継続視聴はチカラなり

寺嶋 浩介

継続視聴はチカラなり

寺嶋 浩介  大阪教育大学 准教授

継続視聴はチカラなり

寺嶋 浩介

寺嶋 浩介
大阪教育大学 准教授

かつてTV番組を録画することもできなかった時代に、NHK学校放送番組の活用において、「生」「丸ごと」「継続」の視聴の良さを多くの人が勧めました。現在ではメディアが多様化し、NHK for Schoolのウェブサイトが大変充実しています。番組をいつでも見られますし、学校では見なくても、家庭で個人や家族で視聴するということも多いと聞きます。学校の授業では番組を分割し視聴することも珍しくありません。また、いろんな番組が公開されており、内容も多様化しているため、興味を持った番組や特定の回を視聴することも普通に行われています。これらの行動は、デジタル化が進んだ現在においては、半ば当たり前と言えるでしょう。

そのような中で、このパートのふたつの実践事例からは、教室でみんなで一緒に見ることの大切さ、番組視聴からはじめることの大切さを学び取ることができます。

大室先生の実践事例では、「子どもたちが教室から違う世界に飛び出していく」という言葉がとても印象的です。みんなが同じ番組を見ているけれども、それぞれの「世界」の見方が異なることを対話によって感じていくことになります。番組を活用することにより、お互いが異なる点を大事にしていることが感じられます。

木村先生の授業においては、スキルをつけていくことが重視されています。学習スキルはご存知のように一朝一夕でつくものではなく、何度も繰り返し行う中でついていきます。とはいえ、やみくもに自己で実践するだけではいくら時間があっても足りません。何から始めればよいか、どうすればよいか、番組はその手ほどきを与えてくれます。番組の活用が、子どもの探究活動のスタートライン(木村先生の言葉をかりると「基礎体力」)になっています。

また、これらの実践事例は同じシリーズの番組を継続的に視聴することの重要性が前提として組み込まれているように感じます。一部の番組を数回見ただけではこれほどまでに活用が充実するとは思えないからです。

継続的に番組を視聴すれば、その番組に対する見方がわかってきます。ある番組を1本見るにしても、そのシリーズの他の番組を見ているか、見ていないかで学び取り方の質や量が異なります。

授業における番組の活用の有無や頻度は、教師が決めるのが当たり前のことです。しかし、もし部分的な活用にとどまっているのだとすれば、少しもったいないかもしれません。昔から言われてきた丸ごと、継続などの知見や実践事例を少し取り入れることも次のステップとして考えてみませんか?

大室 健司

番組視聴で子どもが変わり、クラスが変わる

大室 健司 さいたま市立植竹小学校 講師

番組視聴で子どもが変わり、クラスが変わる

大室 健司

大室 健司
さいたま市立植竹小学校 講師

なぜ、教室で番組を子どもたちと一緒に見るのでしょう

それは、番組に普段の授業の教材にはない教材性があるからだと思っています。一方で、番組を使いながらも普段の授業の教材と同じように扱ってしまう授業を見ることがあります。そうすると「せっかく活用してみたのだけれどうまくいかない」といった声を聞くことになります。これは、「番組を授業の便利な 資料として取り入れよう」という考えから来るように思います。私は、番組を視聴するということは、教室に外の違う世界を取り入れることで、同時に、子どもたちが教室から違う世界に飛び出していくことではないか、と思うのです。

番組を視聴している子どもたちは、「どこにいる?」のでしょうか

私のクラスでは、『ざわざわ森のがんこちゃん』を年間を通して見せています。子どもたちは一様に画面を食い入るように見て、まるで、がんこちゃんやバンバンくんやツムちゃんたちと「対話」しているかのようです。また、「自問自答」しているようにも見えます。先日「ラッパーのゆうびんやさん」の回を見せたときのこと。

「ざわざわ森」で、ラッパーさんが郵便屋のハジメドリさんから手紙を届けることを引き受けました。ところが、ラッパーさんはその手紙を紙飛行機にして飛ばして、届けたと嘘をついてしまったのです。結果、手紙は違う場所に届き、たくさんの人が困ってしまいました。
視聴後、多くの子どもたちは、迷惑を受けた人々に同情しました。そして、「引き受けたからには、最後までちゃんとやらなきゃ」と、その原因を作ったラッパーさんの行為を責めました。でも、「最後は手紙が届いてほっとした」という気持ちも出されました。さらには「ハジメドリさんも、自分の仕事を他人に頼んではダメ」と、考えた子どもたちもいました。

そんな、子どもたちの頭の中にある個性的な世界を、教師はどのように扱っていけばよいか。つい、教師の意図する答えを引き出そうとしがちですが、ここでは、子ども達の頭の中に出来たばかりの世界を、教室の中に広げることこそ大切になると思うのです。

