実践リポート

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「しぜんとあそぼ」で自然の不思議さと命の輝きを感じてほしい!

つぼみ保育園 園長

角 成一郎 熊本県 つぼみ保育園 園長

さまざまな身近な生きものの生態をじっくり見ることができる『しぜんとあそぼ』。映像の世界は実体験できないものを子ども達にたくさん伝えてくれます。視聴中の子どものまなざしや表情、しぐさは、まるで自分が映像の中に入り込んでいるようです。図鑑などの画像には表れない、動画だからこそ伝わる感動や驚きがあります。小さくて見えないミクロの世界や時間の短縮によるわかりやすい変化など、とても発見が多い番組です。
※この実践および所属は、2015年度のものです。

しぜんとあそぼ【対象】幼児保育

しぜんとあそぼ

この番組は、単なる自然観察にとどまらず、身近な生きものの生態をじっくり見ていくことで、自然の不思議や命の輝きを感じられるよう内容を構成しています。自然と縁遠くなったといわれる子どもたちが、生きものに共感し、優しい心をはぐくんでくれることをねらいとしています。

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活用のねらい

子どもは昆虫などをよく捕まえて来ます。また花などの植物も摘んできます。それは子ども自身が興味を持った証で素晴らしい出来事だと思います。多くの園では、幾種類かの生きものを飼っていたり、植物を育てたりしているでしょう。子どもが、直接それらに触れ合う体験はとても大切です。関心の強い子どもは、よく観察しており、教師の気付かない変化まで知っている時があるくらいです。しかし、時折昆虫を捕まえては遊ぶうちに死なせてしまったり、草花をむやみに摘んで枯らしてしまったりということもあります。

本番組の意図である生きものの生態から学ぶ、自然の不思議さや命の輝きを、友だちと共有し、言葉で伝え合い、いろいろな形で表現し、探究心の芽生えや思いやりの心の育みになればと考えております。

保育の様子

本番組は、年長児で選択することが多く、継続的に視聴しています。視聴できない日などは録画して期日をずらし視聴することもありますが、必ずでもなく、無理しない程度です。子どもに受けが良いのは、やはり知っている生きもので、バッタやアメンボ、カタツムリ、ホタル、ダンゴムシ、ザリガニなど。時にはタンポポなどの植物が放映されるので、園外保育で散歩時に園周辺の草花を図鑑で調べて関心を高めています。

今回のレポートの写真はタイトル『ざりがに』を視聴した時のものですが、視聴中の子どものつぶやきが多かった場面は、まずタイトルが出ると「ザリガニ~」「エビみたい」「捕まえたことある」「保育園にいる」との声。そして、喧嘩、脱皮のところでは「がんばれ~」「すげ~」「ああ~」。抱卵シーンは「かずのこみたい」。視聴後は、それぞれの思いや感想、発見したことを引き出すように声をかけました。「ハサミが大きい方が強かった」「皮が小さくなって脱ぎよった」「負けてかわいそうだった」「卵がぶつぶつしてた」など、たくさんの意見が出ました。

友だちの話を聞いて、共感や思いの違いに気づいてほしいと願いながら、園で飼育しているザリガニをみんなで観察することにしました。すると、図鑑や科学絵本を持ってくる子どももいました。教師が「どうなってる?」と問いかけると、ザリガニの真似をする子どもがおり、その内、全員がいろいろな生きものの模倣で関わり始めました。以前水辺の生きものを視聴したことがあったからか、ザリガニに限らず、魚、カエル、カメなど、部屋中が池の中の生きものたちで賑わいました。この日はこれで終了。

翌日、導入にOHPを使いザリガニの影を映し、改めてその姿に注目して、製作や絵画活動を行いました。必ずしも視聴後の活動を予定している訳ではないのですが、子どもの姿に、教師がもっと深めたくなってしまった保育となりました。

