実践リポート

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「ざわざわ森」の仲間たちと 一緒に学び、成長していく子どもたち

大室 健司 講師

大室 健司 
埼玉県さいたま市立大砂土東小学校講師

「ざわざわ森」と、このクラスは「どこでもドア」でつながっています。テレビのスイッチをつけると、ここはもう「ざわざわ森」です。がんこちゃんもバンバンくんもツムちゃんもみんなここにいます。子どもたちは、大好きな仲間たちと一緒に学んでいきます。

ざわざわ森のがんこちゃん【対象】幼保・小学校1年/道徳

ざわざわ森のがんこちゃん

平成8年に放送を開始し、昨年20周年の節目を迎えた「ざわざわ森のがんこちゃん」。幼稚園・保育所の園児から小学校]低学年の児童まで、楽しんで道徳を学べる番組です。こどもたちにとって大切な「あいさつをする」などの【基本的な生活習慣】や、「友達と仲良くする」などの【集団生活のルール】を、人形劇で楽しく子どもたちに伝えます。主人公のがんこちゃんは、ワニやカエルの同級生たちより、一回りもふたまわりも大きい“規格外”の恐竜の女の子。不器用だけど素直で明るいがんこちゃんと仲間たちが、珍騒動を起こしたり、葛藤に悩んだりする姿を、子どもたちに楽しく視聴してもらい、道徳的テーマを感じ取ってもらうことを目的にしています。

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活用のねらい

「毎日、みんな笑顔で過ごせたらいいな!!」と思います。でも、いやなことやつらいこと、悲しいことは必ず起きます。でも、それを乗り越えた所に本当の笑顔があります。

その、乗り越える力を与えてくれるのが仲間たちです。クラスの子どもたちは「ざわざわ森」に行って個性豊かな仲間たちと一緒に学びます。そして、仲間がいるから自分もいるということに気づいていきます。

授業の様子

番組名「バンバンのにがてなこと」

(自分の特徴に気づく。誰でも苦手や得意があることを学ぶ。)ピロはいくら頑張っても笛が吹けない。それでも頑張れと言われる。その気持ちを知ったバンバンは・・・

さあ、今日も「ざわざわ森」に行きます。さて、どんなことが起きるのでしょう。テレビの中に飛び込んだ子どもたちは、「がんこちゃ~ん」と大きな声で歌いながらみんなに会いに行きます。教師は、題名や視聴する視点など野暮なことは言いません。なぜって、「ざわざわ森」につく前に、あらかじめどんなことが起きるのかが分かっていたらつまらないでしょう。

テレビに視線を向けている子どもたちの表情はとても豊かです。まるでテレビと対話しているかのようです。いや、本当に仲間たちと対話しているのです。

番組が終わると、もとの教室にもどります。子どもたちの多くは、仲間たちとの出来事を話したくてしょうがありません。スイッチを切る教師が、子どもたちに身体を向けるのを待ちかねたように、「はい!!」と手が挙がります。教師は、子どもたちの思いを聞き分けながら板書していきます。なるべく黒板の端の方から、発言の内容別に分けて板書します。板書で子どもたちの思いが広がっていきます。

「よかった」とか「にがて、じょうず」「わらう」といった感情を表す言葉が、複数、別の場所に板書されていきます。すると、子どもたちはそれをつなげようとします。矢印や囲み線が増えて、広がったものが収斂されていきます。

さらに、黒板を指さしながら発言していた子どもが、業を煮やしたかのように前へ出てきて、黒板を示しながら説明をしだします。授業は、終盤に差し掛かっています。

前に出てきた子は、番組の流れを語りながら、最後に自分の思いを言います。かなり長い発言になるので、聞きながら自分もしゃべりたくてうずうすしている子もいます。そんな子も、指名されると黒板の前に来てしゃべり出します。みんな一様に番組の流れを追ってから、自分の思いを言います。エピソードを振り返ることによって思いを整理しているかのようです。

