実践リポート

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「お伝と伝じろう」でコミュニケーションスキルを育てる

山口 眞希 教諭

山口 眞希 石川県金沢市立小坂小学校教諭

プレゼン・スピーチ・話し合い・・授業でも日常でも誰かに思いを“伝える”場面はたくさんあります。でも相手に思いを伝えるには「スキル」が必要。『お伝と伝じろう』は、うまく伝わらない場面をドラマ仕立てで見せながら、どうしたら伝わるのかを子どもたち自身に考えさせる番組です。言語活動の充実、コミュケーションスキルの向上をめざして活用しています。
※この実践および所属は、2015年度のものです。

お伝と伝じろう【対象】小学校3・4・5・6年生/国語・総合

お伝と伝じろう

価値観や性格の大きく異なる二人を中心に繰り広げられる、コミュニケーションをめぐる小さなドラマをきっかけに、「どうしたら伝わるのか」ということを子どもたち自身に考えさせます。また、各回のテーマに合わせた言語活動のスキルも紹介することで、子どもたちのコミュニケーションスキルを育てます。

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活用のねらい

国語や社会、総合的な学習の時間などで、誰かにインタビューをして情報を収集することが多々あります。しかし、子ども達のインタビューの様子を見ていると、準備してきた質問を羅列して終了することが多く、相手と気持ちを通わせて相手の話の中から質問を見つけ、より多くの情報を引き出すということができていないと感じます。

また、インタビューをする中で、相手の受け答えによくわからないことが出てきても聞き返すことができず、わかったふりをしてしまうことや、相手が答えにくい質問をして、話がふくらまずに終わってしまう様子も見られます。

そこで、『お伝と伝じろう』を視聴し、相手と心を通わせながら、自分の聞きたい情報を上手に引き出すインタビューのコツを学習しました。

授業の様子

4年生国語科「新聞を作ろう」の学習において、5・6年生の委員会活動を調べて新聞にまとめました。新聞の制作過程でコミュニケーションスキルを高めたいと考え「必ず5・6年生にインタビューをすること」を条件とし、インタビュー活動の前に「聞き上手になろう」の回を視聴しました。

まず番組を視聴する前に、子ども達にインタビュー内容を考えさせたのですが、質問が思いつかない子が多くいました。次に番組の前半のサトルのインタビュー場面を視聴し、どこがよくないかを話し合いました。そして続きの「お伝レッスン」を視聴し、「インタビュー相手(本時の場合は委員会)について知っておくこと」「しりとりの法則を使って話を広げること」「話が脱線しても本音が引き出せるから問題ないこと」を押さえました。番組を視聴した後は、しりとりの法則を使って、子ども同士ペアになってインタビューをすることで学習したことを定着できるようにしました。

子ども達は番組から学んだことをもとに、質問を考えてインタビューをしに行ったのですが、取材したメモを見ながら教師が「これはどういうこと?」と尋ねても答えられない子がいました。相手の話のなかで理解できないことがあったのに、問い返すことができなかったようです。そこで「ほんとに分かってるの?」の回を視聴し、分からないときはそのままにせず、「6?の法則」を使って切り返しの質問をしないと正確な情報を得られないことを学習しました。不安なグループは、タブレット端末で繰り返し番組を視聴してから、再度インタビューに行っていました。

子どもの変容

番組を視聴したおかげで、どのグループも5・6年生のがんばりや苦労、願いなどたくさんの情報を聞き出すことができました。

質問の内容すら考えることができなかった子や、コミュニケーションスキルに課題があった子も、番組視聴とペアでのインタビュー練習で自信を持ち、上級生とも会話を続けることができていました。コミュニケーションスキルが比較的高い子も授業後のふり返りに「番組を見てたくさんのインタビューのコツがわかりました。相手の情報を先に調べておくというコツは特に驚きました」と書いていて、新たな知識を得たことがわかりました。

また、2時間目に「ほんとに分かってるの?」の回を追加で視聴したことは、自分たちのインタビューの仕方を見直すことにもつながりました。児童のふり返りに「正確な情報を聞き出せないまま新聞で伝えてしまったら、新聞としてダメだし、相手にも失礼になる」と書いてあったことから、上手にインタビューをすることは情報発信者として責任を果たすことになる、ということを学んだようです。

実践を振り返って

この実践ではインタビュー前に「聞き上手になろう」の回だけを視聴する予定でしたが、児童の実態に合わせて、途中で「本当にわかってるの?」の回も視聴させました。初めに視聴させて活動のモデルにするだけでなく、活動の途中で必要に応じて番組を視聴させたことで、自分たちの取材活動の足りない部分に気づかせるきっかけとなりました。

「聞きたいことがあるのにどうやって聞いたらいいの?」「伝えたいことがあるのに伝え方がわからない」と困り感を感じている児童には、話し方・聞き方・話し合い方といった言語活動のスキルを身につけることが必要です。言語活動のスキルを身につけることは、コミュニケーション能力を育成することにもつながります。ただし、教え込むのではなく、体験活動とセットにして自分で気づかせ、体得させることが大切です。本実践では、番組視聴と必要感のあるインタビュー活動をセットにすることで、スキルの習得につながったと感じます。

『お伝と伝じろう』は、主人公の“うまくいかない体験”から子どもに考えさせる部分と、「お伝レッスン」によってスキルを習得させる部分とのバランスがとてもよい番組です。これからも活用していきたいです。

本時案(授業プラン)

学習活動 指導上の留意点
1時 1 5、6年生にインタビューしたい内容を考え書き出す。 知識がない状態で一度考えを持たせる。
2 を視聴する。 初めにscene1まで視聴し、主人公の質問の仕方のどこが良くないか話し合った後に残りを視聴する。大切なことはメモをとらせる。
3 番組を視聴してわかったインタビューのコツを確認する。 相手が答えやすい質問をすること、しりとりの法則を使って話を広げることを押さえる。
4 しりとりの法則を使って、ペアで「今はまっていること」についてインタビューをし合う。 番組から得た知識を定着できるように、友達とインタビューの練習をする。
5 5、6年生にインタビューしたい内容を再度考える。 個人で考えたものをグループで練り合い、質問を決める。
課外   休み時間を使ってインタビュー活動をする。  
2時 1 インタビュー活動で困ったことはないか話し合う。 児童から出ない場合は教師から課題点を示す。
2 を視聴する。 大切なことはメモをとりながら視聴させる。
3 分からないことをそのままにしないことや「6?の法則」について確認する。 分からないことをそのままにすると、新聞に正確な情報を載せられないことを押さえる。
4 再度インタビューしたいことや、さらに質問したいことを考える。 1回目のインタビューで不十分だったことや、再度質問したいことをグループで出し合う。
課外   休み時間を使って再度インタビュー活動をする。  

中橋 雄

『お伝と伝じろう』を活用した山口先生の実践は・・・体験活動と番組視聴を組み合わせた指導の工夫が優れています。子どもたちは、インタビューをする活動のために、事前に視聴した番組から「質問を考えるスキル」を学びとることができました。また、実際にインタビューをしてうまく聞き出せなかった体験をしたことで、そのあと視聴した番組から「回答を受けて、さらに聞き出すスキル」を学びとることができたのです。これらは、「視聴後に主人公の考え方のどこがよくないか話し合わせたこと」や「インタビュー後にうまく聞き出せていないことを意識化して視聴させたこと」など、適切な教師の指導があったからこそ得られた学習成果だと言えるでしょう。(中橋 雄)

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