番組の良さを活かすために

番組活用3ポイントチェック

中橋 雄 教授

番組活用3ポイントチェック

中橋 雄  武蔵大学教授

プロフィール:1975年生まれ。武蔵大学社会学部メディア社会学科教授。日本教育メディア学会理事。専門分野は、教育工学、教育の情報化に関する実践研究、メディア・リテラシー論。

番組活用3ポイントチェック

番組活用3ポイントチェック

中橋 雄 教授

中橋 雄
武蔵大学教授

プロフィール:1975年生まれ。武蔵大学社会学部メディア社会学科教授。日本教育メディア学会理事。専門分野は、教育工学、教育の情報化に関する実践研究、メディア・リテラシー論。

NHK for Schoolは、「上手に」活用することで、教育の質を大幅に高めることができます。ここでは、そのポイントを3ステップに整理しました。これらを意識して、授業力をアップさせましょう。

ポイント1 番組を選ぶとき

教材研究・授業デザインの効率を高めてみましょう

教材研究・授業デザインの効率を高めてみましょう

NHK for Schoolには、さまざまな番組・動画クリップが準備されています。教科・単元に直接対応したものもあれば、これからの時代を生きる人々に必要な能力を育むことを目的としたものもあります。大人が見ても楽しくて、ためになるものばかりです。まずは、授業と関係なくさまざまな番組のページを閲覧してみてください。授業で活用するアイデアがどんどん湧いてくるはずです。

次に、授業で使うことを想定して番組を選択し、年間ラインナップのタイトルから授業との関連を判断します。「あらすじ」を読めば、10分番組を10分間視聴しなくても内容を把握できます。番組によっては指導案やワークシートなども掲載されているため、それを参考にすることができます。こうした情報を活用すると、教材研究・授業デザインの効率を高めることができます。

ポイント2 番組を見せるとき

子ども目線で学習環境をチェックしてみましょう

番組を見せるとき、学習者である子どもの目にはどのように映っているのか、その目線から感じとり、学習環境を整えましょう。例えば、テレビの画面に太陽光や蛍光灯の光が反射して見えにくいということはないでしょうか?それは、照明を消したり、遮光カーテンを閉めたりすることで改善できるでしょう。

テレビとの距離や角度はどうでしょうか。画面に表示される小さな文字が、テレビから離れた席の子どもにも見えやすいかどうか確認して、見やすい位置への移動を促すことも有効です。同様に音量が適切かどうかも事前に確認しましょう。また、内容に対する子どもの反応を確認することも重要です。集中しているか、楽しんでいるか、疑問を持った表情ではないかなどを確認しておくと、視聴後の活動をどう展開するのがよいかが見えてきます。

ポイント3 番組を見せた後

子どもの発言を基に授業を組み立ててみましょう

番組を見せた後には、さまざまな授業展開が考えられますが、番組活用を始めたばかりの方にもお勧めの方法を紹介したいと思います。まずは、どんなことでもかまわないので番組の感想を発言させます。本時の目標に関わらない感想も出ると思いますが、できるだけ発言を募り、板書をまとめましょう。その中から学習の目標に関する発言に着目させ、本時の目当てに重ね合わせていきます。

学習者が自分で気付いたことから深めていくことで、学習意欲を高めることができます。番組は年間を通じて継続視聴していくことが重要です。回数を重ねるごとに、学習者は番組の構成や授業展開に慣れていきます。初めは発言できなかった子どもも、視聴態度や考え方を身につけていくことで、発言ができるようになっていきます。学級全体で学びを深めていく授業に、ぐっと近づいていくことでしょう。

かつてTV番組を録画することもできなかった時代に、NHK学校放送番組の活用において、「生」「丸ごと」「継続」の視聴の良さを多くの人が勧めました。現在ではメディアが多様化し、NHK for Schoolのウェブサイトが大変充実しています。番組をいつでも見られますし、学校では見なくても、家庭で個人や家族で視聴するということも多いと聞きます。学校の授業では番組を分割し視聴することも珍しくありません。また、いろんな番組が公開されており、内容も多様化しているため、興味を持った番組や特定の回を視聴することも普通に行われています。これらの行動は、デジタル化が進んだ現在においては、半ば当たり前と言えるでしょう。

そのような中で、このパートのふたつの実践事例からは、教室でみんなで一緒に見ることの大切さ、番組視聴からはじめることの大切さを学び取ることができます。

以下の大室先生の実践事例では、「子どもたちが教室から違う世界に飛び出していく」という言葉がとても印象的です。みんなが同じ番組を見ているけれども、それぞれの「世界」の見方が異なることを対話によって感じていくことになります。番組を活用することにより、お互いが異なる点を大事にしていることが感じられます。