授業終了のチャイムが鳴りました。3人の子どもが前にでてきて発言してくれました。思いへのたどり方は別々でも「人にはそれぞれ、得意不得意があることを認め合えてよかった。」ということは一緒でした。それが学習のまとめとなりました。教師は、それを、特に確認したり文字でまとめたりするような無粋なことはしませんでした。

子どもの変容

いろいろな子どもたちがクラスにはいます。得意なものも苦手なものもそれぞれに違います。みんな、苦手なことより得意なことを認めてもらいたいという気持ちがあります。

この授業では「よかった」ということがキーワードなりました。「できるようになって、よかった。」「認め合えて、よかった。」「仲直りできて、よかった。」この「よかった」根底には、「自分の良いところを認めてもらいたい」という思いと共に「友だちの良いことを認めてあげよう。」「その子なりのがんばりかたがある。」という気持ちもありました。

このクラスの子どもたちは、本当に仲良しだと思います。意地悪になる時がある子、乱暴になる時がある子、でも、仲間外れにしようという雰囲気はありません。みんなそれぞれに違っていて、そして、良いところがあることを知っているからです。それを、「ざわざわ森」の仲間たちから学んだのです。

実践を振り返って

絵本や物語の世界に入り込む時があります。その世界に魅力があり、豊かな描写があってのことです。放送教育も同じです。番組に、素敵な世界とそこに誘う力があるのです。その世界に入り込んだ子どもたちは、思いを語り合います。いやでもアクティブになるのです。自分らしく、自分なりに、自己表現をしていきます。それは、視聴中の目の輝きや視聴後の主体的な活動に表れます。その姿は、あの「山の分校」の子どもたちとなんら変わっていないということをつくづく思い知らされました。放送教育は、特別の教育なのです。

本時案(授業プラン)

学習活動 指導上の留意点
10分

新・ざわざわ森のがんこちゃん・バンバンのにがてなことを視聴する。
「ざわざわ森」の仲間たちと対話する。

時に、自問自答しながら自分なりの答えをみつけていく。

スイッチを入れたと同時に、教師も子どもたちと一緒に、「ざわざわ森」に出かける。そこで、教師だけが事前にこれから行く場所を知っている素振りは絶対に見せない。したがって、タイトルも、視聴の視点なども全く言わない。
25分 「ざわざわ森」の仲間たちと対話することによって膨らんできた思いや考えを吐露する。
板書されていくみんなの思いや考えを見ながら、自分の思いや考えを深めていく。
教師は共に考えていく姿勢をとる。だから、教師の意図が見え見えの質問はしない。代わりに、子どもたちが自分の思いを何でも言える雰囲気を教室に作っておく。
子どもたちの発言の思いを汲み取って板書していく。その内容によってチョークの色や字の大きさ、書く位置を変えていく。
10分 子どもたちが、自分の思いをまとめようとする思いや動きを借りて、学習をまとめていく。 黒板が、子どもたちの思いでいっぱいになると、子どもたちはそれを整理しようとする。そこで、言葉を矢印でつないだり、囲ったりすることによって授業をまとめていく。

木原 俊行

「新・ざわざわ森のがんこちゃん」を活用した大室さんの実践は… 小学校における「特別の教科 道徳」では、指導者は、「道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」ことを目指します。そのために、「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習」を創らねばなりません。大室先生の実践は、それを、学校放送番組の活用によって、自然に実現しています。『ざわざわもりのがんこちゃん』の物語的なよさを子どもたちに味わってもらうべく、大室先生は、番組視聴中やその後に、あえて指示やゆさぶりをしないのです。また、まとめや説話を取り入れようともしません。子どもたちの発言を板書で整理していく役に徹しています。それでも、子どもの変容に明らかですが、子どもたちは、友情に関して、深く、多面的な思考を繰り広げています。放送教育の伝統的な手法の可能性を実感できる実践です。 (木原 俊行)

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