水の惑星・奇跡の旅立ち 用語集
【クレーター】
クレーター 月の表面にはクレーターがたくさんあります。月のクレーター形成時期は様々ですが、多くは38億年前より古いもので、その時代までに、特に多くの隕石衝突があったとみられています。
 地形的に低いところにあるクレーターは、その後の月の火山活動で噴出した玄武岩の溶岩に覆われてしまっています。月の”海”と呼ばれる、暗く見える部分がそのような場所です。
 月面のクレーター画像は、地上から高倍率の望遠鏡で観察しているために、大気の影響でゆらゆらして見えます。古いクレーターの上に、いくつもの新しいクレーターができて、重なっているのが観察できます。
 火星の表面にはクレーターの少ないところがあって、これがかつて火星の表面を水が覆っていたのではないか、と考えるひとつの根拠になっています。  
 水星の見かけは地球の月に似ています。サイズが小さく、大気はほとんどありませんが、極地方には水が存在する可能性も考えられています。
戻る
【クレーターと大気】
 クレーターがたくさん見られる天体は、大気が薄いことが特徴です。大気や水がたっぷりあると、クレーターが雨や風、流水に削られていってしまうのです。画面で紹介する月や火星、水星は、そういう大気の薄い天体の例です。一方、地球や非常に濃い大気を持つ金星では、クレーターが少ないのです。さらに金星の場合は、厚い雲にさえぎられて、地形が外からよく見えません。金星のクレーターが紹介されていないのはそういうわけです。
戻る
【クレーターとマグマ・オーシャン】
 クレーターは、隕石が落ちたときに、その衝撃でできます。衝突の勢いで地面の岩石をはじき飛ばすだけではなく、隕石の持っていた運動エネルギーが一瞬で熱に変換されるために、隕石そのものと、衝突した部分の地面が超高温になります。規模の大きい衝突では、その熱で地表の岩石がどろどろに融けてしまう場合もあります。微惑星やできかけの惑星がひんぱんに落下していた、46億年前の地球表面には、このようにして、マグマの”海”が地表を覆う状況ができていたと考えられています。
戻る
【クレーターの侵食】
クレーターの浸食 現在の地球には大気があり、水があって、地表にできたクレーターはどんどん侵食されてしまいます。古いクレーターは輪郭がはっきりしなくなり、ついには風雨に削られ尽くして地形ではわからなくなってしまいます。さらに、地球の7割を占める海洋地域では、クレーターはできにくく、残りにくいという特性があります。
 しかし、大陸にできた大規模なクレーターでは、古いものでもかたちが残っているものがあります。カナダのマニコーガン・クレーターは、2億1500万年前に世界各地に形成された、5つのクレーターのひとつであると考えられています。
戻る
【バリンジャー隕石孔】
バリンジャー隕石孔 アメリカ合衆国、アリゾナ州にある隕石衝突のクレーターで、およそ5万年 前にできたものと推定されています。直径1.2kmあり、数十トンの重さの隕石が 衝突してできたものと考えられています。衝突クレーターの中では非常に新し いもので、そのためクレーターの外形が見事に保存されています。
戻る
【隕石の大きさとクレーターの大きさ】
隕石の大きさとクレーターの大きさ これは、衝突の相対速度によってエネルギーが違いますので簡単ではありません。しかし、地球軌道付近で太陽のまわりを回っていたとすると、脱出速度とほぼ同じ秒速10kmくらいから、反対向きの場合、秒速70km程度までの範囲と考えられます。
 大まかに言って、クレーターの直径の1/10から1/100くらいが隕石の大きさだと思っていいでしょう。
戻る
【原始太陽系】
 太陽系は、銀河系の中心から2/3くらいのところに位置しています。ごく普通の恒星・太陽と、その周りを回る惑星・小惑星・衛星・彗星などからなっています。
 惑星を持つ恒星は太陽だけではなく、他の星にも惑星系があることが、最近は観測から確かめられるようになってきました。
 太陽系の材料は、水素・ヘリウムを主とする星間ガスでしたが、水素・ヘリウム以外にも、重い恒星内部の核反応や、超新星爆発によってできた元素が混ざっていました。炭素、窒素、酸素、マグネシウム、珪素、鉄などは、恒星内部でつくられる、比較的多い元素です。また、鉄より質量数が大きい元素は超新星爆発のときに作られます。
 太陽系と同時に作られた地球にも、超新星爆発の残骸の元素がたくさん含まれています。鉄よりも原子核の重い元素、例えば金や白金、鉛、放射性元素であるウランやトリウムなどはこれにあたります。
