2020年01月10日 (金)ジモト情報で生き抜く


※2019年10月18日にNHK News Up に掲載されました。

台風19号がもたらしたあまりに広く深刻な被害を伝える日々のニュース。でも、一人ひとりが生き抜くために必要なのは地元の細かな情報です。
「体育館が満員になりました(別の)中学校へ避難して下さい」
例えば、台風が近づき避難所に行こうとした時、こんな情報があれば助かります。新たな動きを取材しました。

ネットワーク報道部記者 斉藤直哉・國仲真一郎

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役場浸水の宮城県丸森町で

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「役場も浸水・人手不足・被害が広範囲ということもあり、行政からの情報がなかなか手に入りづらい状況です。こういうときこそ、個人が足と目で集めた情報を共有し、町の早期復旧を目指しましょう!」

こうした呼びかけで10月18日現在、1400人あまりが登録しているフェイスブック上のページがあります。「丸森【被災・復旧】情報共有グループ」と名付けられたページです。

“友人のお母さんを探して”

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深刻なのは、行方不明の人を探して欲しいという投稿。友人のお母さんが見つかっていないとして、服装や乗っていた車などの写真が掲載されています。

jimoto.191018.4.jpg制服を流された中学生のために地元の卒業生に古い制服の寄付を呼びかけるメッセージや、実際に通ることができた道や営業中のガソリンスタンドを写真に書き込んだ投稿もあります。

給水や炊き出し、それに物資の提供など生活に欠かせない基本的な情報はもちろんですが、地元の人たちが「これは大切」と思った内容を投稿しあっているのです。

ジモト目線で
千曲川が氾濫した長野県でもこうしたページが出来ていました。その1つが鉄橋が流されるなどの被害が出た上田市についてのページ。今月13日に立ち上げられ、500人ほどが登録しています。

jimoto.191018.5.jpg鉄道不通で代行バスを待つ人たちを伝える投稿

jimoto.191018.6.jpg堤防の復旧工事の様子を知らせる投稿写真

「行政やテレビが流す文字や地図の情報だけでなく、地元で暮らす人がその視線で実際に見た情報が必要だと感じました」。

グループを立ち上げた佐藤由里さんはこう指摘します。

代行バスの停留所の写真は、近くに住む人が見ればどこにあるか一目瞭然。堤防の工事の写真も、再び雨が降って氾濫しないか不安に感じている地元の人からすると貴重な情報なのです。

“このページなら言える”

佐藤さんは、意外な効果もあったと言います。

遠慮しがちで自分たちが受けた被害をなかなか言い出せない地元の人たち。でもこのページなら「困っていること」を書き込むことができました。

それを見た佐藤さんが現状を社会福祉協議会に知らせたところ、ボランティア派遣に必要な調査が行われることになりました。

(佐藤さん)
「これまで『荒らし』のような書き込みはなく、災害の不安を感じているみなさんの心のよりどころになることができました」

ジモト情報求める動き 東京でも

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こうした動きは、大都市・東京でも見られました。

「台風19号情報シェア用(江東区)」と題されたページもその1つです。台風が直撃する直前の今月12日の日中に作成されました。

「テレビのニュースを見ても、全国規模の情報ばかり。『江東区の情報はいつ出てくるの?自分たちが知りたいのはそこなのに』という思いがありました」

ページを立ち上げた羽立順子さんはきっかけをこう話します。

「避難所 開設してます」「満員です!」

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荒川と隅田川に挟まれ、浸水被害が懸念されていたこの地域で、台風が近づく前に関心が高まったのは避難所についての情報。

ページには、「避難所を開設してます」という紙がはられた中学校の写真が投稿されていました。

「お向かいさんにお年寄りがいるので避難を促しにいったついでに確認してきました」というメッセージも添えられていました。

利用者が実際に見た光景、これなら安心して避難所に向かえます。

jimoto.191018.9.jpg避難所の貼り紙

さらに人口が多い東京ならではの投稿もありました。

避難所に指定されていた体育館に多くの人が詰めかけ満員になったことや、まだ入ることができる別の避難所が書かれた貼り紙を写真で知らせているのです。

不安からの相談も

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こんな相談もありました。

「マンション6階強風にガラス戸がたえられなくて割れてしまうから、少し隙間を開けて風を逃すよう聞きました。本当?」

わずか5分後に書き込みがありました。

「開けない方がいいですよ」
「窓は開けてはいけませんよ」

さらに、気象情報サイトに掲載されている窓を開けてはいけない理由が書かれた記事へのリンクも貼られていました。このページは、1300人を超える人たちが登録しています。

SNS上で“臨時の町内会”
関心が集まる背景について羽立さんは、「つながっていることへの安心感があるのではないか」と指摘します。

jimoto.191018.11.jpg(羽立順子さん)
「東京は、隣に住んでいる人も分からない、近くに知っている人も少ないというケースが多い。そんな中で災害時に同じ不安や悩みを抱えている人がいる、相談できる人がいるという安心感につながったことも大きかったのではないでしょうか」

江東区では、世帯数がこの10年で5万以上増加する一方で、自治会への加入率が60%を割り込んでいます。

こうした中でSNSは、同じ場所に暮らしていても知らない人たちをつなげ、“臨時の町内会”のような役割を果たしていたのです。

求められる情報とは
冒頭で紹介した宮城県丸森町のページを立ち上げた1人の中原絵梨香さんは、▽情報源が不確かなものは載せない、▽日時を明記した上で情報を発信することなど、一定のルールを守ることも必要だとした上で次のように語ります。

(中原絵梨香さん)
「行政では安否の問い合わせなど個別のケースにすべて対応するのは難しいが、SNSであれば個人間で思いやりあうことができるのが強みだと感じている。被災者がいまの自分自身の状況をほかの人に知ってもらうことで、ボランティアなど支援をしたい人もその地域に入りやすくなる」

地域の人たちが暮らしに欠かせない情報をみずから共有する新たな動き。
「本当に必要とされる情報は何なのか」私たちメディアにも問われているように思えてなりませんでした。

投稿者:斉藤直哉 | 投稿時間:11時41分

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