番組を使って情報活用能力を高めるカリキュラムを作ろう

稲垣 忠

学校放送番組と情報活用能力の育成

稲垣 忠  東北学院大学教授

学校放送番組と情報活用能力の育成

稲垣 忠

稲垣 忠
東北学院大学教授

「情報社会」とは、どのような社会でしょうか。例えば、テレビで天気予報を見る場面を考えてみましょう。人工衛星からの情報をコンピューターで分析することで天気予報はつくられます。 お天気キャスターは電子情報ボードを使って視聴者にわかりやすく伝えます。電波を介して皆さんの家に届いた情報はデジタルテレビの中にあるコンピューターで処理され、映像になります。情報技術が人々のあらゆる生活を支える社会の中で、私たちは既に暮らしています。子どもたちが社会に出て活躍する2030年、2040年といった将来、これらの技術はより高度になります。人工知能やロボット、IoT(モノのインターネット)といった言葉を耳にする機会もますます増えていくでしょう。新学習指導要領では、「すべての学習の基盤となる資質・能力」として、言語能力、問題発見・解決能力とならんで「情報活用能力」を育成することが求められています。なぜでしょうか。すべての子どもたちが社会で生きていくために必要なことを身に付ける場所が義務教育段階の学校です。社会がこれだけ情報技術に支えられ、さらなる進化が予想される中、情報技術や情報社会の特性を理解し、適切に使えるようになることは必須だからです。情報技術が影響を及ぼす範囲はあまりに広いため、特定の教科で教えるのではなく、さまざまな教科・領域を横断して育成するべき力とされました。

情報活用能力は大きく分けると4つの領域があります。第一に、道具としてコンピューターを使用できる「操作スキル」です。ソフトウェアの使用方法やタイピングなどです。第二に、情報手段を学びに活かす「探究スキル」があります。調べる際にウェブで検索した情報を鵜呑みにすることなく取捨選択すること、集めた情報から自分の考えを作り出すこと、プレゼンテーションなどの場で相手に適切に伝えることが含まれます。第三に、コンピューターの仕組みや処理の仕方を理解し、問題解決にいかす「プログラミング」です。最後に、情報社会の利便性や課題点を理解し、安全に活用するための「情報モラル」も欠かせない視点です。新学習指導要領をみてみると、国語でローマ字を学習する際にタイピングを、社会科でウェブ検索をさせたり、算数でプログラミングやデータの処理を学び、道徳では情報モラルが登場します。各教科・領域の学習内容を情報社会にふさわしくバージョンアップする中で、共通項として立ち現れた力を情報活用能力と呼んでいるのです。

NHK for Schoolでは情報活用能力の育成につながる番組が数多く放送されています。「探究スキル」に相当するのが「しまった!」です。インタビューの仕方、情報の整理、プレゼンテーションや新聞づくりなどのポイントを、子どもたちが失敗を改善する姿を通して学ぶことができます。「メディアタイムズ」は、CMやドラマの制作からSNSの運営まで、メディアのプロがどのように情報を扱っているのかを考える番組です。「未来広告ジャパン!」「コノマチ☆リサーチ」「よろしく!ファンファン」などの社会科番組、「ドスルコスル」「学ぼうBOSAI」といった総合的な学習の時間向けの番組は、登場人物が探究する姿がモデルになりますし、国語の「お伝と伝じろう」にもインタビューや資料を使った発表の仕方が含まれます。‘教科を横断して育てる「学習の基盤となる資質・能力」’であることは、こうしたさまざまな番組が関連するところからも分かります。

「プログラミング」では、「Why!?プログラミング」があります。MITが開発した教育用プログラミング言語「スクラッチ」上でさまざまな問題解決に取り組む例や、子どもたちがつくったオリジナル作品を紹介するサービスもあります。「テイク・テック」は、さまざまな技術の仕組みを紹介する番組ですが、情報技術の仕組みと生活への応用例を知ることができます。「情報モラル」ではスマートフォンにまつわるトラブルを取り上げ、実話をもとにしたドラマで危険性や回避方法を学ぶことができる「スマホ・リアル・ストーリー」があります。

番組をすべて見せれば情報活用能力が身につく!そんな単純な話ではありません。4領域の中で対応する番組のない「操作スキル」は実際に繰り返し練習することで身につくものです。「探究スキル」「プログラミング」も漫然と見せているだけで力がつく訳ではありません。番組をきっかけに子どもたちも自分でやってみたり、活動の途中で視聴したりすることでコツや考え方がつかめます。「情報モラル」も番組の出来事と自分や友だちの経験とを照らし合わせ、対処の仕方を話し合う機会を持つことが大切です。学校のICT環境、年間指導計画と照らし合わせながら、情報活用能力を育成するカリキュラムをつくっていきましょう。その際、すぐに使える優れた教材としてNHK for Schoolの番組や動画クリップをぜひ活用してみてください。

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