどできないのです。

このため愛知県では平成4年度から国の予算上の支援も受けながら、外国人の子どもたちに日本語を指導するための教員を小中学校に配置していて、今年度は542人に上っているといいます。

そしてこの教員の配置に必要なのは”お金”です。人件費は、国が負担している分も含めて38億1700万円。愛知県が制度を導入した平成4年度と比べるとおよそ15倍の負担となっています。

取材した愛知県の担当者は頭を悩ませていました。

「日本語を指導する教員の人件費の多くは県が負担しているんです。県が独自に配置している教員もいますが、この人件費はすべて県の持ち出しで年々負担は増しています。外国人の子どもたちは急速に増えていて、学校現場で必要としている教員の数には間に合っていないのが実情です」(愛知県の担当者)

こうした状況は、これまでも外国人の子どもたちが多かった都市部だけではないこともわかってきました。

sho181204.4.jpg名古屋駅から新幹線と特急に揺られて北上すること1時間半。福井県越前市に来ました。街を歩くと日系ブラジル人と頻繁にすれ違います。

sho181204.5.jpg調べてみたところ、外国人の数はおよそ4300人。その大半が市内にある大手電子部品メーカーなどで働く日系ブラジル人の工場労働者でした。こうした外国人の子どもたちが急速に増えているのです。


<5人に1人が外国から来た子ども>

sho181204.6.jpg地元の武生西小学校に行ってみると、全校児童355人のうちの79人が外国人。5人に1人以上が外国から来た子どもたちでした。毎月のように新たな外国人児童が入学してきていて、増え続けているそうです。

授業を見学させてもらいました。外国から来た子どもたちの多くが、日本語を十分に理解できないため、学校では一般の授業だけではなく、特別クラスを設けています。

sho181204.7.jpgこの日の特別クラスをのぞいてみると、外国人の児童1人に対して教員1人がひらがなや数字の読み書きなど、日本語の指導にあたっていました。

こうした日本語を指導する教員だけでなく、学校では通訳などの支援スタッフを配置して、充実した指導を行えるように取り組んでいました。


<指導したいけど、人が足りない>
一方で、特別授業ではない一般の授業を見学させてもらうと、さきほどのような外国人の子どもにつきっきりの先生も通訳もいませんでした。

小学校の松澤紳校長が、実情を説明してくれました。

sho181204.8.jpg「ひらがなや数字の読み書きといった日本語の初期指導は、今は人員を確保できているので、環境を整えることができていると思います。ただ、これ以上、外国人の子どもたちが入学してくると、初期指導も苦しい状況になると予想しています。それだけでなく、継続的な指導は児童一人一人に必要になってきますが、そうした人員は現状でも不足しているんです」


<指導したいけど、負担は増える>
もう一つの悩み。それはやっぱり“お金”でした。

この小学校で外国人児童の対応にあたっている教員やスタッフは7人。このうち2人の人件費は国や県の負担ですが、残りの5人は越前市の負担です。

このため越前市では、外国人の子どもたちの増加に伴って人件費が急増していて、今年度、その額は3755万円。5年前に比べておよそ2000万円増えて倍増しているんです。

越前市の奈良俊幸市長に話を聞いてみると、これ以上の財政負担は限界だと窮状を訴えていました。

sho181204.9.jpg「この2、3年の外国人の子どもたちの増え方は急激なものがあり、教育現場では十分に対応し切れていない。一方で越前市で、このまま負担が増えることは現実的に不可能だ。国が現場にしっかりと予算措置をして、必要な教員が配置されるように国の基準を見直してほしい」


<子どもは取り残される>
学校に通っている外国人の子どもたちは、どう感じているのでしょうか。

sho181204.10.jpg小学4年生のヴィクトル・ナカギシ君(10)に話を聞くことができました。日系ブラジル人の父親が越前市の大手電子部品メーカーの工場で新たな仕事を見つけたことから、ことし6月に家族4人で来日。5か月がたち、家でも日本語の勉強を続けていますが、まだ日本語を理解するのは難しいと言います。

授業についていくことができているか聞いてみました。

「授業の内容は全然わからない。人でも機械でもいいから通訳がいてくれたらいいのに…」
話を聞いていると、突然、ヴィクトル君の目から涙があふれてきました。

sho181204.11.jpg「ブラジルが恋しいよ。ブラジルではたくさん友達がいて、いつも友達と一緒だったのに、日本ではいつもひとりぼっち…」

学校で支援を受けながら授業を受けていますが、授業についていけないだけでなく、親しい友達ができない現実にも直面していました。


<国は自治体・学校任せ>
こうした現状に、外国人の子どもの実情に詳しい愛知淑徳大学の小島祥美准教授は、国が十分な仕組み作りをしていない点を指摘しています。

sho181204.12.jpg「外国人の子どもたちがとても増加しているだけでなく、特に日本語の指導が必要な子どもたちが各地で増加している傾向にあるんです。日本語の指導が必要な子どもたちへの対応策が国として行われていないため、自治体任せになっていたり、現場の学校任せになったりしている点が非常に大きな問題になっています」


<私たちはどう向き合うか>
外国人労働者の増加に伴って、外国人の子どもたちも増えています。受け入れている地域では、負担が増える中で模索を続けていました。

sho181204.13.jpg一方で、親の事情で日本に来た子どもたちは、日本語の壁にぶつかって、取り残されたりこぼれ落ちたりするんじゃないかという不安を抱えていました。

これからも外国人が増えることが見込まれる中、彼らを受け入れる私たちの向き合い方が問われているのではないでしょうか。

投稿者:木下隆児 | 投稿時間:15時47分

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