実践リポート

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『学ぼうBOSAI』で自ら行動しようとする子を育てる

加納 真 教諭

加納 真 静岡県沼津市立内浦小学校教諭

『学ぼうBOSAI』は、子どもも大人も心を動かし、深く考える、新しい「防災番組」です。自ら問いをもち、考え、教室を飛び出して自分たちにできることを実践するところまで学習が広がりました。
※この実践および所属は、2014年度のものです
※授業の様子が動画で見られます

学ぼうBOSAI【対象】小学校5・6年 中/総合

どきどきこどもふどき

「シンサイミライ学校 アニメで学ぶ”命を守るキズナ”」

津波から自分自身や家族を守るために何が大切か。アニメを通じて、自ら考え学ぶ。

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活用のねらい

本校では、地震や風水害といった災害に備え、年に数回の避難訓練を行っています。事前指導を含め、訓練を通して防災意識を高め、実践化につなげようと考えています。以前から東海地震による被害が想定されている中、東日本大震災以降、地震や津波などに対する危機意識は一層高まっています。

しかしながら、自分の命を自分で守ることに対して、本当に切実感をもっているかといえば、訓練の様子を見ていても、その意識は決して高いとは言えない実態がありました。

そこで、学校のリーダーでもある6年生が、自分の命を守るための行動について学び、自分や家族、友達などの命を守るためにできることを考え、実際に行動を起こすことをねらい、本番組を活用することにしました。

授業の様子

番組名 「シンサイミライ学校 アニメで学ぶ”命を守るキズナ”」
ねらい 地震や津波からどのように命を守っていったらよいか知り、学んだことや調べたことを下級生に進んで伝えたいという意欲をもつ。
本時の学習活動
1 東海地震や津波の被害想定を、ハザードマップで調べる。
2 地震や津波の被害から、どのように身を守ったらよいか話し合う。
3 学ぼうBOSAI・シンサイミライ学校 アニメで学ぶ“命を守るキズナ”を視聴する。
4 自分や家族、友達、下級生の命を守るにはどうしたらよいか考える。

子どもたちは、入学したときから、何度も避難訓練に参加し、物心ついた頃から、大地震が起きたら津波が来ると教わっているため、地震や津波に対する知識は豊富です。しかしながら、具体的な命の守り方について、切実感をもっている子はあまり多いとは言えません。

そこで、はじめに、東海地震が起こったときにどのような被害が想定されるか話し合いました。子どもたちは、家が壊れることや巨大津波が押し寄せてくること、けが人や命を落とす人が出ること、家族と離ればなれになることなどを思い浮かべました。続いて、市が公開している最新の津波ハザードマップをみんなで確認しました。すると、自分たちの家のほとんどが、津波の浸水域にあることが明らかになり、子どもたちは不安げな表情になってきました。そして、しだいに「地震や津波の被害から、どうやって命を守っていけばよいのだろうか」という切実感のある問いが生まれました。

そのタイミングで、番組を視聴しました。番組の設定が自分たちの境遇とよく似ているためか、子どもたちの表情は真剣そのものでした。番組では、とにかく高台に逃げることや、「津波てんでんこ」という昔からの教え、家族で事前に話し合っておくことの大切さなどが紹介されています。

番組を見終わった子どもたちからは、「家族のことも心配だけど、まずは自分が助かることが大切だ」「家族と日頃から話し合っておくべきだ」「避難しながら大きな声で地域の人に声を掛けたい」といった感想が多く聞かれました。そして、学校にいるときの避難経路や、地区の避難場所は知っているものの、通学路途中の避難経路については、あまり知らないことに不安を感じ始めました。

さらに、自分たちでさえあまり知らないのだから、下級生はもっと分からないだろうということに考えが及びました。番組の視聴により、自分たちが最上級生として下級生に教えてあげなければならないという使命感が芽生え、行動への意欲が高まりました。

子どもの変容

授業を終えると、子どもたちは、早速通学路の途中にある避難場所や避難経路を調べる計画を立て始めました。そして、放課後や休日を使い、それらを詳しく調べ、番組を見て学んだことを基に、より分かりやすく説明するにはどうしたらよいか考えました。下級生だけでも安全に避難する方法を教えるためです。

授業から一週間後、子どもたちは、登校班ごと下級生を率いて下校しました。実際に通学路を歩きながら、避難場所や避難経路を教えたり、地震が発生したときに、どのようにすればよいか、自分たちが学んだことを伝えたりしていきました。今回の経験を通して、6年生としての自覚と地域の一員としての防災意識を高めることができました。

実践を振り返って

実践動画動画を見る
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学習したことが単に知識の習得で終わってしまうことは、とても残念なことです。特に、防災教育の場合、不測の事態が起きたときに、行動できないようでは意味がありません。本実践では、番組の利用が子どもたちの主体的な行動に結びつきました。

自分たちが伝えなくてはならないという気持ちから起こした行動が、確実に学校全体の防災意識の向上につながったという手ごたえを感じた子どもたちは、満足感や自信を高めたように感じます。職員からは、上級生の防災意識を高め、自発的に下級生に伝えていく学習を来年度も実施していきたいという声が上がり、番組を利用することの学習効果が見直されるきっかけにもなりました。

本時案(授業プラン)

時間 主な学習活動

(本時)
自分たちの住む場所で想定される津波の被害について知り、番組の視聴を通して、津波から自分や家族、友達、下級生などの命を守るためにできることを考える。
避難経路について調べてきたことや、家族で話し合ってきたことを伝え合い、登下校中や放課後の地域での身の守り方について下級生に教える計画を立てる。
下校時 登校班ごと集団下校をしながら実際に避難経路を確認し、下級生に、登下校中に大地震が起きたとき、どうすべきか、どのように命を守っていくか、学んだことを伝える。

中橋 雄

「学ぼうBOSAI」を活用した加納さんの実践は…防災教育の成果が実際の行動につながるように、切実感をもって取り組む重要性を伝えようとしています。そのため、番組を視聴する前に話し合う活動を重視しています。番組が伝えていることを人ごとのように考えるのではなく、自分のこととして考えさせる工夫だといえるでしょう。また、学んだことを活かすために、下級生に教える場面を設定しています。このような話し合いや他者に伝える学習活動は、番組で学んだ防災に関する学習内容を深めると同時に伝え合う力を育むことにも有効だと考えられます。(中橋 雄)

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