木村先生の授業においては、スキルをつけていくことが重視されています。学習スキルはご存知のように一朝一夕でつくものではなく、何度も繰り返し行う中でついていきます。とはいえ、やみくもに自己で実践するだけではいくら時間があっても足りません。何から始めればよいか、どうすればよいか、番組はその手ほどきを与えてくれます。番組の活用が、子どもの探究活動のスタートライン(木村先生の言葉をかりると「基礎体力」)になっています。

また、これらの実践事例は同じシリーズの番組を継続的に視聴することの重要性が前提として組み込まれているように感じます。一部の番組を数回見ただけではこれほどまでに活用が充実するとは思えないからです。

継続的に番組を視聴すれば、その番組に対する見方がわかってきます。ある番組を1本見るにしても、そのシリーズの他の番組を見ているか、見ていないかで学び取り方の質や量が異なります。

授業における番組の活用の有無や頻度は、教師が決めるのが当たり前のことです。しかし、もし部分的な活用にとどまっているのだとすれば、少しもったいないかもしれません。昔から言われてきた丸ごと、継続などの知見や実践事例を少し取り入れることも次のステップとして考えてみませんか?

大室 健司

番組視聴で子どもが変わり、クラスが変わる

大室 健司 さいたま市立植竹小学校 講師

番組視聴で子どもが変わり、クラスが変わる

大室 健司

大室 健司
さいたま市立植竹小学校 講師

なぜ、教室で番組を子どもたちと一緒に見るのでしょう

それは、番組に普段の授業の教材にはない教材性があるからだと思っています。一方で、番組を使いながらも普段の授業の教材と同じように扱ってしまう授業を見ることがあります。そうすると「せっかく活用してみたのだけれどうまくいかない」といった声を聞くことになります。これは、「番組を授業の便利な 資料として取り入れよう」という考えから来るように思います。私は、番組を視聴するということは、教室に外の違う世界を取り入れることで、同時に、子どもたちが教室から違う世界に飛び出していくことではないか、と思うのです。

番組を視聴している子どもたちは、「どこにいる?」のでしょうか

私のクラスでは、『ざわざわ森のがんこちゃん』を年間を通して見せています。子どもたちは一様に画面を食い入るように見て、まるで、がんこちゃんやバンバンくんやツムちゃんたちと「対話」しているかのようです。また、「自問自答」しているようにも見えます。先日「ラッパーのゆうびんやさん」の回を見せたときのこと。

「ざわざわ森」で、ラッパーさんが郵便屋のハジメドリさんから手紙を届けることを引き受けました。ところが、ラッパーさんはその手紙を紙飛行機にして飛ばして、届けたと嘘をついてしまったのです。結果、手紙は違う場所に届き、たくさんの人が困ってしまいました。
視聴後、多くの子どもたちは、迷惑を受けた人々に同情しました。そして、「引き受けたからには、最後までちゃんとやらなきゃ」と、その原因を作ったラッパーさんの行為を責めました。でも、「最後は手紙が届いてほっとした」という気持ちも出されました。さらには「ハジメドリさんも、自分の仕事を他人に頼んではダメ」と、考えた子どもたちもいました。

そんな、子どもたちの頭の中にある個性的な世界を、教師はどのように扱っていけばよいか。つい、教師の意図する答えを引き出そうとしがちですが、ここでは、子ども達の頭の中に出来たばかりの世界を、教室の中に広げることこそ大切になると思うのです。

番組を見て、「思うこと」を語り出す

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私は4月の始めから、子どもたちに番組を見せた後、「先生は答えを求めているのではなくて、みんなの思うこと、考えることを聞きたい」という構えを見せるようにしています。そうすると、子どもたちは思い思いに語り出すようになってきます。後は、それを構造的に板書していくだけで、黒板上には子どもたちの「思 うこと」「考えること」の世界が映し出されていきます。
少し慣れると、友達の発言に対しての「思うこと」「考えること」が出てくるようになります。番組との対話が、クラスの対話へと移行していくのです。

継続的な視聴体験によって、主体的に学ぶクラスが生まれていきます

番組を使った学習は、子どもたちの学習に対する構えを変えていきます。主体的に学ぶ雰囲気が出来上がっていき、それは普段の学習でも、当たり前になっていくのです。ざわざわ森の仲間たちと学びながら、教室の学習の質が高まっていく。そんな子どもたちの成長を感じられることが、「放送教育」を続ける楽しみなのです。

