2018年10月31日 (水)暗闇の街 救った車


※2018年9月19日にNHK News Up に掲載されました。

街から明かりが消えた日、真っ暗になった家庭を救った自動車がありました。地震で街中も家庭も暗闇に閉ざされた時、それを救う手段としてある自動車が注目されています。

ネットワーク報道部記者 大石理恵・松井晋太郎・田隈佑紀・國仲真一郎

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<停電時の“救世主”>
最大で震度7の揺れがあった今回の北海道の地震。北海道全域で暗闇に包まれる史上初の「ブラックアウト」。多くの地域で電気が復旧するのに2日間を要しました。家も真っ暗、連絡をとる携帯電話の充電もできない。札幌の知り合いに聞くとその時に救世主となったものがあったそうです。


<車の電源でしのぐ>
それがハイブリッドカー、電気モーターとエンジンを組み合わせて動く車です。

kur180921.2.jpg知人は、ハイブリッドカーのコンセントから延長コードを使って家まで電源を引っ張ったことで、冷蔵庫の食材を傷めずにすんだり、ランプ、携帯電話の充電用として使ったりしたのです。

「食料が確保しづらかった中、冷蔵庫の中の食材でしのぐことができた。災害を意識して車を買ったわけではなかったが、本当に助かった」


<JAFも実験>
「災害時に車を電源に」。それがどのくらい可能なのか。JAF=日本自動車連盟もことし2月に実験を行っていました。用意した車は、ガソリンで走る一般的な車、ハイブリッド車、それに電気自動車など。

kur180921.3.jpgコンセントがついていない一般的な車は、シガーソケットを電源に変換する「インバーター」を使い、それぞれでスマートフォンの充電や電球、食事用のホットプレートなど、7種類の家電製品がどれくらい使えるかを確かめました。


<電気自動車のパワー>
その結果、一般的な車では安定的に使えるのがスマートフォンの充電やライトなど消費電力の少ない製品に限られました。

「ガソリン車のバッテリーでは消費電力の大きな家電製品は、たとえエンジンをつけていても長時間使うことは難しい」(JAFの担当者)

kur180921.4.jpg一方でハイブリッド車や電気自動車は、消費電力の高い電気ストーブやホットプレートも使うことができました。特に電気自動車は心強く、1、2リットル電気ポットで何回お湯を沸かせるかという実験では、エンジンを切った状態でハイブリッド車が1回だったのに対し、電気自動車では30回沸かしてもまだ3分の2近いバッテリーが残っていたそうです。

「ふだんからフル充電をこころがけてもらえば、もしもの時に電気自動車はかなり役立ちそうです」(JAFの担当者)


<あなたの自動車 求めます>
自治体でも災害時の停電対策に電気自動車を活用する動きが始まっています。人口が73万人を超える東京・練馬区。首都直下型地震では、最大で7万6000人余りが避難すると言われていて、区内の小中学校に避難所を開設します。

kur180921.5.jpgその練馬区がことし6月からスタートさせたのは「災害時協力登録車制度」。電気自動車などを持っている区民に呼びかけ、災害などで停電した時に車の電源を避難所で使えるよう車の登録と協力を求めたのです。これまでに4台の登録があるそうです。


<さらに、さらに>

kur180921.6.jpgさらに電気を外部に供給できる車を増やそうと、区のパトロールカーを電気自動車に替えるなどこれまでに11台配備しました。また、今月6日には、電気自動車を販売する区内のディーラーに声をかけ試乗用の電気自動車を災害時に無償で貸してもらう協定も結びました。


<ガソリンは制限が>
区の避難所には自家発電機を用意していてガソリンなどが燃料になります。しかし、危険物にあたるガソリンは、特別に免許を持たずに保管できる量は、40リットル未満。区の想定では、1台の自家発電機で使い続けた場合、24時間で使い切ってしまいます。

一方、電気自動車1台をフル充電した場合、使いみちや季節によりますが、避難所1か所で最大で3日はしのげると考えています。停電時にはまずガソリンなどを使った発電機でしのぎ、さらに停電が続く場合は電気自動車を活用したい考えです。

「区内には260台から300台ほどの電気自動車があると見込んでいます。停電時に役に立つということをもっと多くの人に知ってもらい、登録を増やしていきたい」(練馬区役所環境課の瀧真人さん)


<エレベーター100往復>

kur180921.7.jpgまたマンションが多い都市部では、大規模な停電が起きた時、高層階に取り残された住民の避難や、水や物資の輸送が課題となります。そんな中、電気自動車の電力を使ってタワーマンションのエレベーターを動かす実験も行われました。

場所は東京・中央区のタワーマンション。ことし8月、フル充電した電気自動車から変換装置を経由して配電設備にケーブルをつなぎ、エレベーターを動かしてみました。すると電気自動車1台で43階建てのマンションのエレベーターを100回往復させることができたそうです。


<そして船も…>
実験を行った三井住友建設は、将来はこうした仕組みをマンションのカーシェアリングと組み合わせて導入したいそうです。ふだんは電気自動車を買い物やレジャーに使ってもらい、災害時にはエレベーターなどを動かすことに活用する狙いです。

kur180921.8.jpgさらに電気自動車と「船」を組み合わせることで、停電対策はさらに充実できると考えています。

「今回の実験には東京海洋大学も参加してもらいました。船で電気を作って岸壁に係留し、電気自動車に充電するという構想があるんです」(三井住友建設の広報室長・平田豊彦さん)

船は電気が必要な設備が多く、それに対応できるだけの発電機を備えています。それを活用して電気自動車の充電に使うことで、マンションだけでなく病院や避難所などの停電対策をさらに充実させる狙いです。


<停電でも営業した店は>

kur180921.9.jpg今回の北海道の地震。北海道を拠点とするコンビニエンスストア「セイコーマート」は、すべての店舗で、停電の際に、電気自動車にかかわらず、車から電源を確保してレジを動かせるようにしていて、ほとんどの店舗で営業を続けることができ、被災者に食料などを販売することができました。

当たり前に手に入ると思っていたものが、一瞬で供給されなくなることがある、災害という事態。「停電時に電源をどう確保するのか」。意外と忘れがちな策を日頃から考えておくことがやはり大切なようです。

投稿者:大石理恵 | 投稿時間:14時10分

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