2011年11月18日 (金)糖尿病予防と歯周病治療(徳島・辻記者)


最近の研究で全身のさまざまな病気との関連が分かってきた歯周病。その中でも特に強い関連が指摘されているのが糖尿病です。11月9日のブログでもお伝えしましたが、歯周病と糖尿病は、お互いがお互いを悪化させる関係にあります。

糖尿病患者の数は、予備群の人も含めると全国で2000万人余りに上ると言われています。悪化すると、失明や足の切断、それに人工透析などにつながる深刻な合併症を引き起こします。

糖尿病による死亡率が全国で最も高い状態が長年続いている徳島県では、地域を挙げての対策が進められています。その中で、歯周病との関係に着目して、歯科医師と医師が連携し、成果を挙げている取り組みをご紹介します。

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【歯周病の治療で血糖値改善】
徳島県阿南市に住む73歳の男性は、4年前に歯周病と診断されて以来、定期的に歯科医院に通い、歯周病のケアを続けています。この男性が歯周病の治療を始めたきっかけは、市が行う特定健診で受け取った1枚の連絡票でした。
特定健診は、生活習慣病を予防するためのいわゆる“メタボ健診です”。阿南市ではこの際の血糖値に着目し、血糖値が一定の値以上だった人に歯科の受診を促す連絡票を渡しています。歯周病を治療することで血糖値を改善するのがねらいで、市は糖尿病の治療にかかる医療費の抑制にもつながると期待しています。

糖尿病の予備群と診断された男性は、この連絡票で歯科を受診し、歯周病が見つかりました。そして、歯こうや歯石を取り除く治療を続けた結果、歯周病の進行度を示す数値は、最も悪い4から3に改善し、糖尿病の目安になる数値もやや下がって安定した状態が続いています。

1118F.jpgさらに、男性は、歯周病の治療をきっかけに健康に対する意識が変わり、食事の量を計算して、食べ過ぎないよう注意するようになったり、これまで寝る前に1回だった歯磨きを毎食後に時間をかけて行うようになったりしたといいます。

1118C.jpgこれまでほとんど歯医者に行くことはなかったという男性は「市の健診をきっかけに歯周病治療に取り組んでいなかったら、糖尿病予備群から本当の糖尿病になっていたと思う」と話しています。
この男性のように、連絡票をきっかけに歯周病の治療を続けた人のほぼ半数で血糖値や歯周病が改善しています。

【より多くの人に治療を受けてもらうために】
取り組みが成果を挙げる一方で課題もあります。
その一つが特定健診の受診率の低さです。阿南市の受診率は28%と全国平均を下回っています。阿南市では少しでも多くの人に健診を受けてもらおうと、保健師が未受診の人に電話をかけるなどして直接受診を呼びかけています。
さらに、取り組みの効果を上げる方法として、地元の歯科医師や医師などが現在検討しているのが、医科から歯科に患者を送る仕組み作りです。血糖値の高い人を歯周病の治療に結びつけるだけでなく、歯周病の患者も糖尿病治療につなげようというのです。

1118E.jpg今のところ、歯科医院に血糖値の測定器を置いたり、歯周病患者に内科の受診を促す連絡票を渡したりする案が出されています。

1118B.jpg取り組みの中心になっている徳島県歯科医師会の岡本好史理事は
「歯科と医科双方から患者にアプローチして互いに患者を紹介し合うことで、より改善効果を高めることができる」と話していて、さらなる連携強化の必要性を訴えています。

1118D.jpgこうした歯科医師と医師が連携して歯周病や糖尿病の改善を進めていこうという取り組みは、全国的に見ても、まだ一部の歯科医師や医師の間で行われているだけです。徳島のように行政も一緒になって連携のシステムが確立されているケースはほとんどありません。

糖尿病も歯周病も自覚症状がなく、気づいたときには手遅れというケースも少なくありません。私は、これまで足の切断や人工透析に至った糖尿病患者を取材する中で、「もっと早くからまじめに治療に取り組んでいればよかった」という後悔の声を多く聞きました。また、歯を失うと食事を楽しむことができなくなるだけでなく、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。

歯周病と言われたら、糖尿病の可能性も疑ってみる。また、糖尿病の人は歯のケアにも取り組む。
今回の取材で、それぞれが高い意識をもって取り組む必要性を改めて感じました。
(徳島放送局記者・辻英志朗)

投稿者:らいふちゃん | 投稿時間:06時00分

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