番組を見て、「思うこと」を語り出す

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私は4月の始めから、子どもたちに番組を見せた後、「先生は答えを求めているのではなくて、みんなの思うこと、考えることを聞きたい」という構えを見せるようにしています。そうすると、子どもたちは思い思いに語り出すようになってきます。後は、それを構造的に板書していくだけで、黒板上には子どもたちの「思 うこと」「考えること」の世界が映し出されていきます。
少し慣れると、友達の発言に対しての「思うこと」「考えること」が出てくるようになります。番組との対話が、クラスの対話へと移行していくのです。

継続的な視聴体験によって、主体的に学ぶクラスが生まれていきます

番組を使った学習は、子どもたちの学習に対する構えを変えていきます。主体的に学ぶ雰囲気が出来上がっていき、それは普段の学習でも、当たり前になっていくのです。ざわざわ森の仲間たちと学びながら、教室の学習の質が高まっていく。そんな子どもたちの成長を感じられることが、「放送教育」を続ける楽しみなのです。

木村 明憲

「子供が主体となる授業」の基礎体力を育てる

木村 明憲 京都教育大学附属桃山小学校 教諭

「子供が主体となる授業」の基礎体力を育てる

木村 明憲

木村 明憲
京都教育大学附属桃山小学校 教諭

情報活用スキルを鍛えておかないと・・・

『しまった!~情報活用スキルアップ~』を継続視聴したことで、子どもたちの情報活用スキルがとても高まりました。以前は、わざわざ教えなくても、調べたりまとめたりすることはできると思い、子どもたちにあまりこの「スキル」の指導をしていませんでした。今思えばそれが原因で、社会科で調べ学習をすると調べられない子が出たり、単元の予定時間を大幅に超えたりすることがよくありました。また、朝学習でスピーチに取り組んだ際も、何日やってもスピーチがうまくならず悩む毎日でした。このような状況を打開するために、情報活用スキルの育成に取り組もうと決めたのです。

「情報活用スキル」がつくと、子ども主体で、スピーディーな授業に

 情報活用スキルが子どもたちに身につくと、すべての教科領域で主体的に学ぶことができるようになるとともに、授業がスピーディーに展開されるようになります。児童が学習の進め方を理解し、みずから判断して学習を進めていくことができるようになるからです。『しまった!』で紹介されている情報活用スキルは全部で10 種類。「調べる」3 種類、「まとめる」3 種類、「伝える」が4 種類で、どの教科・領域でも大切にされているものばかり。課題解決的な学習に即つながります。

私の学級では、『しまった!』を継続視聴し、情報活用スキルを一つずつクリアさせていきました。視聴するまでは、発表の際に聞き手を意識したり、伝えたいことを具体的に話したりすることに課題がみられました。『しまった!』を視聴する授業では、視聴後、気付いたことや思ったことをワークシートに記述し、友達と交流させる展開で行いました。視聴を重ねるごとに、初めは登場人物の失敗を楽しんでいただけの子が、「もっとこうしたらよかったんじゃないか」「情報を整理するときはこうすればいいよか!」と情報活用スキルへの興味関心を高めていく姿が見られました。

また、番組から気付く事柄が増えるとともに、子ども同士の交流も活性化していきました。「具体的に伝えるときには、この言葉を入れた方がいいのでは?」「スピーチをするときは、もっと聞き手の方を見ながら話した方がよく伝わるね」など、テーマとなるスキルに対する理解が深まり、授業だけでなく、家庭学習で活かそうとする姿にもつながっていきました。さらに、番組で紹介されたスキルを常に意識し活用することができるように、これらのスキルをまとめた下敷きを用意して配付したところ、授業でも宿題でも、課題解決的な学習を主体的に行う姿が見られるようになりました。おそらく、映像で印象深く学習したことが、下敷きの文字と常につながって、どんどん定着していったんだろうと感じています。

『しまった!』を活用して「継続的・段階的」な指導を

このように、情報活用スキルの育成は、子ども主体となる学習を行ううえでとても大切であると感じます。しかし、情報活用スキルだけを教える教科や単元はありません。常に教科・領域の内容と共存して「見えにくい」「体系的に取り出しにくい」ことから、継続的、段階的な指導が行いにくい現状があることも確かです。そこに登場した『しまった!』のおかげで、情報活用スキルに焦点を当てた授業が行いやすくなりました。今、さらにパワーアップして、各回視聴後に情報活用スキルを訓練・定着することができる演習教材も配信されているので、ぜひそれらも使いながら、教科・領域の学習と連動させて『しまった!』を活用してみてください。

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