木村 明憲

「子供が主体となる授業」の基礎体力を育てる

木村 明憲 京都教育大学附属桃山小学校 教諭

「子供が主体となる授業」の基礎体力を育てる

木村 明憲

木村 明憲
京都教育大学附属桃山小学校 教諭

情報活用スキルを鍛えておかないと・・・

『しまった!~情報活用スキルアップ~』を継続視聴したことで、子どもたちの情報活用スキルがとても高まりました。以前は、わざわざ教えなくても、調べたりまとめたりすることはできると思い、子どもたちにあまりこの「スキル」の指導をしていませんでした。今思えばそれが原因で、社会科で調べ学習をすると調べられない子が出たり、単元の予定時間を大幅に超えたりすることがよくありました。また、朝学習でスピーチに取り組んだ際も、何日やってもスピーチがうまくならず悩む毎日でした。このような状況を打開するために、情報活用スキルの育成に取り組もうと決めたのです。

「情報活用スキル」がつくと、子ども主体で、スピーディーな授業に

 情報活用スキルが子どもたちに身につくと、すべての教科領域で主体的に学ぶことができるようになるとともに、授業がスピーディーに展開されるようになります。児童が学習の進め方を理解し、みずから判断して学習を進めていくことができるようになるからです。『しまった!』で紹介されている情報活用スキルは全部で10 種類。「調べる」3 種類、「まとめる」3 種類、「伝える」が4 種類で、どの教科・領域でも大切にされているものばかり。課題解決的な学習に即つながります。

私の学級では、『しまった!』を継続視聴し、情報活用スキルを一つずつクリアさせていきました。視聴するまでは、発表の際に聞き手を意識したり、伝えたいことを具体的に話したりすることに課題がみられました。『しまった!』を視聴する授業では、視聴後、気付いたことや思ったことをワークシートに記述し、友達と交流させる展開で行いました。視聴を重ねるごとに、初めは登場人物の失敗を楽しんでいただけの子が、「もっとこうしたらよかったんじゃないか」「情報を整理するときはこうすればいいよか!」と情報活用スキルへの興味関心を高めていく姿が見られました。

また、番組から気付く事柄が増えるとともに、子ども同士の交流も活性化していきました。「具体的に伝えるときには、この言葉を入れた方がいいのでは?」「スピーチをするときは、もっと聞き手の方を見ながら話した方がよく伝わるね」など、テーマとなるスキルに対する理解が深まり、授業だけでなく、家庭学習で活かそうとする姿にもつながっていきました。さらに、番組で紹介されたスキルを常に意識し活用することができるように、これらのスキルをまとめた下敷きを用意して配付したところ、授業でも宿題でも、課題解決的な学習を主体的に行う姿が見られるようになりました。おそらく、映像で印象深く学習したことが、下敷きの文字と常につながって、どんどん定着していったんだろうと感じています。

『しまった!』を活用して「継続的・段階的」な指導を

このように、情報活用スキルの育成は、子ども主体となる学習を行ううえでとても大切であると感じます。しかし、情報活用スキルだけを教える教科や単元はありません。常に教科・領域の内容と共存して「見えにくい」「体系的に取り出しにくい」ことから、継続的、段階的な指導が行いにくい現状があることも確かです。そこに登場した『しまった!』のおかげで、情報活用スキルに焦点を当てた授業が行いやすくなりました。今、さらにパワーアップして、各回視聴後に情報活用スキルを訓練・定着することができる演習教材も配信されているので、ぜひそれらも使いながら、教科・領域の学習と連動させて『しまった!』を活用してみてください。

家庭学習

岩田 智文

学校と家庭でNHK for Schoolを活用した授業

岩田 智文  愛知県江南市立西部中学校 教諭

家庭学習

学校と家庭でNHK for Schoolを活用した授業

岩田 智文

岩田 智文
  愛知県 江南市立西部中学校

はじめに

理科の授業で大切にしたいことは直接的な体験学習です。実験や観察などがそれに当たります。また、理科を学ぶ醍醐味は学習した内容が生活に生きて働き生活に結びついていくことです。気象、地震や火山、水溶液の性質、電磁気など数えだしたらきりがないほどです。そして、それらの学習内容に、理科の有用性を感じることが学習意欲の向上につながります。
しかしながら、すべての現象を理科室や学校内で体験することは不可能です。そこで授業で活用しているのがNHK for Schoolです。とりわけ、「10minボックス」は、10分という短い時間で要点を押さえられています。授業で活用することで、生徒の理解を深めることができます。

プレイリストについて

NHK for School のプレイリストをご存知でしょうか?意図的に見せたい番組・動画クリップを一覧としてまとめられる機能です。事前にプレイリストを作成しておけば、検索することなく授業中に素早く再生することができます。またプレイリストは公開し、配付をすることができます。職員室のパソコンで作ったものを公開すれば、あらかじめ作成したプレイリストを、番号を入力するだけで表示することができます。教師が意図した番組や動画クリップを校内で同僚や生徒に配付するだけでなく、家庭でも視聴できるようになるのです。

