実践リポート

  • 特別支援

「しぜんとあそぼ」+教師の自作ビデオ

大津市幼稚園放送・情報教育

大津市では教育センターによる教科領域別の研究部会があり、幼稚園・小学校・中学校の教師が年間4~5回、自主的に研修を深め、教師間の学び合いに重点をあて保育や授業改善にいかしています。「幼稚園放送・情報教育部会」では番組視聴を通じて「幼児の生活が豊かになる」保育実践の交流、ビデオ、カメラ、パソコンを有効に活用した情報発信の工夫や教師自身のスキルアップを行い、保育の質の向上を目指しています。部会の取り組みや実践事例の一端から学んだことを紹介します。
※この実践および所属は、2015年度のものです。

しぜんとあそぼ【対象】幼児保育

しぜんとあそぼ

この番組は、単なる自然観察にとどまらず、身近な生きものの生態をじっくり見ていくことで、自然の不思議や命の輝きを感じられるよう内容を構成しています。自然と縁遠くなったといわれる子どもたちが、生きものに共感し、優しい心をはぐくんでくれることをねらいとしています。

番組ホームページへ

活用のねらい

部会では放送を通して子どもの生活が豊かになる事を願い、季節や時期、遊びの様子など、子どもの実態に応じてタイムリーに視聴を行うようにしています。そのためには教師が事前に番組を録画したものを教材研究した上で、子どもの姿に合った番組を意図的に選び、保育に取り入れています。子ども達と視聴を楽しみながら視聴記録をとり、子ども達の反応や興味に教師の願いも組み込みながら、その後の保育を展開するようにしています。また友達と一緒に視聴をすることで得た共有体験を生かすようにしています。

保育の様子 子どもの変容

<実践事例1 『しぜんとあそぼ もりあおがえる』5歳児>

長等公園で見つけたもりあおがえるの卵

番組「もりあおがえる」を視聴

園外保育で地域の公園に出かけたとき偶然、もりあおがえるの卵とおたまじゃくしを見つけた子ども達。
珍しいかえるであることや「もりあおがえる」という名前は知識では知っているものの実際のかえるの姿は見ておらず、卵がどのように産み付けられたのか、おたまじゃくしになる様子や生態など知らないことばかりです。

卵を見つけた実体験と照らし合わせながら興味を広げてほしいと願い、早速しぜんとあそぼ・もりあおがえるの視聴を行いました。

かえるの吸盤や卵、捕食シーンなど、近くに寄らなければ見えない部分や長時間観察しなければ見られない場面を映像で見ることができ、もりあおがえるをより身近に感じることができました。

取り組みを通して自分たちの住んでいる地域の豊かな自然を知り興味を持ったり、地域を愛する気持ちや、命を大切にする心が芽生えるきっかけになりました。

<実践事例2 いきものと友達になろう『しぜんとあそぼ にわのいきもの』5歳児>

進級当初、だんごむしを飼いたい子どもがいる一方で、生き物への関心が薄く「虫って噛むから怖い」と怖がったりする姿が見られました。
そこで生き物好きな子ども達の姿が学級で広まるよう保育室でだんごむしやおたまじゃくしなどの飼育を始めました。怖さを感じていた子ども達も近寄って見たり「かわいいな」と親しみを感じたりする姿が見られるようになってきました。

そこで子ども達が「もっと知りたい、見つけたい」という好奇心や探究心をより膨らませることができるよう、しぜんとあそぼ・にわのいきものの視聴を取り入れることにしました。
子ども達がよく知っている虫たちが登場し、暮らしの様子を見ることができました。

視聴以降「ここにいるかもしれない」と予測して園庭を探したり、見聞きしたことをもとに友達と探したりする姿が見られました。 また初めて見つけた生き物にも好奇心を持つようになりました。畑に積極的に出かけ生き物や草花にふれる機会を作っていくことで、子どもの気持ちと自然とがつながっていくようになりました。

ビデオ視聴をすることで子ども達の生き物への親しみや「なぜそうなっているのか」を探りたい気持ちが膨らみ、ビデオ視聴がいかされていることがわかりました。

<実践事例3 教師による自作ビデオ かいこのまゆ作り 5歳児>

教師による「かいこ」の自作ビデオから

クラスで水族館を開いて他のクラスを招待 

水族館遊びをした後、絵画で表現

進級当初、戸惑いや不安があり遊び出しにくかったAくん。生き物が大好きで、幼稚園にかいこを持ってきてくれました。 毎日世話をしながら、かいこが大きくなり繭を作ることを楽しみにしていました。

ある朝、登園すると2匹のかいこが繭を作っていて驚きました。 しかし本当にこの繭の中にかいこがいるのか首をかしげる姿が見られました。 確かめようにも繭作りは夜に行われるため、子ども達が見ることはできません。

そこで実際に繭を作っている様子を見ることができるようにビデオ録画をすることにしました。 15時間の繭作りを時折、実況中継しながら録画し15分ほどに編集して子ども達に見せることにしました。 実際にかいこが糸を紡いで繭を作っていく姿を見てAくんだけでなく、クラスの子ども達みんながかいこのすごさに驚きました。

そして「Aくん、かいこ持ってきてくれてありがとう!」「Aくん、すごいな!」とかいこを持ってきてくれたAくんに声を掛けていきました。

その日の降園時、Aくんがそっと「小さい組さんにも教えてあげようよ!」と言いました。 それを聞いたまわりの子ども達も「それいいな!」「そうしよう!」とノリノリになりました。

そして保育室で飼っているかたつむりやかえる、だんごむし、ザリガニたちを近くで見せてあげようと保育室を水族館にする計画が立ち上がりました。 翌日、年少児がわかりやすいように看板を書いたり、必要なものを子ども達が考えて作ったり、案内係や説明係と役割を考えてAくんを中心に活動が展開されていきました。

