第6弾

河合克敏 作 視覚障害者柔道

光 役・上白石萌音さんインタビュー

“「自他共栄」は、生きていく上ですごく大切な言葉だなと思いました”

まず、「視覚障害者柔道」編の台本を最初に読まれた際の、率直な感想をお聞かせください。

上白石 (主人公の)光という女の子は、“なんて強いんだろう”って思いました。どんな困難があっても、“好き”という気持ちが何にも勝るんだということをストレートに教えていただいたような気がして、胸が熱くなりました。

原作の河合克敏先生ともお話をされていましたが、どのような印象を受けられましたか?

上白石 先生は元々柔道をやられていて、代表作の一つに柔道の作品(『帯をギュッとね』)があるのですが、今回のアニメを描かれるにあたって、実際に視覚障害者柔道の選手と、目をつぶって組手を行われたと伺いました。だからかと思って! すごく絵に臨場感があって、光ちゃんの目線でいろいろなものが描かれているんです。先生は、実際に光ちゃんになって描かれたのかもしれないなと、すごく感じました。

主人公の光を演じるにあたり、意識されたことはありますか?

上白石 柔道の選手は心身ともに強い方というイメージを持っているのですが、今回、光を演じる上では、彼女の弱い部分を大事にしたいと思いました。脆さというか、ちょっと壊れやすい繊細なところを大事にできたらいいなと。
光ちゃんは、ものすごくメンタルが強いというわけではきっとないし、視力を失った際には、私には想像を及ばないくらい落ち込んだと思います。突出した女の子ではなく、隣の家にいそうな、ごくごく普通のただ大好きなものを持っている女の子です。でも、小さいときから柔道をやっている芯の強さみたいなものはあるだろうなと思ったので、内に秘めた強さが湧き出るように、ちょっと太いというか芯の通った声を出したいと思って演じました。

アニメの中で、特に印象に残ったシーンをお聞かせください

上白石 やはり、一度柔道ができなくなってどん底を味わった後に、視覚障害者柔道に出会うシーンです。久しぶりに柔道着に袖を通し、相手に1回投げられ、背中で畳を感じて、それで光ちゃんの心に火が付きます。「もう1度お願いします」というセリフは、光ちゃんの消えかかっていた火が再び燃える瞬間なので、大事に演じました。

このシーンの後、小林先生が光に「自他共栄」というキーワードを語り掛けますが、上白石さんご自身はどのように感じられましたか?

上白石 真理だなって思いましたね。1人で生きていけないし、周りにばかり気を使って自分をおろそかにしてもいけない。共に栄える、一緒に高め合っていくというのは、一番理想的な形だと思います。謙虚さだけではなく自信も必要ですよね。スポーツマンシップというか、スポーツだけではなく、生きていく上で、すごく大切な言葉だなと思いました。

「視覚障害者柔道」については、ご存知でしたか?

上白石 パラスポーツについては、テレビで放送しているのを見たり、友達の藤原さくらがテーマ曲を手掛けた「パラ陸上」編を拝見したりしていて少しは分かるのですが、視覚障害者柔道という競技は、今回初めて知りました。

「視覚障害者柔道」を知って、どのような印象を持たれましたか?

上白石 柔道は相手を見据えて、相手の隙をつく、すごく目が大事なスポーツだと思うのですが、目が見えにくくなっている方や見えていない方も、好きだったもの=柔道に戻れる場所があるんだなと、今回のアニメを通して知りました。
好きなものが何かをきっかけにできなくなり、切なさを感じたり、悔しさを覚えるという経験は、誰しもがあるかもしれません。そんな中で、また好きなものの方に呼び戻してもらえる、そういう場所があるこということは、柔道に限らず、その人の人生を救うすごく素敵なことだと思います。

最後に、視覚障害者柔道に打ち込んでいる皆さんへのエールをお願いします。

上白石 アフレコをする中で、台本になかった「見えた!」というセリフを言ってほしいと言われたのですが、そのときに「真理だ」と思いました。“見る”って、目で見るだけじゃない。感じて、それを読み取って、それを持って進んでいくことが“見る”っていうことなんだなって思って。
だからきっと、視覚障害者柔道に取り組まれている皆さんの方が、“見る”ことに関して、秀でていらっしゃるんだろうなと、今回すごく感じました。
ですので、皆さんの見える世界で、皆さんの大好きな柔道を心ゆくまで楽しんでいただけたらなと思います。そういう姿を私たちが見て、たくさん勇気をいただくと思うので、本当に応援しています。

本日は、ありがとうございました。