第15弾

パラバレーボール × ハリガネサービス

原作/キャラクターデザイン・荒達哉さんインタビュー

“自分たちは一緒のバレーボーラーだな”

「ハリガネサービス」、初のアニメ化で楽しみにしている部分は?

荒:下平がサーブを打つところを動きで見られるのは楽しみですね。動きとしては、割とリアルなバレーボールに近づけていただいたほうがいいんですけど、漫画では、ハリガネのエフェクトが入ったり、ちょっと画面が派手な感じになったりするので、そういうのは見てみたいですね。

声優さんの選考にも参加されたそうですが、下平はどういったイメージですか。

荒:彼は二面性のあるキャラクターで、どちらかというと精神的には幼いところがあるので、そういう幼さみたいなものが声にも表れているといいかなという話はしました。

二面性というと?

荒:自分の正義で相手を殴ることをいとわないタイプというか。柔和に見えるけれど、かなり攻撃性も高い人間だと思います。ある種、幼児性のようなものを彼に感じます。だから、明るいスポーツマンな部分だけじゃない。どっちもあるカオスな存在がたぶん下平だと思うので。

今回シナリオの原案も書いてくださいましたが、こだわったのはどんなところですか。

荒:下平たちが、パラバレーボールの世界最高峰の戦いにアクセスしないと意味がないと思ったので、そのファンタジーをどう成立させるかということだけ考えました。
とにかく「一番真ん中のところと絡まないと面白くないだろう」と思ったので。町の体育館に行ってもテヘラニはいないでしょうから、どうすれば下平が世界一のプレーヤーと戦えるかなと。

5分のアニメでパラスポーツの魅力を描く『アニ×パラ』の話を聞いてどう感じましたか。

荒:バレーボールにお世話になって『ハリガネサービス』を描かせてもらっているので、何か恩返しできる機会があればいいなと思っていました。今回、パラバレーボールとのコラボという形で何か少しバレーボールのお役に立てるんだったら、とってもうれしいなと。

パラスポーツとのコラボについては、意識されましたか。

荒:パラスポーツをやっている方をかっこよく描きたいなとは思いましたね。スポーツ選手としてかっこよく描けたらと。
東京オリンピック・パラリンピックに向けて、テレビやラジオでパラスポーツ特集に触れて、普通に面白そうだと思ったんですよね。ブラインドサッカーや車いすラグビー、車いすバスケとか、非常にアグレッシブで激しいスポーツで、単純にスポーツとして面白いなって。だからパラバレーボール(座位)も、パラスポーツというよりは普通にスポーツとして面白そうという印象でした。

バレーボール経験者の荒先生、先日、パラバレーボール(座位)も体験されましたが、2つの違いはどんなところですか。

荒:一つ一つのプレーに関してはかなり違っていました。例えば、体のちょっと横にきたボールは、スタンディングのバレーボールなら横に1歩ステップを踏んで簡単に取りに行けますけど、座ってだととっさに手をついて動けないから片手でのプレーが増えたりとか。片手のプレーはスタンディングのバレーボールでもすごく難しいプレーなので、そういうところは独特の難易度があるなと。

サーブも、僕はひざを使って上げるんですけど、パラバレーボール(座位)はひざを使うことができないからトスが安定しなくて、思ったポイントでなかなかサーブを打てない。だから体重が乗せられない、手打ちになっちゃうみたいな難しさがあって。
スタンディングと一緒なのは、トスが上がってきて、ブロックをかわしてスパイクをバーンとたたき込めたときの気持ち良さですね。どっちも共通して、「やった」という気持ちになりました。自分がトスを上げて、誰かがスパイクを決めてくれたら、同じようにうれしかったですね。

アニメ化にあたり、イラン代表のモルテザ・メヘルザード・セラクジャーニー選手のことをとても調べられたそうですね。

荒:彼はパラ史上最も身長の高い選手で、「パラバレーボール(座位)といえばモルテザ」というぐらいの知名度もある選手なので調べました。
モデルになった選手とキャラクターがあまり近くなりすぎるのは良くないと思ったので、テヘラニのデザインでは似せることはせず、たとえば髪型はイランのアスリートの髪型などで比較的多そうなところをイメージしてデザインしましたけど。

とにかく大きくて、サーブをブロックできるというパラバレーボール(座位)独特なルールを、特に彼の場合はそれを非常に行使しやすい体格をしてますから、現実の映像を見て、選手の方に実際にモルテザ選手のプレーを見た感想を聞いて、イメージを膨らませましたね。下平はサーブが強いキャラクターだけど、さすがにサーブをブロックされるという状況下で打ったことはないはずだから、「彼だったらどういう戦略を立てるかな」と考えました。

アニメの中に、「みんな、できることを追い求めてここまでたどり着いたんだ」という日本代表キャプテンのセリフがあります。下平は何を感じたでしょうか。

荒:パラとかスタンディングとか関係なく「自分たちは一緒のバレーボーラーだな」と感じたと思うんですよね。
それこそ背が低かったり、ジャンプが高く跳べなかったり、スタンディングのバレーボールの中にもハンディキャップはきっとあると思うんです。そこで終わりじゃなくて、じゃあそこからどういう工夫をするか。彼が感じたのはそういう共感意識だったと思います。

最後に、『アニ×パラ』に携わって感じたことを改めて教えてください。

荒:とにかく自分で体験できて、やって面白かったなって。スポーツって結局そこがシンプルで、「やって面白い」「体を動かして楽しい」というのがスポーツだと思うんです。(パラバレーボールは)なんか楽しそうだなとは思っていましたけど、やってみたらやっぱり楽しくて。プレーする機会がある人はどんどんプレーしてみたらいいと思うし、橋渡しに今後も自分が何かできることがあるんだったらどんどんやりたいなと思いましたね。

本日はありがとうございました。