 このしくみは「25.超新星爆発」で詳しく解説します。
戻る
【微惑星】
 太陽系をつくった星間ガスは、大半が中心に集まって太陽を作りましたが、一部は太陽の回りに円盤状に集まり、無数の微惑星をつくりました。その微惑星が衝突・合体を繰り返して、いまみるような太陽系の惑星や小惑星、衛星といった、太陽を回る天体をつくったと考えられます。
 微惑星の大きさは、最初の段階ではおよそ直径10km〜20kmほどであったと計算されています。その段階では、石というより、砂粒がゆるく集まったようなものであったと考えられています。それらが衝突・合体集合していく過程でだんだんと大きく成長していきます。大きくなるに従って衝突のエネルギーが大きくなり、表面の岩石が融けて、金属鉄や岩石、ガスが分離し、密度による成層構造ができていくのです。
 微惑星はほぼ均一な組成のものでしたが、惑星に成長していく段階で、核とマントル、地殻の層構造と組成の違いがつくられました。
戻る
【地球の年齢】
 地球の年齢は太陽系の年齢とほぼ同じ、約46億年前と言われています。この年代は、主に隕石の情報を利用して求められたものです。原始的な隕石の年代は45.5〜45.6億年前に集中します。それを四捨五入して、46 億年前と言われるようになりました。
 実際には、非常に古い、太陽系形成当時の情報を保持していると思われる隕石でも、形成年代には1000万年程度の幅があります。ですから、数千万年以下の精度で厳密な地球の年齢を求めるのは非常に無理があります。微惑星の集積による成長にも時間がかかりますから、どの時点で地球が完成したと言えるのかは、難しいところです。ですから、地球の年齢は45億年前と46億年前の、どちらでも正しいことになります。
戻る
【隕石】
 隕石は、小惑星や惑星の破片です。主に小惑星のこわれた破片がその起源であると考えられていますが、例外的に月や火星から来たと思われる隕石もあります。それは、他の大きな隕石が月や火星の表面に衝突したときに、はじき飛ばされた地表の岩石が、月や火星の引力が小さいために宇宙空間に飛び出して、さらに地球の引力にとらえられて落下してきた、という、重なり合った偶然の産物です。
 番組で紹介しているのは、1969年にオーストラリアに落下したマーチソン隕石です。この隕石は、炭素質コンドライトという種類の隕石で、太陽系や地球の起源を探るのに、非常に重要な役割を果たしている隕石です。この隕石の特徴は、非常に未分化な、つまり太陽系存在度にきわめてよく一致する化学組成、をもち、非常に大量の水(約16%)を含水鉱物のかたちで含むことです。
 これほど水の含有量の多い隕石はかなり珍しいもので、そのために、番組で紹介した加熱実験でも、はっきりと水が出てくる様子が見えるのです。また、この隕石からはアミノ酸などの有機物も検出されていて、生命の起源につながる可能性が注目されています。
戻る
【隕石の中の水、微惑星の水】
隕石の中の水、微惑星の水 隕石に含まれている水は、含水鉱物といって、結晶構造の中に水酸基や水分子がとりこまれて、鉱物の一部になっているのです。これを強く加熱すると、含水鉱物の結晶構造が壊れ、別の鉱物になります。その過程で周囲に水が放出されます。
 別なかたちとして、水がそのまま氷のかたちで微惑星を構成していた可能性もあります。特に太陽から遠い位置では、そのような微惑星が生まれた可能性が考えられています。太陽に近づいた彗星は、ちりやガスの尾を引いて明るく輝いて見えますが、これは、彗星の本体が汚れた雪だるまのような、氷やその他の揮発性成分に富む、直径10km〜数十kmほどの塊であるためです。いわば太陽系初期の微惑星の化石が、彗星の本体なのかもしれません。
戻る
【イスアの地層】
イスアの地質 最古の海の地層は、グリーンランド南西部のイスア地方から南西に点々と分布するもので、約38億年前のものです。
 現在では変成岩になってしまっていますが、本来は海の地層であった証拠は、海水からの沈殿物である、酸化鉄とチャートの地層(縞状鉄鉱)や石灰岩の存在、さらに、砂岩やレキ岩の組織を残した岩石があることでも裏付けられます。
 レキ岩や砂岩の存在は、当時すでに陸地があり、レキや砂を供給していたことを示しており、重要です。これを調べることで、当時の陸地の性質がわかります。イスア地方では、この地層の中に38.5億年前の砂粒が見つかっていて、その時代にできた陸地があったことを教えてくれています。
