実践リポート

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「ロンリのチカラ」での文章の構造的把握を英作文に活かす活動

米田 謙三 教諭

米田 謙三 大阪府羽衣学園中学・高等学校教諭

大学・社会人になっても求められる論理的思考力(クリティカル・シンキング)を養う番組。高校を舞台としたドラマ形式で、具体的な例文を交えながら、「論理的に考えるとはどういうことか」を学んでいく。わかりやすい内容はもちろん、シュールな映像と音楽が醸し出す独特の世界観も魅力の一つ。今回は特に英語表現の学習の中で「自分たちのまち」をテーマに適切な文法形式を用いて正しく英語で表現し、アウトプットとして交流学習で活用しました。
※この実践および所属は、2015年度のものです。

ロンリの力【対象】中学生・高校生/総合

ロンリの力

中学、高校。そして大学、社会人になっても求められる論理的思考力(クリティカル・シンキング)を養う番組です。これまで「水かけ論」「見せかけの説得力」「横ならび論法」など、ニセモノの論理を見破る方法を学んできましたが、議論の中で最も大切なのは「異なる意見を尊重する」こと。たとえ自分とは意見が違っても、相手の意見を尊重する姿勢の大切さを学びます。

活用のねらい

英語で「自分たちのまち」を紹介するというテーマを通じて、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するとともに、事実や意見などを多様な観点から考察し、論理の展開や表現の方法を工夫しながら伝える能力を養います。
具体的には下記の5項目をねらいとします。

  1. 中学・高校、そして大学・社会人になっても求められる論理的思考力(クリティカル・シンキング)を養う。
  2. 英語表現の学習の中でコミュニケーションを支えるものとしての文法の形式・意味・機能に習熟し、必要な場面で、適切な文法形式を用いて正しく表現することができる力を養う。
  3. さまざまなテーマについて書かれた英文を、学んだ文法知識などを活用して読んだり聞いたりして理解する力を身につける。
  4. 学んだ文法知識などを活用して、モデルとなる英文を参考に、伝えたい情報を形式に則って論理的に1パラグラフの文章にまとめることができる。
  5. ネットワークリテラシーや主体的に学ぶ意欲、問題発見・解決能力を海外との交流学習などを通じて身につける。

授業の様子

高校2年 英語表現Ⅱ
Lesson3 My Hometown
[題材] 故郷、自分の住む町
[言語活動] 「自分たちのまち」を紹介しよう
[実施時間] 5時間

【1時間目】 自分でどんなテーマでまちのことを紹介するか考える。
【2時間目】 英文を書くためのアイデアを出す。
番組第1回「三段論法」を活用して推論の基本を学びます。
【3時間目】 つながりのある内容を文章で表現する。
番組第2回「情報を編集する」を活用して誤った前提からは、誤った結論が導かれる可能性があることを学びます。
番組第4回 接続表現「ことばをつなぐ」を活用して「接続表現」について学び、自分で作成した3つの英文を内容がつながるように文章にします。
【4時間目】 文章の基本構成を踏まえて流れよく書くために 主張→展開→結論の基本構成を学習します。
番組第7回「仮説形成」を活用して結果や結論の原因を考えるときの論理的思考法「仮説形成」について学びます。
【5時間目】 より説得力のある文章を書きます。授業を振り返り自分の考えを様々な角度から考えて、その正当性を証明する文章を書きます。

※このあと3時間で発信用の作品を作成して、実際の交流で活用します。

子どもの変容

番組を活用して 具体的に自分たちのまちを紹介するデジタルストーリーを作成することを通じて、主体的に学ぶ意欲や問題発見・解決能力を、また情報活用の実践力を育むことができました。 英語に関しては、次の4点で特に変容が見られました。

1.関心・意欲・態度 モデル文に関心を持ち、読もうとするようになり、間違いを恐れず、積極的に表現したり、コミュニケーションを図ろうとするようになりました。
2. 表現の能力 与えられた状況において適切に話し、伝えることができるようになりました。 適切な発声で、プレゼンテーションを行うなど自らの意見を、適切な表現を用いて伝えることができるようになりました。また、学んだ文法・表現を使って、要約を書く手順を理解し、要約文を書くことができるようになりました。
3. 理解の能力 相手の言ったことを正しく聞き取れるようになり、 英文を聞き、正しい解答を選べるようになりました。
4. 知識・理解 いろいろなトピックについて、知識を広げ内容を理解することができるようになりました。

生徒の感想

  • 自分の住んでいるところや生まれたところについて、積極的に書いたり話したりしたいと思った。
  • 番組を見て英文を読んだり聞いたりするときは、多少難しいことがあっても、前後関係などから意味を考えることが大切で絶えず、考えながら読んだり聞いたりすることが大切だということを学んだ。
  • 番組を見てもそうでしたが、英語で表現することができるようになるためには、確かな文法知識が必要です。また必ずしも難しい表現を使う必要もなく、中学校で学んだことも十分使えることに気付いた。
  • 番組から英語で自分の述べたいことを書けるようになるためには、言いたいことを整理し、それをモデルに従って適切な形式で書くことから練習することが大切だと学んだ。書く活動では、今後「主張 →展開 → 結論 」に従い、表現するようにしたい。
  • 英語でコミュニケーションをするときに最も大切なことは、積極的になることです。
  • ソーシャルメディアについて今まで習ったことがなかった。今回の授業でソーシャルメディアの影の部分以外に光の部分がたくさんあることを実感した。すごく楽しかった。コメントや交流の楽しさを実感した。今後もうまく情報を外部に発信することもやっていきたい。
  • 授業でプレゼンテーションを作成するときに、また他の人のプレゼンテーションを聞くときに、著作権に関して注意するようになった。
  • 教材の中で出てきた「一人一人が注意しながら楽しむことで、よりたくさんの作品が生まれ、またそれを楽しむことができるようになり、豊かで文化的な社会を守っていくことができること」は本当に大切だと思った。

