実践リポート

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『考えるカラス』で身のまわりの現象について考える力を育てる

北田 健 教諭

北田 健  東京都江東区立深川第三中学校教諭

自ら課題を見つけ、観察し、仮説を立て、実験し、結果をもとに考察するという科学の「考え方」を番組を通して体験できます。考えることに焦点をあて、あえて答えを教えないという新しいタイプの番組です。思わず「考えること」に夢中になってしまいます。
※この実践および所属は、2013年度のものです

考えるカラス 【対象】小中高/理科

考えるカラス

考える練習「2本のロウソク」

自ら課題を見つけ、観察し、仮説を立てて実験し、その結果をもとに考えるという「科学の考え方」を学びます。番組はさまざまなコーナーで構成されていますが、「考える練習」は、ちょっと意外な実験のコーナーです。「自分の頭で考える」楽しさにいざないます。

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活用のねらい

学習指導要領解説において、理科改訂の要点に「科学的な思考力、表現力の育成を図ること」とあり「観察、実験の結果を分析して解釈する能力や、導き出した自らの考えを表現する能力に重点を置く」としています。また科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動の充実を図ることも大切であると述べています。そこで『考えるカラス』を視聴させ、話し合い活動を通じて、生徒に科学的な考え方を学習させようと考えました。

授業の様子

中学1年 身のまわりの物質
番組名 『考えるカラス』“考える練習「2本のロウソク」”
ねらい 課題に対して話し合い活動を行い、既習事項を利用しながら考えることで科学的な思考の方法がわかるようにする。

実際の授業から 授業プラン参照

番組を視聴させ、次の問題について話し合い活動を通して仮説を立てさせました。

(問)高さのちがう2本のロウソクをならべて、2本とも火をつけます。そこに、びんをかぶせると、一体どちらが先に消えるのでしょうか。
①長いロウソクが先に消える。
②短いロウソクが先に消える。
③同時に消える。

生徒の選択と代表的な理由は、多かった順に、 ②「二酸化炭素は空気より重い」、 ③「どちらのロウソクも同じ量の酸素を使うから」、 ①「酸素の密度が大きいから」 などが挙げられました。

これらの意見を受け、班での話し合いや全体への発表を通して、生徒は“ロウ(有機物)が酸素を使い燃えると二酸化炭素が発生する”ことや、“浮き沈みは「密度」で説明できる”ことなどすでに学習したことを再度確認していきます。

また、ほかの生徒や教師とのやりとりをもとに「なるほど」「そうか」と間違いや矛盾点が訂正されていきます。そのうえで解答編を視聴すると、①が正解という結果に多くの生徒から「どうして」「なんで」と声が上がりました。

そこで、続く解答編のヒントをしっかり聞くように指示を出します。「ポイントは二酸化炭素です。二酸化炭素は普通、酸素より重いのですが、実は、あた…。」と途中で番組が終了してしまいます。

「え~」「なんだよ」という声があちこちから聞こえてきます。そこで「あた…。」の後は何が続くのか質問すると「あたためられることだ!」と声が上がりました。

さらに、あたためられた物体は何が変化するだろうかと問うと「(体積が)大きくなる」「上に行く」と小学校4年生で勉強した内容を思い出す生徒が現れます。そこで球膨張試験器の実験を観察させたり、ビデオクリップ「空気の温まり方」を視聴させた後に班で再度話し合いと代表発表を行う事で、生徒は自分たちなりの考察を完成させることができていました。

子どもの変容

「今回のように自分で考えるのは難しかったけど、話し合ううちに答えが見えてきた」と生徒の感想にあるように、生徒自身が考え、そして話し合い活動などを通じて他者の意見や実験結果に揺さぶられていくことで、生徒自身の考えが深まっていくのを感じました。

また「予想もしなかった結果が出たのでびっくりした」「仮説を立てて、違う意見を持っている班の仮説を聞くのが“こういう意見もあるんだー”と楽しかった」「今まで習ったことでこんなに考察できるなんて理科は面白い」との生徒の言葉からもわかるように、ロウソクという身近な課題について自らの知識を生かし他者と話し合いながら考えていくことで、考えることの楽しさに気付き、より積極的に授業に取り組んでいく姿が見られました。

実践を振り返って

これまでの授業では、学習内容を理解させる授業に力を入れてきましたが、今回の実践を通して、“今までに学習した知識をもとに生徒自身が考える”学習活動を授業に取り入れることの大切さを感じました。

生徒が課題に対して、既習の事項をもとに主体的に考えることで、知識が断片的に存在するのではなく関連していることに気付き、課題に対して自分の知識を横断的に使い解決しようとする生徒の姿が見られたからです。

今後ともこの番組を活用して生徒が考える授業を工夫していきたいと思います。

本時案(授業プラン)

学習活動 指導上の留意点
導入
  • 本時の目標を確認する
「今までに学習したことを使い考える」
【観察】
考えるカラスを視聴する。
  • 番組を見ながら不思議な点に着目させたり、生徒の考えを引き出す発問をする。
  • 考える練習「2本のロウソク」~解答編選択肢の部分で一時停止する。
展開

【仮説】
(1)自分の考え
自分の考えをプリントに記入する。
(2)班での話合い
ボードとプリントに班の考えをまとめる。
(3)班ごとに発表を行う[各班]

【実験】
(1)考える練習~解答編を視聴する
(2)球膨張試験器の実験
(3)「動画クリップ・空気のあたたまり方」

  • 他の人が納得するような説明ができるように、まとめに工夫をするように指示する。
  • 班で話し合い、意見をまとめるが1つにまとまらない場合はそれぞれの理由を書かせる。
  • 発表時に赤ペンを用いて生徒の意見を補足したり足りない部分や矛盾点を質問しボードに書き足す。
  • 解答後のヒントをしっかり聞くように指示を出し、生徒にあたためられた物体で変化するものを気付かせる。
  • 小学校の学習を振り返りながら実験を行う。
  • ビデオクリップを視聴。
まとめ 【考察】
(1)班での話し合い
(2)発表を行う[掲示・代表班]
(3)感想を書く
  • 番組のヒントや実験の結果をもとに自分たちなりの考察を作り出させる。
  • 説明してくれる生徒を募集し、まとめとしてクラス全体に発表させる。

稲垣 忠

「考えるカラス」を活用した北田さんの実践は…『考えるカラス』は、最後まで答えを明かさない番組です。2本のロウソクのどちらが先に消えるか、選択肢の場面で停止し、生徒は個人で仮説に向き合います。その後、グループで話し合い、互いの考えの違いや矛盾点を確かめ、クラスで共有します。番組の続きでは、実験結果は分かりますが、解説は途中でおしまい。そこで実際に実験し、再度話し合い、クリップを視聴し、考えをまとめました。考える材料を少しずつ足しながら繰り返し話し合うことで科学的な思考が深まっていくのです。(稲垣 忠)

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