2011年11月28日 (月)歯の将来予測で予防(山形・広池記者)


きょうのテーマは「歯の将来予測」についてです。
歯を失う原因となる虫歯や歯周病ですが、自分の歯が、将来どれぐらいの確率で虫歯や歯周病になるかを予測して、積極的に予防に努めてもらおうという取り組みです。

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【予防の第一人者】
5年前からこの予測を診療に取り入れているのが、予防歯科の第一人者として知られる山形県酒田市の歯科医師の熊谷崇さん(69)です。予防歯科は、歯ブラシでは届きにくい奥歯や歯と歯の隙間を歯科衛生士に清掃してもらったり、歯ぐきの状態を定期的に調べたりして、歯周病や虫歯になるリスクを減らす取り組みで、歯の利用費が高額とされる欧米では主流となっています。
しかし、私も含めてほとんどの人は、歯が痛むなどの症状が出ないと歯医者を利用しようと思いません。
そこで、熊谷さんは、何年後に何本の歯を失うことになるか具体的に歯の将来の姿を予測して、患者に予防に取り組む意識を高めてもらうねらいでこの取り組みを始めました。

【歯の将来予測とは】
では、いったいどのように歯の将来を予測するのでしょうか。
取材した酒田市に住む32歳の男性のケースです。男性は歯の詰め物が取れたため、熊谷さんの歯科医院を訪れましたが、治療の前に行われたのが、歯や口の中がどんな状態かを調べる徹底的な検査です。
まず口こう内写真。歯のかみ合わせを調べるためさまざまな角度から撮影し、撮影される写真の枚数は13枚にも なりました。

1125C.jpg続いて、X線による検査です。
歯を支える骨は十分あるか、細菌が入り込む歯と歯ぐきの隙間はどんな状態か、肉眼では分からない部分を詳しく調べます。
さらに、検査を求める患者には唾液中の細菌の数などを調べる唾液検査も行います。こうした検査だけで1時間はかかります。ただ、実際の診療では歯石の除去などを行いながら、検査は4、5回に分けて行われます。そして、担当の歯科医師が検査データを専用のプログラムに入力すると、歯周病と虫歯それぞれの将来予測が示されました。

1125D.jpg【50代前に歯を4本失うおそれが・・・】
まず、歯周病の将来予測です。男性は炎症による出血のほか、歯を支える骨の欠損も重度と診断されました。また、歯こうの量も「非常にたくさん」と分析され、歯周病の診断は5段階で最も悪い結果と診断されました。特に左下の歯と歯ぐきの隙間は7ミリと深く、今後、歯周病が悪化するおそれがあり、男性は早ければ 20年後に失うおそれがあると予測されたのです。

1125B.jpg続いて虫歯の将来予測です。以前、別の歯科医院で治療を受けた右の上下の歯については、かみ合わせが悪いうえ、唾液に含まれる細菌の量も多いことから、虫歯になる可能性は94%と予測されました。
男性は、結果を分析した歯科医師から、将来、歯を失う可能性について、 「おそらく50代、あるいはもっと早い時期に今より4本歯を失う可能性が高い」と説明を受けました。
詰め物をかぶせてもらおうと訪れた男性にとっては、予想外の厳しい結果でしたが、男性は、予防に取り組む意識が高まり、現在、歯周病のリスクを減らすため、3か月に1回のペースで熊谷さんの歯科医院に通院しているということです。

1125A.jpg【どうやって予測するのか】
ただ、こうした歯の将来予測、どの歯科医院でもできるわけではありません。熊谷さんの歯科医院が予測に使っているのは、アメリカで開発された歯周病リスクを診断するプログラムと、虫歯の危険性を予測するカリオグラムという診断手法です。いずれも患者の膨大な臨床データを基に作られたもので、どの歯科医院でも利用することはできます。
しかし、熊谷さんは、コンピューターで計算された結果よりもさらに高い精度の予測を行うため、31年間に蓄積した自分の患者のカルテや資料の分析を行ってきました。その数はおよそ2万5000人分に上り、熊谷さんは「過去の状態とその後の変化を分析、検証することで、患者の歯が将来どうなるか予測できるようになった」と話しています。

【目標は“市民の歯を世界一健康に”】
厚生労働省の調査では、50歳前後から70歳前後にかけて、平均で6本の歯を失うという結果が出ていますが、熊谷さんの歯科医院で予防のためのケアを受けている同じ年代の人が失った歯の数は平均2本と、予防の効果は出ています。
酒田市では、予防に取り組む人が徐々に増え、今では人口の1割を超えるおよ そ1万5000人がこの歯科医院でケアを受けています。熊谷さんは、予防の取り組みをさらに広げようと、月に一度、一般の人を対象にした研修会を開き、自分の歯を守ることの大切さを訴えています。
熊谷さんは「将来、市民の半数が予防のためのケアを受けるようになり、酒田市民の歯が世界一健康になることを目標にしたい」と話しています。

1125G.jpg【取材後記】
取材した私も、小さい頃から、虫歯になると歯医者に通っては削って詰める治療を繰り返してきました。神経を取ったり、銀歯をかぶせたりした歯も多く、熊谷さんからは、喫煙する30代男性の典型的な口の状態で、今のうちに真剣に考えないと、50代、60代で多くの歯を失うと診断されました。
私自身、歯は悪くなってから治療するものと考えていたため、治療を繰り返すほど自分の歯を失ってしまうという事実に驚きと不安を感じ、今回のリポートで、予防の大切さをより多くの人に伝えたいと思いました。
(山形放送局記者・広池健大)

投稿者:らいふちゃん | 投稿時間:06時00分

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