活用のねらい

本校では、授業で積極的にNHK forSchoolを活用してきましたが、今回の実践は授業だけでなく家庭学習でのNHK for Schoolの活用です。生徒が指定されたNHK for Schoolの番組を視聴することで、家庭学習と授業の連携を図りながら、学習に向かう姿勢を養うことを目的としています。予習として家庭で番組を視聴し、授業では、そこで得た情報を基にグループやペア学習の中で、自分の言葉で現象を説明することをねらいとしています。

授業の様子

この実践について実は、以前から考えてはいたのですが、なかなか踏み切れない理由がありました。一つは、家庭でのスマートフォン・タブレットの普及率の低さ。そして、もう一つは私が意図した番組や動画クリップを家で視聴してもらうにはNHK for Schoolのアプリケーションが必要なことでした。今でもスマートフォン・タブレットが全家庭にはありませんが、インターネットがつながる環境がある家庭は100%となりました。また、NHK for Schoolのホームページの更新により、ブラウザーでもプレイリストを受け取ることができるようになり、アプリケーションがなくてもプレイリストを活用できるようになりました。

授業プラン

今回の実践は中学校3年生の天文の単元「惑星の見え方」での取組です。はじめに「火星(外惑星)の見え方」について10minボックスを活用しながら学校で学習します。授業の最後に次回の予告として「金星の満ち欠け」についての動画クリップを視聴します。次に、予習として生徒が各家庭で10min ボックスの「金星の見え方」を視聴します。次回の授業までに「金星の見え方」の内容をまとめたレポートを作り、最後に授業でレポートを基にペア学習で「明けの明星」「宵の明星」についてお互いにレポート内容を説明します。

天文の単元(惑星の見え方)

火星の授業

導入 ・太陽系の惑星の並び順について生徒に質問する。
その後、動画クリップ を視聴する。(前時の振り返り)
展開 ・本時の学習課題を知る。
「惑星はどのように見えるのだろうか」
・太陽から海王星までの順番で地球を基準に「内惑星・外惑星」に分類されることを知る。
・板書タイム 「内惑星・外惑星について」
・今回は外惑星である火星についてどのように動くのかを知る。
星座シミュレーターで火星の動きを生徒と一緒に確認。
・シミュレーターだけでは、原理が分かりにくいので、10min ボックス を視聴する。
視聴した後に発問
「火星は満ち欠けしますか」「火星の見かけの大きさは変化しますか」
・生徒はユニットで回答する。
・番組を視聴して発問の正解を確認する。
→確認した後
・板書タイム キーワード(順行・逆行)
まとめ ・火星と地球の動きを確認しつつ、火星の満ち欠け、大きさの変化についてまとめる。

次回の予告
「金星の見え方について」

動画クリップ を視聴→課題の確認
→課題プリントを配付した後、プレイリスト番号の確認 動画が2本あることを確認
・プレイリスト番号を記入、コンテンツタイトル確認

家庭学習

・教師より配付されたプレイリストを入力し、登録されている「星を見る~金星の見え方」「金星の満ち欠けは?」を視聴する。
・視聴してわかったことをプリントにまとめる。


金星の授業

導入 ・家庭で視聴した内容を確認しながら、動画クリップ を視聴する。
展開 ・学習課題を知る。
「金星の満ち欠けの仕組みを知り説明できるようになる」
・自身のレポートを見つつ、金星の満ち欠けについて説明する。(ホワイトボードに記入)
・ペア学習 明けの明星について、宵の明星について説明する。(ペアで交代)
・グループ代表を決め、全体の場で発表する。
まとめ

・板書タイム(代表者の発表を確認し、各自ノートにまとめる)
キーワード…「宵の明星」「明けの明星」「方角」「観察可能時間」「大きさと満ち欠け」


生徒の変容

生徒の事後アンケートからは、「教科書とワークで学習するより分かりやすい」「繰り返し視聴でき、納得いくまで何回も見られるので自分のペースで学習できる」などの意見が多く出てきました。授業での視聴とは違って、自宅で自分に合った視聴方法や時間で見ることができるので、生徒たちは主体的に学習することができたようです。視聴内容のレポート作成が課題としてあったことから「分からない」をそのままにしておくことができず、納得するまで視聴する必要が生まれました。学校に戻ってからのペア学習でも、キーワードを上手に使って説明することができ、表現力が向上したと感じます。

保護者からもご意見をいただきました。「教科書だけでなく動画を見ながら学習できるのでとてもいいと感じました」「ナレーションもあってわかりやすい説明なので、自宅でも戸惑うことなく安心して学習しているようすです」「プレイリストで動画を指定しているので、検索に時間を割くことなくスムーズに学習しました」など家庭内でも好評であった様子がうかがえます。

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