実践リポート

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「スマイル!」 特別支援学級における対人関係のスキルを身につけるための放送番組の利用

岩下 幸広 教諭

岩下 幸広 東京都杉並区立天沼小学校特別支援学級介助員

年度当初に担当教員3名と介助員1名で検討を行い、今年度は学校放送番組「スマイル!」を視聴し、特別支援学級の児童の対人関係がスムーズになるような学習を積み重ねていくことになりました。本次(2時間扱い)では友達への声のかけ方や場面に応じた声の大きさなど、児童のコミュニケーションスキルを向上させる活動を行いました。

スマイル!【対象】全学年・特別支援/学級活動

スマイル!

この番組は、学習の基礎的なところでつまずきがあったり、学校生活の中での友人同士のトラブルを抱えやすい小学校低学年の子どもたちを主な対象にしています。今日、こうした子どもたちの問題を専門的に支援する教材の必要性がますます高まっています。トラブルを抱えている子も、そうでない子も、みんなで一緒に番組を視聴することで、子どもたちの日々の笑顔を増やしていくことにつなげていきます。

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活用のねらい

本校特別支援学級(こだま学級)には他の児童とスムーズに関わることができず、トラブルを起こしたり孤立したりする児童が多くいます。

学校放送番組「スマイル!」は、子どもたちが学校や社会生活の中でつまずきやすい事柄を題材にしており、それを解決するための手立てが示されています。

本番組を継続的に視聴し、学習活動に番組と同じような活動を取り入れることで、自分のふだんの行動を見直し、他者と円滑に接することができるスキルを身につけさせることを狙いとしました。

授業の様子

「スマイル!」の中から今回はソーシャルスキルに関連した番組を取り上げて7次にわたる大きな単元を構成し、スキルの向上を目指すことにしました。

視覚優位な本学級の子どもたちに分かりやすい構成にするとともに、授業そのものの流れや板書等をパターン化(下図参照)することで、発達障害を持つ児童が安心して授業に参加できるように心がけました。

本稿では第2回放送の「声の使い方の魔法」を使用して場面に応じた声の大きさについて学んだ実践をご紹介します。

第1次 なかまになるためにこえをかけよう
「仲間になる魔法」
第2次 ききやすいこえではなそう
「声の使い方の魔法」
第3次 しせいをよくしよう
「しせいの魔法」
第4次 うれしいことばといやなことば
「うれしい言葉の魔法」
第5次 どんなきもちかかんがえよう
「気持ちを知る魔法」
第6次 はなしをきいてもらおう
「話をつづける魔法」
第7次 ちからをあわせよう
「相手に合わせる魔法」

第2次の第1時

第2次のテーマは「ききやすいこえではなそう」。その第1時。指導者による寸劇を見て、場面に応じた声の大きさについて考えました。めあてを「こえのつかいかたのまほうをげっとしよう!!」とし、番組を視聴し、話す相手との距離に応じて声の大きさを変えていくことを学びました。番組の中にも出てきた「こえのものさし」を実際に教室の黒板に貼り、席に座っている友達の前に行ってサインをお願いするなどの活動の中で近くにいる相手と話すときの声の大きさを学びました。

第2次の第2時

第2時のめあては「こえのものさしをつかおう」。前時の番組視聴で学んだ声の大きさをゲーム形式でさらに練習しました。はじめに指導者が出した問題に他の子に聞かれないように小さな声で答える「ひそひそクイズ」を楽しみながら、小さな声で話す練習をしました。さらに、第1時の復習として、「あいさつどんじゃんけん」というゲームを行いながら、友人と面と向かった場面での話し方を身につけていきました。

〈授業のパターン化〉
こだまシアター
(教師の寸劇を見て今日のめあてを考える)←焦点化
今日のめあて
(全員でめあてを確認)
スマイルタイム
(番組を視聴して学ぶ)←視覚化
やってみよう
(友だち同士、体で身につける)←共有化
ふりかえり (学習を思い出し定着させる)
 ・ふりかえりカード記入 (がんばれたことは何だろう)
 ・ことばのプレゼント (他の児童を評価する)
 ・スマイル星人ゲット (番組に出てくる魔法石をイメージ)

子どもの変容

ゲーム的な要素を取り入れた活動をする中で、声の大きさに注意をはらいながら友人と接するという意識が芽生えてきました。あるとき、偶然友達と肩がぶつかってしまった子が相手に対して、「ごめんね」を自然に(声の大きさも適切に)言うことができたのが印象的でした。また、休憩時間に友人に声をかけて集団で遊ぶようになってきました。