子どもの変容

放送教育の取組みで大切にしていることは、テレビの見せ方です。時計を合わせ、カーテンを必要程度に閉めて、時間ぴったりにスイッチオン。事前に番組については話しません。教師はテレビと子どもの顔が見える位置に座り、視聴中には子どもと共に驚いたり、顔を見合わせうなずいたりしています。

年度当初、視聴中の子どもの姿は、自分がおもしろく感じた場面でとなりの友だちにこそこそ話しかけることもありましたし、前の友だちが動くと「見えん」とか言って手を出し、もめてしまうこともありました。しかし、回数を重ねていくと次第に集中力が続き、前の友だちが動いても自然に自ら顔を動かして見入っていました。視聴中は静かになり、視聴後は意見もたくさん出るようになって、番組を選択し継続して視聴することの意義を感じました。

また、生と死をまともに感じ、「あ、死んだ」とかの表現から「かわいそう」「逃げろ」という表現へ広がり、感情を言葉に表せるようになってきたこと、園で飼育している生きものにも関心が高まり、餌、糞、住みかなど観察し、工夫している姿は頼もしく思えます。

自由活動の粘土遊びでも、登場した生きものを細部までこだわって作り、そこには赤ちゃんをたくさん周りに置いていたこともありました。

実践を振り返って

この番組は、自分が感じたことや発見したことを言葉にして相手に伝え、相手の気づきを受け止める。このような姿は、目に見えて教師も安心してしまうものですが、本来は、驚きや感動を心に蓄積していってくれれば、それで十分なのかもしれません。

懸命に卵から生まれ出る赤ちゃん、それを守り育てる親、大きくなるまでに食べられてしまい生きる厳しさ、餌を捕るのが大変なことなどを、何となくでも感じ取ることが子どもにとっての宝となるはずです。

放送利用はひとつの教材を利用することであり、決して特別な保育の有りようではないと感じます。そして、何より普段の保育と絶対的に異なるのは、子どもの前に教師がいるのではなく、子どもと同じ立場で、共に心を響き合わせ、感動を共有し楽しめるものだと思います。これからも放送番組を活用し、心の宝を育んでいきたいと考えています。

本時案(授業プラン)

子どもの姿 指導上の留意点
9:55
視聴準備
  • 子どもを落ち着かせ、わくわくして待てるようにする。
10:00 番組を視聴する
しぜんとあそぼ・ざりがに
  • 一人ひとりの気持ちを受け止める。
  • 反応を見る。驚きや気づきに共感する。
  • 騒がないように促す。
10:15
話をする
  • どの子も発言しやすい場をつくる。
  • 反応していた場面を振り返る。
  • 発言を受け止め、共感する。
10:25 飼育しているザリガニを観察する
  • 友だちの発言に関心を持たせる。
  • 一度に押しかけないよう促す。
  • よく見えるように飼育ケースを配置する。
  • 気づきを受け止める。
10:35 図鑑、科学絵本を見る
  • 本を取り合わないよう促す。
  • 振り返りやすいよう声をかける。
10:45 模倣遊びをする
  • イメージが広がるよう配慮する。
  • 思いや表現を共有出来るように知らせる。
  • 一人ひとりが満足できるように援助する。
  • ふざけないよう促す。
11:00 自由遊びをする
  • 思い思いの遊びができるように援助する。

堀田 博史

『しぜんとあそぼ』を活用した角先生の実践は・・・ つぼみ保育園では、『しぜんとあそぼ』を継続視聴される中で、「・・・自然の不思議さや命の輝きを、友だちと共有し、言葉で伝え合い・・・」と番組の活用意図を示されています。視聴により溜め込まれた様々な内容を“言葉”で伝えることで、新たな気づきが起こります。番組視聴と言語伝達による展開が、本実践の特徴のひとつです。放送教育を「教師と子どもが同じ立場で、共に心を響き合わせ、感動を共有し楽しめる」とその良さを表現されるように、同じ題材で感動をともにすることでクラスのまとまりも一層強まると思います。その様子を報告いただけることに期待しています。(堀田 博史)

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