2018年08月17日 (金)断水生活、どうしのぐ?
※2018年7月12日にNHK News Up に掲載されました。
西日本を中心とした豪雨による影響で広い範囲で断水が起きています。
「断水の影響で水がなく、本当に困っています」
「水…水…水…水を分けてください」
ネット上にあふれる切実な声。
給水所が遠く、移動手段がなくて困っている人。
衛生面を心配する声もあります。
水が手に入りにくい中で、どう生活すればよいのか。
被災した方が置かれた状況によって用意できる物に違いはありますが、断水生活を乗り切るための知恵をまとめました。
ネットワーク報道部記者 玉木香代子・宮脇麻樹
<23万5000戸が断水>
広島県呉市で9万3279戸、尾道市で5万8647戸…。
記録的な豪雨の影響で各地の水道に被害が出ていて、厚生労働省によりますと、12日正午現在で、合わせておよそ23万5000戸が断水しています。
各地で自治体や自衛隊が給水支援をしていますが、ネット上では窮状を訴える声があふれています。
「給水に行きたくても、ポリタンクがどこにも売ってないんじゃけど」
「大変高齢者が多い地域なので水を送りたいが、配送は受付中止…うーん。困った…」
「買い出し等に動けない人達もたくさんいます。助けてください。水が足りません」
あまりの被害の大きさに、復旧のめどが立っていない地域も少なくありません。
豪雨災害に詳しい危機管理教育研究所の講師で、長野県飯田市で危機管理を担当している後藤武志さんは、「川の水が濁って取水できない事態の改善や、壊れた取水設備や配管の修復には時間がかかるため、豪雨災害では、過去に復旧まで1週間から10日以上かかったケースもあった」と話しています。
断水のなか、どう暮らしていけばいいのか、調べてみました。
<給水される水を運ぶ方法>
給水所から水をどう運ぶかです。
水を運ぶタンクがない場合は、段ボールと未使用のごみ袋を利用して運ぶことができます。
1.
箱の底と側面を、水の重さで壊れないように、粘着テープでしっかりと補強します。
2.
45リットル程度のごみ袋を2枚用意し、写真のようにそれぞれが重ならないように箱の中にセットします。
3.
袋に7分目から8分目まで水を入れて、こぼれないように袋の口を縛ります。
4.
バケツで水を運ぶ際も、中にポリ袋や未使用のゴミ袋をかぶせて水を入れ、口を縛って運べば、ほこりも入らず衛生的ですし、水がこぼれることなく運ぶことができます。運ぶ際はとても重くなるので、もしあれば、台車などを使うと便利です。
<ペットボトルで節水>
貴重な水を節約しながら使うことも重要です。
ペットボトルを使った方法をご紹介します。
1.
空のペットボトルと画びょうを用意します。
2.
ペットボトルのふたを開けて画びょうを刺して穴を開けます。
3.
ペットボトルに水を入れ、逆さにして手でボトルのおなかを押すと水が出ます。
4.
押すのをやめると水が出なくなるので、手洗いの時などに節水できます。
5.
画びょうで開ける穴を増やせば出る水も増え、穴の数で水の量を調整することもできます。
<洗い物を出さない調理>
食事を作る時には、洗い物を出さないよう工夫することで水を節約することができます。
食べる時に使う食器にも、あらかじめアルミホイルを敷いてから料理を盛ります。
食べたあとはアルミホイルを捨てるだけで皿を洗う必要がなく、水の節約につながります。
<口腔ケアが命を守る>
また、慣れない避難生活では、ストレスから抵抗力が弱まり、虫歯や歯周病が悪化しやすくなります。
特に高齢者の場合、口の中の汚れが原因で、誤えん性の肺炎にかかりやすくなるおそれがあります。水が手に入りにくい環境では、なおさらリスクは高まります。
日本歯科医師会では、避難生活でも、できるだけ口の中をきれいにするよう呼びかけています。
1.
水が少ない場合、歯ブラシを少しぬらして歯を磨き、磨いたあとは歯ブラシをティッシュで拭き取ります。うがいは水を少しずつ口に含み、2、3回に分けて行います。
歯磨きができないときには、少量の水やお茶を口に含み、うがいをしましょう。
うがい薬や液体歯磨きで行うと、より効果があるということです。
ハンカチやティッシュで歯の汚れを拭き取るのも効果があるということです。
2.
水がない場合でも、できることがあります。
慣れない環境などで強いストレスを受け、唾液が出にくくなることがありますが、唾液は口の中をきれいに保つ働きがあるため、唾液を出す工夫をしましょう。
よくかんで食べるようにするほか、耳の下やほお、あごの下を手でもんだりあたためると、唾液が出やすくなります。
また、ガムをかむことで唾液を出す効果もあります。
3.
入れ歯もできれば毎食後、少なくとも1日1回は外して、歯ブラシで磨いたり、ウェットティッシュやガーゼで拭いたりしましょう。
<風呂に入れない時>
お風呂に入れない時にどうするか。
危機管理の専門家の後藤さんは体をふく方法を薦めています。
コップ1杯のお湯をポリ袋に入れて、フェースタオルをしみこませると必要最小限の水でホットタオルができるので汗をかきやすい部分を中心に体をふくと一時しのぎになるそうです。ウエットティッシュも活用できます。
<飲料水と生活用水を分けて>
給水された水は、2~3日ためておくと、塩素が蒸発していきます。猛暑の中では、雑菌が増える可能性が高まります。
ある程度、ためておいた水は飲料用ではなく、洗濯などの生活用水に使うようにしましょう。
<井戸水は? 生活用水にも>
地域によっては、井戸水があるところもあると思います。
飲み水として使うには、検査が必要ですが、後藤さんは「むやみに飲み水として使うのは避けてほしいけれど、洗濯など生活用水として活用するには有効だ」と話していました。
<生きていくための飲料水は欠かせない!>
水が手に入りにくくても、生きていくために必要なのは言うまでもありません。
後藤さんは「水は生きていくための基本中の基本。特にこの暑い時期は、日中も寝ている間も体から水分が蒸発していることを忘れないでほしい」と強調しています。
体から水分が奪われると熱中症だけでなく、血の巡りが悪くなり、脳梗塞などを引き起こして命に危険が及ぶことがあります。
こまめに水分をとることが欠かせません。
「どこで何時から給水できるのか」
「車で運搬ができず、水の確保がままならないお年寄りが地域にいないか」
非常事態が続く中、地域の住民どうしで情報を共有し、助け合うことが大切になります。
投稿者:玉木香代子 | 投稿時間:15時07分