今回のおはなし

― 風の谷ウル ―

風の谷ウルの山頂。
風の谷の淵に立っているヒュン。

丘に立ち、目を閉じてじっと耳を澄ましているヒュン。
風の音に混じって、美しいメロディが滑り込んでは、すぐにかき消えていく。
だが、電波の入りにくいラジオのように、メロディが聴こえては、かき消える・・。

― ヒュンの曲作り・イメージ映像 ―

ヒュンは曲を作っている。
タクトを振って音符を投げる。
音符が流れていると同時に、草原の風景になる。
その草原を走る誰かの脚。

ティファン「(笑い声)」
ティファンを追っている。
ティファンの笑い声。ティファンは後ろを振り返っている。
ティファン「ヒュ~ン・・・・・!」

画面暗転。稲光。

SE「(雷鳴)バリバリバリー~~~!」
急激に、白画面にフェードアウト。

ウルの丘で、ヒュンが頭を抱え、はいつくばっている。

ヒュンは小刻みに肩を震わせ、何かに必死に耐えている。

ヒュン「うぅ・・・(何かに必死に耐えている)」
ティファンの声「(遠くからフェードイン)ヒュン・・・・ヒュン・・・。また嫌な音を聴いてしまったのね?」
蹲(うずくま)ったままのヒュンに、過去の自身の声が聴こえる。

ヒュンの声「(ヒステリックに)違うよ! 違う! 嫌い!」
ヒュンは小刻みに肩を震わせ、何かに必死に耐えている。
ティファンの声「そう・・違う。ヒュンにとってはね・・・ほかの人には、なんでもない音が・・・ヒュンには、今聴きたくない音だったり・・・何か嫌なことを思いだしてしまう音だったりするの・・・」

ティファンの声「でもね・・・、どんな音にも・・・ひとつひとつ何かの役割や意味があるんだと思うの」
ティファンの顔、首から上は光で見えない。
ティファン「だからその中に・・・ヒュンにはすこーし嫌だなっていう音が入り込んできたとしても・・・ヒュンは・・・大丈夫・・」

ヒュンは小刻みに肩を震わせ、何かに必死に耐えている。ヒュンの心の声。
ヒュン「(思い出すように)・・・・大丈夫・・・・」
ティファンの声「だって。・・ヒュンの体を駆け巡る音楽の血は、そんな音たちを・・きっときっと・・・とってもいい音色に染めてくれるはずだもの。ヒュンが・・・そんな自分を見つけてくれたら・・・・・嬉しいな」

間がある。風の音がふたたび大きくなる。

ヒュン「(立ち上がる)うっ・・・あっ」

ゆっくりと立ち上がるヒュンは目を閉じている。

静かに目を開き、風の谷を見つめる。
ヒュンの視線。

谷底には、どす黒い渦のようなものがトグロを巻いている。
見る見るうちに険しい顔になるヒュン。

― ヒュンの回想・フラッシュ・インサート ―

キャラの声「そうだ。決めちゃえばいいんだよ。嫌な音は雷だけ。そうすればきっとそれ以外の音は大丈夫になるよ」

― もとのところ ―

ヒュンは穏やかな表情になっている。フェードアウト。

― ドラムスコの岩場 ―

ドラムスコの岩場でキャラとドラムスコが話している。

キャラ「風の谷に・・・音叉が?」
ドラムスコ、大きく頷き、
ドラムスコ「うむ・・・おそらく一本、隠されている・・・、わしにはそう思えてならんのじゃ・・」

ドラムスコ「風の向きによっては、日に何度も・・・あの谷の方から・・聴こえてくるのさ・・その音が・・・わしには、時々まるであの子の声に聴こえてしまう」
カタカタ「(少し困り)あ、いやぁ~、その声っつーのは、つまり・・」
カタカタは気を遣って、キャラのほうを窺う。
だが、キャラは、きりりとした目で受け止めている。

キャラ「ティファン、っていう人の声ね。・・ドラムスコさん?」
ドラムスコ「うむ、早くおたまじゃくし島に・・音楽が戻ってくるといいね、ってな」
キャラ「・・・・・!」
こっくりと頷き返すキャラ、

キャラ「(頷く)」
だがドラムスコから目を逸らそうとはしない。
ドラムスコ「(キャラをじっと見据えて)ベイベー・・。お前さんを見た瞬間、どこかで見たことのある瞳だと思ったが、やっと思い出したぞ」
キャラ「え?」

ドラムスコはキャラを指さす。
ドラムスコ「その瞳はなぁ、・・いつだってまぁっすぐに人を見ているんだ。たとえ相手がウソをついたり・・お前さんを騙そうとしても、・・知ったこっちゃない。だから・・・」

トッポとボビーが太鼓を叩いている。
ドラムスコの声「どんなヤツだって、・・しまいには、お前さんに心を許してしまう。・・・そうだろ?(笑って)おいらがはじめて恋した子が、そんな目をしていたのさ(ウィンク)」

キャラ「(少し照れて)ぐふっ・・・」

カタカタ「あんたの話かい!これまた昔のミュージシャンは、よくもまぁこうもキザなことをぺらぺら言えるわなぁ~~」
キャラ、カタカタ、ドラムスコ「(笑っている)」
ドラムスコ「さて、それにしても、風の谷ウルに行くには、案内がいるなぁ・・」

カタカタ「リンゾーでもいりゃぁねぇ・・あいつ、やたら島のあちゃこっちゃ詳しいから」
トッポとボビーが太鼓を叩いている。
トッポの前方にある岩が寄ってくる。

トッポは前方の岩に気づく。止まる岩。
トッポは再び太鼓を叩き始める。
岩が寄ってくる。

トッポが前を向くと岩が止まる。
トッポ疑問の顔。
トッポはキャラの袖を引っ張る。

キャラ「?」
トッポは岩を指さす。
カタカタ・ドラムスコ「?」
キャラ・カタカタ・ドラムスコ「うん?」

明らかに誰かが描いたものだと分かる岩。近づくキャラ達。
周りこもうとするが岩がキャラ達の方に動いて行く手を遮る。
キャラ、カタカタ「?」

右に移動するキャラとカタカタだが岩も右に動く。
キャラ、カタカタ「?」
左に移動するキャラとカタカタ。岩も同じ方向へ動く。
と、リンゾーのゾウの鼻が岩(の絵)からはみ出して見えた。

キャラ「(驚いて)リンゾーさん!」
カタカタ「(驚いて)リンゾー!」
岩の絵が手前に倒れると、身を小さくしていたリンゾーがいる。

リンゾー「え・・あぁ・・あえ」
リンゾーがドラムスコの方を見る。
リンゾー「うえぇっ!」

ドラムスコは笑っている。リンゾーはびびっている。
ドラムスコ「(笑っている)」
リンゾー「(びびっている)」

キャラ「バ~ッチリ、いいとこに戻ってきたくれちゃったじゃないのぉ!」
とリンゾーの肩を叩く。
リンゾー、キャラと目を合わせることはなく、目線中空に移した。

リンゾー「(照れている)えっへっへっへー」

キャラに肩を叩かれ、少しだけ顔が紅潮している・・・。

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