実践を振り返って

アメリカでは小学生から論理性のある文章を書かせるためにトピックセンテンスや補助文の書き方などシステマティックに指導しています。そのためにも国語教育の連携の大切さを感じました。もう一つ今回の活動を通して改めて「思考力」、「聞く力」、「表現力」を身に着けるためには「必要な環境の設定」が大切であると感じました。

英語を通じて、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するには一例として恊働学習やアクティブラーニング(海外連携、高大連携、産学連携)をさらに取り入れそのような場面を体感させることが大切で、論理の展開や表現の方法を工夫しながら伝える能力を養うために次の3つの言語活動にさらに取り組みたいと考えています。

  1. 与えられた話題について即興で話す。また伝えたい内容を整理して論理的に話す。ただし急がずにやさしい英語の表現と語彙で構わない。
  2. 聞いたり読んだりしたこと、学んだことや経験したことに基づき、情報や考えなどをまとめ、発表する。また、質問したり意見を述べ合ったりする。
  3. ICTをさらに交流学習に取り入れる。

本時案(授業プラン)

全5時間プラス3時間 社会と情報の授業にて実施

学習活動 学習への支援
1 自分たちのまちについて振り返る。
  • 個人でそして自分たちでどんなテーマでまちのことを紹介するか考えさせ話し合わせる。
例:ガイドブックを作りたいという生徒の意見を取り上げ、その表現方法について話し合わせる。

自分たちの「まち」のスライドショーを作ろう

2 英文を書くためのアイデアを出す。
「自分のまち」情報の集め方を知る。
テーマを決定する
「自分のまちのよいところ」アイデアから3つ取り上げて日本文を作成して英文に直す。
NHK高校講座『ロンリのちから』活用
第1回 三段論法
推論の基本を学ばせる。
ワークシート1で「自分のまちのよいところ」のアイデアをあげさせる。
つながりのある内容を文章で表現する。
文と文のつながりを意識した構成を取り入れる。
「自分のまちのよいところ」アイデア3つからさらに事実以外に感想や考えを出し、英語に直し、つながるように文章にする。
第2回 情報を編集する
誤った前提からは、誤った結論が導かれる可能性があることを学ばせる。
ワークシート2で「自分のまちのよいところ」を1の3つから広げさせる。その中でも1つ選ばせ3つの英語の文に直させる。
第4回 接続表現 ことばをつなぐ
ことばとことばをつなぐ「接続表現」について学ばせる。
3つの英文を内容がつながるように文章にさせる。
文章の基本構成を踏まえて流れよく書く
主張→展開→結論の基本構成を学習する
特に展開で理由や具体例を取り入れるように3つのアイデアを考える。わかりやすい文章にするために接続詞を適切に使う。
第7回 仮説形成
結果や結論の原因を考えるときの論理的思考法「仮説形成」について学ばせる。
ワークシート3に2のアイデアの1つから関連する内容を3つ考えさせる。3つを英語の文に直させる。
より説得力のある文章を書く
自分の考えを様々な角度から考えて、その正当性を証明する文章を書く。主張→展開→結論の展開で2つの観点を用いて自分の主張を入れる。
ワークシート4を用いて説得力のある文章を書かせる。そのときに3つの観点を意識して書かせる。欄外に記載
1語彙 2文法 3構成・展開
スライドショーを作成する
自分たちが集めた写真の中から6枚程度の写真を選ぶ。ナレーションや音楽を考える。
ここから情報の授業
『10min ボックス』情報 活用
自分たちの使う音楽や写真をもとに著作権について考えさせる。
著作権に関して考える
出来上がったスライドショーを発表しあう。
自分たちが作ったスライドショーを見直してブラッシュアップを図る。
作品を発信する。
作品を届ける。
評価のポイント
  • 「自分のまち」の魅力が発表できているか?
  •  自分たちが調べて、感動したことを伝えられているか。
  •  感想や意見を取り入れより良い作品になるよう話し合い作品の手直しに取り組ませる。
  •  Webに公開したり、交流校、地域に届けさせる。

稲垣 忠

『ロンリの力』を活用した米田先生の実践は・・・言葉と思考には密接な関係があります。語彙や文法は思考する際の道具になりますし、論理構成が無いまま文章を並べても、伝わる文章にはなりません。米田先生は、自分たちの「まち」について交流校に英語で伝えるというゴールを設定しました。その上で、番組「ロンリのちから」を使って、文章全体の構成ではなく、伝えたい中身(情報)をベースに膨らませる、ボトムアップ型の文章指導をされています。文法・表現の適切さを確実に高めるための工夫です。具体的なゴールに向けて生徒が主体的に学ぶプロジェクト学習はアクティブ・ラーニングの典型です。魅力あるゴール、自信をもたせる段階的な指導、番組やプレゼン制作等のICT活用の留意点まで、プロジェクト学習を成功させるコツが詰まった提案です。(稲垣 忠)

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