学級の人数が14名なので、意味のあるデータとは言えないかもしれませんが、この単元を始める前の6月初旬と1学期の最後(7月中旬)に行ったアンケートでは「番組を利用した学習は好きか」に「とてもそう思う」と答えた児童が13人中5人から9人に、「番組を見て新しく学んだことはあるか」という質問に対しては7人から10人に増えました。

実践を振り返って

放送番組の視聴は児童たちに学習の内容を明確にさせるという意味でたいへん効果的でした。普段の学習活動でなかなか集中力が持続しない児童も、8分(10分番組ですが後半の小コーナーはカット)の番組をじっと見つめていました。

また、番組視聴の前に、どこに焦点をあてて番組を見ればよいかを指導者の寸劇で示したことも、視聴に対する意識を高めたのではないのでしょうか。

しかし、まだ、遊んでいてもルールを守れない子、特定の相手とだけ遊びたがる子などがいます。この番組を利用しながら「ルールを守る」「相手を尊重する」「協力する」などのスキルについても学習を進めているところです。また、一度学習した項目を適宜復習しながら段階を上げていく螺旋状の学習を進めていくことで、無理なく今後の生活に欠かせないスキルを身につけさせていきたいと考えています。

本時案(授業プラン)

○第1時のめあて 【こえのつかいかたのまほうをげっとしよう】

時間のめやす 学習の内容・展開・発問 指導上の留意点、準備
5分

指導者による寸劇

(朝の会で出席を取るときの返事の場面)
  • 何をめあてに番組を見るか
8分 スマイル!・声の使い方の魔法を視聴
  • ドラマ本編だけを見せる
7分 めあての確認
  • 「こえのものさし」提示
15分

「ともだちあつめげーむ」

  • 配られたカード(顔の絵がたくさん描いてある画用紙を友だちの前に持って行って、名前を書いてもらうゲーム
  • 1回目…一人ずつ一人の相手に
  • 2回目…全員で前に出ていろいろな子から
  • ともだちと向き合って話すときは、「こえのものさし」のレベル2を使うこと
10分
  • ふりかえりカード記入
  • 言葉のプレゼント (友達のよいところを発表)
  • スマイル星人ゲット
 

※本番組は後半に本編とは別に歯磨きなどの生活習慣の学習が本編とめあてが別になっているものなので、授業では使用しませんでした。

○ 第2時のめあて 【こえのものさしをつかおう】

時間のめやす 学習の内容・展開・発問 指導上の留意点、準備
5分

指導者寸劇、めあての確認

(ひそひそクイズをやってみせる)
  • 小さな声で話さなければならない場面を気づかせる
10分

「ひそひそクイズ」

  • 指導者が出した問題に指導者だけにきこえるようにひそひそ声(レベル1)で答える(紙筒に声を通して)
  • 「こえのものさし」のレベル1の練習
20分

「あいさつどんじゃんけん」

  • 教室に長くテープを貼り、2チームが両側に分かれる→同時に歩いて行き遭遇したら「こんにちは、どん(ハイタッチ)、じゃんけん」(「こえのものさし」レベル2を常に意識)でじゃんけん。
  • 声の大きさを指導者がチェック(○×ブザー)
  • 勝った子はさらに歩く。負けた子のチームは次の子がスタート。相手と遭遇したら「こんにちは、どん(ハイタッチ)、じゃんけん」
  • 繰り返し、相手のゴールまで先に達したチームの勝ち
  • 前時に行った「こえのものさし」のレベル2の練習の復習
10分

ふりかえりタイム

  • ふりかえりカード記入
  • 言葉のプレゼント(友達のよいところを発表)
  • スマイル星人ゲット
 

木原 俊行

「スマイル!」を活用した岩下さんの実践は・・・ 岩下さんは、特別支援学級の子どもたちのソーシャルスキルを高めるために、「スマイル!」を上手に活用しています。まず、その継続利用に注目すべきものがあります。「スマイル!」は、「学校や社会生活の中でつまずきやすいことがら」を克服する術を番組中に分かりやすく、また、ていねいに提示してくれます。支援を要する子どもたちは、番組をモデルにした学びを重ねることによって、ソーシャルスキルを磨いているようです。また、授業のパターン化が、それを支えています。特に、番組視聴後に体験的な学び、楽しいゲーム等がたくさん用意されていることは、子どもたちのソーシャルスキルの定着に大きく貢献しているでしょう。さらに、毎時間の終末の「ふりかえり」活動にたっぷりと時間がかけられていることも、岩下先生の実践の特長の1つです。 (木原 俊行)

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