Aくんはかいこのコーナーを中心に年少児の手にそっとかいこを乗せてあげたり、何を食べているのか教えてあげたりする姿が見られ、それ以降、様々な遊びの中でも少しずつ意欲的になっていく姿が見られるようになりました。

実践を振り返って

部会ではビデオ視聴をしたときの幼児の姿を記録した事例などを持ち寄って話し合っています。保育に視聴覚教材を取り入れた数多くの実践を話し合う中で、新たなポイントを3つ見出すことができました。

  1. 番組視聴の様子(年長児)

    発達段階での興味の持ち方や映像の捉え方の違い
    4歳児はかたつむりのつのが出てくると「うわ~、出てきた~!」と動きに驚いたり、だんごむしになりきりなど画面の生き物の動きに反応して、体で表現したり感覚で楽しんだりする姿が見られました。一方、5歳児はアリがどのようにして巣にえさを入れるのかを見ながら応援したり、かたつむりが昔は水の中に住む生き物だったとわかって「だから、雨が降ったらお散歩に出てくるんや」と気付き友達とつぶやきあったり、虫の動きの細かい部分にも注目して見ることが出来、好奇心を満足させている姿が見られました。
    このことから発達段階によってビデオ視聴を通した捉えた方に違いがあることがわかります。
  2. 科学的な思考の芽生えとの結びつき
    視聴の中でおたまじゃくしの手が生えて、何日後という描写が出てきました。クラスで飼っているおたまじゃくしも、同じようになるだろうか?と子ども達自身が実際に数えて見られるよう生き物カレンダーを掲示してみました。すると子ども達はカレンダーの印を見ながら友達と日数を数えたり、一匹一匹のおたまじゃくしの成長の違いに気づいたりしていきました。またかたつむりの映像で見た口の動きが見えるよう、透明なシートを貼ったケースを用意しました。今までには気付かなかった細かな動きに注目し、友達とじっくり観察する姿が見られました。かたつむりが細い枝を渡るシーンに釘付けになっていた様子から、遊びの中で試せるように糸や棒を用意しました。太さや長さなど友達と考えた事を試しあうことで、映像で見たことが実体験と結びついていきました。番組の中で「不思議だな」「おもしろいな」と感じたことを実際に試せる環境を作っていくことは、科学的な思考の芽生えにつながっていくのではと考えています。
  3. 友達との視聴体験から、共有認識を通しての仲間関係作り
    友達と同じ番組を視聴することでイメージが共有できます。生き物を観察するときにも、テレビで見た映像との比較を友達と共感しあうことができたり、共通の話題で話し合うことができたりします。仲間と一緒だからこそより探究心が生まれ、試行錯誤を繰り返すことが出来ると捉え、視聴を通して共通体験をすることが“仲間をつなぐ”ことにつながり実体験での深まりにつながるのではないかと考えました。

部会で番組を見て番組研究をしているところ

部会で実践事例を持ち寄り研修

事例研究による教師の学びあいより、意図したビデオ視聴が子ども達の生活に潤いや豊かさをもたらす機会にいかせることがわかりました。 映像を通して実生活では見ることが難しい場面や生き物の姿をクローズアップして、生き物の視点に立ってみることができます。 それは見つけたり飼育したり、視聴以前に何らかの形で触れている生き物のビデオ視聴だからこそ自分たちの体験と結びつき、より親しみや愛着を持つきっかけとなり、気持ちを寄り添わせていくことができるのだと考えます。

また心が寄り添えたことで、その経験が身体・絵画・言葉などでの表現にも表れていきます。 そして映像ならではの細やかさやインパクト、鮮明な動きを見ることで、生き物の生態や体の特徴への気付き、動きのおもしろさの発見など、子ども達が「すごいな!」「不思議だな」と感じることが科学的な思考の芽生えにもつながっていくことを実感しました。

今回は主に『しぜんとあそぼ』の活用から実践を振り返りましたが、『ノージーのひらめき工房』や『ミミクリーズ』など他の番組も子ども達の生活にあわせながら活用しています。 様々な事例研究を通し、他園の取り組みを学びあう機会があることで部会員同士の刺激となり、保育改善や指導法の工夫につながっています。

また視聴覚教材は新しい創意工夫の余地が大きく、保育の幅を広げることが大いに期待できます。部会で協議を進める中で、視聴したり機器を活用することが保育を豊かにするのではなく、教師自身が何を子ども達に気付かせたいのか、視点やねらいを焦点化することが大切であることを共通理解しました。

視聴が目的にならないように留意し、指導の過程の中でどのように活用していくのか、保育の構想を練ることが教師の資質向上につながります。なにより事例を話し合う中で何気なく行っていた保育の営みに込められている「教師の願い」が読み解かれ鮮明になっていくことは、保育のおもしろさを再確認することとなりました。

今後は特別支援教育にもかかわって視聴覚教材の開発にも取り組んでいきたいと思っています。

堀田 博史

『しぜんとあそぼ』を活用した清水先生の実践は・・・ 大津市では、幼稚園放送・情報教育部会を設立して、放送・視聴覚教材を効果的に活用すべき研究を進められています。部会では、「・・・季節や時期、遊びの様子など、子どもの実態に応じてタイムリーに視聴を行うようにしています」と“タイムリー”な活用を心がけているのも、本実践の特徴のひとつです。教師の教材研究の奥深さにより、実態に応じた効果的な教材が選び出されていることでしょう。成果として、科学的な思考の芽生えと結びつきをあげられています。芽生えたものを“結びつける”具体的な援助を、今後他園でも共有できるように報告いただけることを期待しています。(堀田 博史)

ページの先頭へ