イスアの地質 なお、「地球大紀行」の時点(1987)には、この地層は世界最古の岩石といっても良かったのですが、1989年に39.6億年の年代を示すカナダの岩石が確認され、最近さらに40億年を越える年代値が報告されました。また、中国、南極などで38-39億年前の岩石が発見されたこともあり、最古とは言えなくなっています。しかし、イスアの延長の、海岸付近に露出する地層には38.8億年前より古いと見られるものもあり、時代のわかっている海の地層としてはもっとも古いものといえます。
 イスアの「年代のわかっている中での最古の海の地層」は、その時代に海が存在し、最近の研究では生命の痕跡と見られる同位体の特徴を持つ炭素が検出され、それが光合成により生産された有機炭素の可能性がある、という、非常に重要なものなのです。

 画面で出てくる最初のカットで黒っぽい縞が見える岩石は、縞状鉄鉱です。海水中で3価の鉄イオンが沈殿したことによってできたものですから、これは海の存在の証拠になります。
 また、レキ岩の存在は、「当時の地球に陸と海があったことを示している」と説明しています。地球大紀行のときの「渚のあと」という説明はやめました。イスアの地層に残されている海の記録が、浅かったり、波打ち際だった、という積極的な証拠はあまりないのです。それよりも、陸地があって、そこからレキが供給されていることが、大陸の起源に関係して重要です。白いレキは地球初期の大陸の姿を、間接的に伝えてくれるものなのです。
戻る
【地球の海の起源】
 地球に最初の海ができたのは、おそらく40億年前より昔のことです。理論的には、地球の表面の冷え具合や、隕石などの落下の割合によって決まります。それが不確定なのでいつなのかはわかりません。38億年前には少なくとも安定した海ができていたことが、地層の証拠からわかっています。
 いったん海ができても、大きな微惑星や惑星の破片が落下すると、地球の表面がまた大規模に融けてしまって、せっかくできた海が蒸発してしまって、一からやり直し、ということもあるわけです。実は、最初の頃の海は、できては蒸発し、また水がたまり、という繰り返しをしていたと考えられます。
  生命の誕生も、海が安定して存在するようになってからあとのことだと考えられています。
戻る
【水の光分解】
 大気中の水蒸気は、太陽からの紫外線により水素と酸素に分解され、水素は軽い気体なので宇宙空間に逃げていってしまいます。このように、大気上層にある水蒸気はどんどん分解され、消費されてしまいます。
 現在の金星の大気には水がほとんどありませんが、もともとは地球の数分の1の水はあったのに、このような光分解のプロセスで失われたものと考えられています。
 地球の場合は、金星よりも太陽から離れていたことと、海を作ったために、このような光分解による水分子の消費が押さえられたと考えられます。また、光分解で生じた酸素が、現在の1000分の1程度大気中に存在すると、その濃度ではオゾン層を作ることはできませんが、短い波長の紫外線を吸収するようになり、光分解が押さえられるという、フィードバックがかかります。
戻る
【雨が降ると地球は冷えるのか?】
 原始地球では、水は水蒸気として大気の中にあったと考えられます。水蒸気が水になり、雨が降ると、大気中の水蒸気が減り、温室効果を和らげることになります。
 いったん海洋が形成されると、海洋表面の水が蒸発する際に、潜熱を奪います。そして上空で凝結する際に潜熱を放出し、その一部が宇宙空間に赤外線として飛び出していきます。つまり、水が水蒸気になり、また水になるという循環により、熱を宇宙空間に逃がす役割を果たすことになります。

 もうひとつ、重要なことがあります。地表に海ができると、大気中の二酸化炭素が海水にどんどん吸収されて、炭酸塩岩として沈殿し、結果として大気から急速に二酸化炭素が除去されると考えられます。そのため、当初は大気中に数十気圧あった二酸化炭素分圧が、数気圧まで下がったと推定されます。温室効果もそれだけ弱くなりますから、その点でも、海ができることは地表を冷やす効果があると考えていいでしょう。
戻る
萩谷宏(アドバイザー)


戻る解説


Copyright 2004 NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved.
許可なく転載を禁じます。