第10弾

視覚障害者マラソン × ましろ日

中居彦一役・下山吉光さんインタビュー

“中村アンさんとの掛け合いに手応え「関係性が伝わる すごく楽しいものに」”

「アニ×パラ」第10弾のオファーを受けたときのお気持ちをお聞かせください。

下山 個人的に「アニ×パラ」が好きで全作見ていたので、今回オファーをいただけて光栄でした。5分という短い時間の中に登場人物たちの熱意や思いが凝縮されていて、見ていていつも楽しいし、とても勇気をもらっています。いつか出たいと思っていたので、素直にうれしかったです。純粋に私、今、子どもがいるんですけれども、見せてあげたいなというふうに思いますし、機会があれば、実際の競技も見せてあげたいなとも思ったりしますし。子どもに見せますよ、だから。本当に。

下山さんは今回、伴走者である中居彦一を演じました。最初に台本を読んだとき、彼にどんな印象を持ちましたか?

下山 最初に台本を見たときは、「なんてしゃべっているヤツなんだ!」と思いましたね。でも読み進めていくうちに、“視覚に障害のある子と話をしているから、表情で察してもらうことができないからだ”って気づいて、すごく納得しました。身長や体重など随分と自分の情報を言っていましたけど、1から10までちゃんと説明しないと、「この人誰だろう」で終わってしまいます。パートナーであるのぞみちゃんに信頼してもらい、一緒にやっていくためには、このくらいしっかりとコミュニケーションを取っていかないとダメなんでしょうね。
原作の「ましろ日」もすべて読ませていただきましたが、中居はランナーのことをちゃんと考えているし、ただ単に自分勝手な人間ではもちろんないし、尊敬できる人物だなと感じています。しかも、スキンヘッドで、無精ひげを生やしていて、なんか面白い人(笑)。

中居を演じていて感じた視覚障害者マラソンのすごさ、驚きなどはありますか?

下山 純粋に一番すごいのは、目が見えないのに走り、挑んでいくランナーですよね。僕には想像できません。けれども、ランナーのみなさんの勇気に伴走者も共感し、それを助けてあげよう、パラリンピックでメダルを取らせてあげようって思うのかなと感じました。
アニメの主人公であるのぞみちゃん(CV:中村アン)は、自分で「勝ち気です」と言ってしまうほど本当に勝ち気な人物です。そんな彼女に、中居はただ寄り添うだけではなく、「お前はこんなもんか」とあえて挑発し、火をつけるようなこともしていますが、伴走者には大切なことなのだと思いました。中村アンさんと演技をやっていく中での言葉でつながる2人のやりとりは、すごく面白かったです。

印象的な中居のセリフは?

下山 うーん。「承知した」かな。(笑)「承知した」でしょう、やっぱり。承知したってなかなか言えないじゃないですか。でも彼は承知するんですよね。アスリートファーストなんですよ、そこがリスペクトできるところです。あなたに合わせますよって、任せろって。つまり度量が広いってことじゃないですか。それだけの余裕もあるということだし。すごく奥行きのある人間なんだなというのは、あの「承知した」の一言で結構出るなというふうに、僕は思いましたけどね。

特に印象に残ったというシーンがあれば、お教えください?

下山 たくさんありますが、やっぱり最後の中居とのぞみちゃんのやりとりですね。「このままパラリンピックまで走るってことだ」って言う中居に、「ちゃんとついてきてよ!」って彼女は返すんですよ。「はい!」とかじゃなくて、お前がついてくるんだそっていう返事が面白いですよね。中村アンさんの芝居がすごく良くて、思わず「はい、ついて行きます!」と言いたくなりました(笑)。今回の「アニ×パラ」では、アスリートと伴走者の絆(きずな)が丁寧に描かれているので、見る方にその絆を感じていただけたらうれしいです。

中村アンさんとお芝居をする中で、手ごたえを感じたポイントはどこでしょうか?

下山 一緒に走るシーンなどで、力を入れるタイミングを合わせながら録ったりしたんですけれども、僕は僕なりに、中村さんは中村さんなりに息を合わせようとしているところに、シンクロみたいなものは感じましたね。マイクの前でしたが、実際に走っているかのような風を感じながら演じていました。

中村アンさんとの共演で意識されていたことはありますか?

下山 中村さんがあまりアフレコをやったことがないとは聞いていたので、役柄も伴走者ですけれども、引っ張っていかなければ、みたいなことは感じたりしたんです。
でもやっぱり、さすが女優さんですよね。すごく乗ってきてくださって、アンさんもすごく色々とチャレンジしてくださったんで、最終的にはすごくいい掛け合いができたんじゃないかなっていうふうに、僕は思うんですけれどもね。すごく聞いていて楽しいと思います、掛け合いは。

アフレコ中に中村アンさんの変化みたいなものは?

下山 最初のうちは、ちょっと緊張なさっているところもあったのかなという気はしましたけれども。もうあとは全然違いますよ。もう、ノリが全然違いますもん。本当に何かこう前のめりになっているって。あ、これはいいものができているぞ、っていうふうに、すごく思いましたけどね。なんか。全然僕が引っ張るとかじゃなくて、アンさんと一緒にやっているから、ああいいものができたなというふうな感じがすごくしたんですよね。だから僕がリードをしているとかじゃなくて。アンさんの意思でちゃんと走ったなというのをすごく感じましたね。

最後に、東京パラリンピックに向けてトレーニングをされている視覚障碍者マラソンの選手たちに、エールをお願いします。

下山 「アニ×パラ」に参加させていただいて、視覚障害者マラソンのアスリートのみなさん、そして伴走者の方々は本当にすばらしいなと思いました。目が見えない中で走り抜くってすごいことですよね。まずはやっぱり、その勇気に敬意を表したいです。あまり偉そうな言い方はしたくありませんが、選手たちが頑張っている姿が、同じ障害を持っている人たちの勇気につながっていくことは間違いないと思います。なので、目標に向かって頑張ってほしいですし、駆け抜けてほしいですね。

本日はありがとうございました。